大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【寄りそう女】

私・イワマツは、9月10日から15日のあいだにかけて大番頭《おおばんと》はんたちとマァマとドナ姐《ねえ》はんたちを探すためにあちらこちらを歩き回った。

しかし、大番頭《おおばんと》はんたちとマァマとドナ姐《ねえ》はんはどこにもいなかった。

もうイヤだ…

こんなフラフラとした暮らしはもうイヤだ…

日本《このくに》はもうイヤだ…

プリンスエドワード島へ帰りたい…

…と言い続けて、どれくらいの時間《とき》を流したのか…

……………………………

(テーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテーテー…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

時は、9月22日の午前11時過ぎであった。

またところ変わって、ことでん片原町駅の近くにある踏切りにて…

ショルダーバックを持って旅を続けていた私は、警笛が鳴り止むのを待っていた。

遮断器《バー》が降りている踏切内に高松築港行《ちっこうい》きのボギー電車がゆっくりと走行していた。

警笛が鳴り止んだと同時に遮断器《バー》が上がった。

私が踏切を渡ろうとした時であった。

後ろの方からほたるさんの声が聞こえた。

「よーくん…よーくん!!」
「ほたるさん…」

私が後ろをふりかえった時であった。

濃いネイビーの振袖に白い帯姿のほたるさんがいた。

ほたるさんは、右手に大きな風呂敷包みを持っていた。

ほたるさんは、左手で大きく手を振りながら私を呼んだ。

「よーくん!!よーくんこっちよ!!」
「ほたるさん!!ほたるさん!!」

私のもとにやって来たほたるさんは、ものすごくあせった声で言うた。

「よーくん、ああ…無事でよかったわ〜」
「ほたるさん!!いままでどちらにいたのですか!?私は…あちらこちらを探し回りましたよ!!」
「よーくんごめんね〜…うち、よーくんに話したいことがあるのよ。」
「話したいことがある?」
「うん。」

……………………………

またところ変わって、片原町駅前《えきまえ》にある純喫茶店《サテン》にて…

ほたるさんと私は、向かい合った状態で座っていた。

ほたるさんは、テーブルの上に大きな風呂敷包みを置いたあと包みを解いた。

包みの中から、たくさんの週刊誌が出てきた。

私は、ほたるさんに対して声をかけた。

「週刊誌…ほたるさん、たくさんの週刊誌をどこで買ったのですか!?」

ほたるさんは、私に対して声をかけた。

「どれか一冊取って…早く取って。」
「分かった。」

私は、一番上に置かれていた週刊現代を取ったあとほたるさんに言うた。

「ほたるさん。」
「よーくん、ピンク色のフセンシが貼っているページをひらいて…早く!!」
「分かった。」

私は、ピンク色のフセンシが貼られているページをひらいた。

フセンシが貼られているページの記事の見出しに大きく書かれていた文字を読んだ。

「長肥抗争《ちょうひこうそう》、危険水域に突入!!…危険水域に突入って…ほたるさん、ほたるさん!!」
「なあによーくん。」
「ほたるさん、『長肥抗争《こうそう》、危険水域に突入』ってなに!?」
「だから、長洲組と肥薩会《ひさつかい》による抗争が最大の山場を迎えたと言うことよ。」
「そうじゃなくて、長肥抗争《こうそう》が危険水域に突入した原因が何かと聞いてるのだよ!!」
「よーくん、今朝の新聞を見てないの!?」
「今朝の新聞に何か書かれていたの?」
「よーくん!!先週のはじめ頃に高知市で殺人事件が発生したのよ!!」
「殺人事件!?」
「今朝の新聞に書かれていた記事は、高知愛媛《ふたつのけん》の県警が合同捜査本部を立ち上げた記事よ!!」
「合同捜査本部を立ち上げた!?」
「ええ。」
「死亡した人は!?」
「肥薩会《ひさつかい》の傘下にあたる事務所《くみ》の幹部クラスの男よ…そのまた上に、おととい高知市内にある傘下の事務所《くみ》の事務所にタンクローリー車が突っ込んで大爆発を起こした事件があったのよ…中にいた組長と複数人の構成員《チンピラ》たちが焼死したのよ!!」
「それで、ふたつの事件の犯人はだれや!?」
「ふたつの事件とも、城井組《きのい》の弟分の事務所《くみ》に所属している男《ヒットマン》よ!!」
「なんだって!?」
「ふたつの事件は、城井組《きのい》に所属していた見習いの構成員《チンピラ》がからんでいるのよ…ふたつの事件がその前に、見習いの構成員《チンピラ》が城井組《くみ》の上納金《カネ》を持ち逃げした事件があったのよ!!」

私は、風呂敷包みに入っていた他の週刊誌を取ろうとした。

ほたるさんは、私に対して声をかけた。

「抗争事件《れいのじけん》に関連する記事は、(週刊)『現代』だけじゃないわよ!!…『ポスト』も『大衆』も『実話』も『宝石』など…大部分の週刊誌は『長肥抗争《こうそう》が危険水域に突入したの記事ばかりよ!!…よーくん、急いで(写真週刊誌)『フォーカス』(今は廃刊されたので発売されていない)をひらいてちょうだい!!」
「『フォーカス』?」
「早く開いてよ!!」
「分かった!!」

私は、(写真週刊誌)『フォーカス』を手に取ったあとレモン色のフセンシが貼られているページをひらいた。

この時、二岡総裁《におか》と城井組長《きのい》と副島組長《そえじま》の3人が写っている黒白写真が大きく載っていたのを見た。

写真の記事は、副島組長《そえじま》の還暦祝いに二岡総裁《におか》から高級腕時計を贈られた時の様子であった。

城井組長《きのい》は真ん中にいた。

二岡総裁《におか》は左に…副島組長《そえじま》は右にいた。

ほたるさんは、雑誌を読んでいる私に対して声をかけた。

「脱走した見習いの構成員《チンピラ》は、城井組長《きのい》に対して非常に強い不満を抱いていたのよ。」
「それはどう言うこと?」
「どう言うことと言われても…よくわからないわよ…それよりもよーくん、記事の最後に書かれている方を見て。」
「最後の方…ああ、この記事をかいた記者さんのことだね。」
「記事を書いた記者は、津乃峰《つのみね》と言う男よ。」
「津乃峰《つのみね》…あっ、そう言えば…この前、三永《みえ》さんから電話がかかって来た時に…津乃峰《そのおとこ》のことを聞いた!!」

ほたるさんは、私に対して声をかけた。

「津乃峰《そのおとこ》は、三永《みえ》ちゃんの知人の男であるけど…より危険な男よ!!」
「より危険な男って!?」
「津乃峰《あのおとこ》は、週刊誌のヤクザ担当の記者を務めていた時に、長洲組に出入りしていたのよ!!」
「なんだって!!」
「だけど、ある事件を機に大手出版社を突然やめたのよ…その後、フリーランスの記者に転向したわ…だけど…その直後に…カレは…あることないことをかきまくるようになったのよ!!」
「あることないことをかきまくるようになった!?」
「津乃峰《あのおとこ》の万年筆《ペン》による暴力のせいで書かれた人が生命《いのち》を絶ったと言う話があるのよ…よーくん…津乃峰《あのおとこ》には絶対に近づかないでね!!」
「分かりました!!」

津乃峰《あのおとこ》の万年筆《ペン》の暴力が原因で…

書かれた人が生命《いのち》を絶った例があった…

一体どう言うだ…

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