大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【そっと、おやすみ】

(ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ…)

日付は変わって、10月30日の深夜1時頃であった。

ほたるさんと私は、播州赤穂駅で電車を降りたあと駅前でヒッチハイクした長距離トラックに乗って再び旅に出た。

トラックは、国道250号線から岡山ブルーラインを通って岡山方面へ向かった。

トラックは、深夜2時半頃に岡山市の国道2号線と30号線の分岐点にあたる青江交差点付近にある終夜営業のラーメン屋さんに到着した。

時は、深夜3時20分頃であった。

またところ変わって、終夜営業のラーメン屋の店内にて…

ほたるさんと私は、ぎょうざダブルと鶏肉と野菜の黒酢煮定食で遅い夕食を摂っていた。

ぎょうざダブルは、半分(12個入りを6個)に分けた。

私は、タンブラーに入っているミネラルウォーターをのんだあと一息ついた。

ほたるさんは、私に対して声をかけた。

「あのねよーくん。」
「ほたるさん。」
「輪島の警察署の生活安全課《せいあん》の人が言うた『3年前』…と言う言葉を聞いて…その時の出来事を思い出したのよ。」
「その時と言うのは…三永《みえ》さんが松山で働いていた時のことですか?」
「三永《みえ》ちゃんが松山にやってきたのは、『3年前の出来事』から1年後だった…と思う。」
「松山に来る前はたしか…小倉の旦過市場《いちば》にあったお店…で働いていたのですね。」
「そうよ。」

………………………

それから数秒後にほたるさんは私に声をかけた。

「三永《みえ》ちゃんとダンナは、ダンナの中学時代の先輩からの紹介で出会ったのよ…その時、三永《みえ》ちゃんは元カレにすてられたのよ…その上に、三永《みえ》ちゃんの胎内《なか》に赤ちゃんがいたのよ。」
「その赤ちゃんの父親はどなたですか?」
「言わなくてもわかるでしょ…三永《みえ》ちゃんの元カレよ…その元カレはすごくいいかげんな野郎で、三永《みえ》ちゃんが妊娠したことを聞いたとたんにオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタとオタついた…『こわい』『カノジョの親が怒鳴り込んでくるかもしれない』…と言うて大パニックを起こしたのよ。」
「どうしようもなくなった元カレは…ダンナの先輩に頼んだ…その二人のあいだは、どう言う関係があったのですか?」

ほたるさんは、ミネラルウォーターをひとくちのんだあと私に声をかけた。

「三永《みえ》ちゃんの元カレとダンナの先輩は…同じ大学のサークル仲間よ…三永《みえ》ちゃんの元カレは資産家のぼんぼんで、大学イチのプレーボーイだったのよ…三永《みえ》ちゃんの元カレは、大学を卒業したあとは自動的に国の政府機関へ就職することが決まっていたのよ…三永《みえ》ちゃんを妊娠させたことがあからさまになったら、内定を取り消されることが怖かったのよ…だから…サークル仲間である三永《みえ》ちゃんのダンナに頼んだのよ。」
「そのぼんぼんは、どうなったのですか?」
「国の政府機関に就職することはできたけど…1か月でやめた…その後はどうなったかは知らないわ。」

私は『なんとも言えない…』とつぶやきながらミネラルウォーターをのんだ。

ほたるさんは、私に対して声をかけた。

「三永《みえ》ちゃんとダンナは、ダンナの先輩の仲間たちによる手作りの挙式披露宴を挙げさせていただいた…けれど…そのあとは地獄よ。」
「地獄…だった。」

ほたるさんは、私に対して声をかけた。

「それよりも食べましょう。」
「うん。」

ほたるさんと私は、食べかけの食事を食べ始めた。

…………………………

時は、深夜4時頃であった。

食事を終えたほたるさんと私は、お茶をのみながら話をしていた。

ほたるさんは、私に対して『3年前の出来事』に関する話をした。

「ダンナと三永《みえ》ちゃんは、結婚したあとふたりの男の子の両親になった…二人は『既婚者』の資格を得ることができたので、大人になることができた…と意気込んだ…けれど…空回りばかりがつづいたので…家族関係が悪化したのよ。」
「その時、三永《みえ》さんのダンナはお仕事はしていたのですか?」
「三永《みえ》ちゃんのダンナは、高校に行ってない上に資格特技はなし…面接の時にアピールできるポイントがないのに、どうやって就職するのよ。」
「できるわけないか…」
「三永《みえ》ちゃんのダンナは、シューカツをしたけど…どこの事業所も受け入れてもらえなかった…高校に行ってない、資格特技がない…三永《みえ》ちゃんのダンナは、面接をしていた時に…面接官に対して『丈夫なからだがあるので、どんな仕事もこなすことができます!!』と言うた…けれど…」
「結果…不採用…だった。」
「うん。」

ほたるさんは、お茶をひとくちのんだあと私に声をかけた。

「三永《みえ》さんは、どのようにタイショしたのですか?」
「三永《みえ》ちゃんは、ダンナの収入をアテにする気は全くなかったのよ。」
「三永《みえ》さんは、結婚したあとも水商売《よるのせかい》にいたのですね。」
「うん。」
「それで、子どもたちの方はどうだったのですか?」
「さあ…分からないわ…両親が不仲だったので…親子関係はケンアクだったと思うわよ。」
「なんとも言えない。」

私は、お茶をひとくちのんだあと大きくため息をついた。

…………………………

(ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ…)

時は、朝8時半頃であった。

ほたるさんと私は、宇野港から出航した宇高国道フェリーに乗って再び旅に出た。

ところ変わって、甲板《デッキ》にて…

ほたるさんは、甲板《デッキ》に設置されているベンチに腰かけていた。

ショルダーバックを持っている私は、立っていた。

ベンチに座っているほたるさんは、甲板《デッキ》に立っている私に対して声をかけた。

「よーくん。」
「ほたるさん。」
「『3年前』の出来事の原因について話すけど…三永《みえ》ちゃんのダンナは、三永《みえ》ちゃんのボーイフレンドに対してよりし烈なうらみを募らせていたのよ。」
「三永《みえ》さんのダンナさまがうらんでいたボーイフレンドと言うのは…どなたですか?」
「三永《みえ》ちゃんの家の近くで暮らしていた佐久本重俊《さくもとしげとし》と言う男よ。」
「佐久本と言う男は…違うガッコーに通っていたのですね。」
「そうよ…佐久本は、一般の公立中学から高校に通っていたけわ。」
「家が近所同士だったと言う点があった…他に共通している点は?」
「ないわよ…家が近所同士であった以外は何もなかったわよ。」

それから数秒後にほたるさんは私に対して声をかけた。

「佐久本の家は、ご両親がものすごく厳しい人だったのよ。」
「ものすごく厳しい人だった…佐久本の父親の職業は?」
「佐久本の父親の職業はセンバイコーシャの課長以上の管理職よ…同期で一番に昇進することしか頭になかったので…家族のことは後回しにしていたのよ。」
「お母さまは?」
「佐久本の母親は、センバイコーシャの工場で働いていたのよ…結婚したあとも工場で働き続けていたのよ。」
「佐久本は、その間ずっとひとりだった。」
「そうよ。」
「その間、佐久本本人は…」
「家で両親《おや》の帰りを待つしかなかったのよ…たしかその時に三永《みえ》ちゃんが佐久本の家に遊びに来ていたのよ。」
「そのことは、佐久本の両親と三永《みえ》さんの遠縁のおじ夫婦は知っていたのですね。」
「それはどうかわからないけど…」

ほたるさんは、ひと息ついたあと私に声をかけた。

「だけど…三永《みえ》ちゃんと佐久本がお付き合いをすることについては…三永《みえ》ちゃんの遠縁のおじ夫婦が猛反対を唱えていたのよ。」
「猛反対を唱えた理由は?」
「佐久本の父親が来年度の人事異動《じんじ》のことで頭を痛めていたのよ…『オレは同期で一番に係長に昇進した…同期で一番に課長に昇進した…部長に昇進するのも重役に昇進するのも…一番乗りを果たすのだ!!』…と言うて家族たちを犠牲にした…母親は仕事と育児・家庭のバランスを維持するだけで手がいっぱいだった…そんな中で、当時少年だった佐久本はずっとひとりぼっちだった。」
「カレに友達はいたのですか?」
「ひとりもいなかったわよ…そんな中で唯一手を差し伸べたのは三永《みえ》ちゃんだけよ。」
「そうでしたか。」

それからまた5秒後に私はほたるさんに声をかけた。

「三永《みえ》さんの遠縁のおじ夫婦が佐久本と三永《みえ》さんが交際することに猛反対を唱えていたことについてですが…他にも猛反対を唱えていた理由はありましたか?」
「あったわよ…あげたらきりがないほどたくさんあったわよ。」

ほたるさんは、それから5秒後に私に対して声をかけた。

「三永《みえ》ちゃんの遠縁のおじ夫婦の側にも、センバイコーシャの関係者の人がいたのよ…その方は、佐久本の父親が新入社員だった時の教育係で、佐久本の父親を一からきたえあげたのよ。」
「その方は、今どうなされていますか?」
「その方は、センバイコーシャをやめたあと国会議員さんに転向したのよ…国政選挙の当選回数は通算20回よ…大臣を8回務めたなど…立派な経歴がたくさんあったのよ。」
「それじゃあ、佐久本の家は立派じゃないということですか?」
「立派な人とか立派な人じゃないとかは言ってないわよ…話変わるけど、三永《みえ》ちゃんと佐久本のふたりの関係についてだけど…佐久本は…今も三永《みえ》ちゃんのことを愛しているのよ。」
「なんだって…それはどう言うことですか!?」
「高松港《みなと》に着いたら話すわよ。」

話はそこで終わった。

ほたるさんは、佐久本が三永《みえ》さんをまだ愛していると言うた。

佐久本が三永《みえ》さんのことを今も愛し続けている理由はなんだろうか?

…………………………
< 917 / 940 >

この作品をシェア

pagetop