大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【そっと、おやすみ・その3】

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それからまた100分後であった。

ことでん瓦町駅から200メートル先にある踏み切りの警笛が鳴っていた。

遮断器《バー》が降りている踏み切りに琴平方面から来たボギー電車がゆっくりと通過した。

…………………………

またところ変わって、ことでん瓦町駅の裏手・塩上町《しおがみまち》の通りにて…

ほたるさんとショルダーバックを持っている私は、ゆっくりと歩きながら話をしていた。

「ほたるさん。」
「なあに?」
「この通りは、旅館だけが立ち並んでいるよね。」
「そうよ。」
「ほたるさんが言うたある場所はどこにあるの?」
「この先にあるわよ。」

ほたるさんは、私に対して『あれよ。』と言うた。

ほたるさんが言うた『あれ』とは、空き家になっている旅館であった。

私は、ほたるさんに対して声をかけた。

「この旅館は…空き家になってますよ。」
「空き家になっている建物は、かつてうちが経営していた旅館よ…入りましょう。」

このあと、ほたるさんとショルダーバックを持っている私は建物の中に入った。

…………………………

ところ変わって、建物の中にて…

ほたるさんと私は、パイプベッドが置かれている和室にやって来た。

部屋を見た私は、おどろいた声で言うた。

「和室にパイプベッド…この部屋は、なんですか?」

ほたるさんは、私に対してこう説明した。

「ここは、うちが経営していたちょいの間旅館よ。」
「ちょいの間旅館?」
「うん。」
「ここ…ほたるさんが経営していた店でしたね。」
「そうよ…うちがここでちょいの間旅館を経営していたのは昭和40年代から50年頃までよ。」
「昭和40年代から50年頃まで…か。」

…………………………………

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それからまた80分後であった。

ほたるさんとショルダーバックを持っている私は、ことでん瓦町駅から琴平行きの電車に乗って再び旅に出た。

電車の車内にて…

ほたるさんは、座席に座っていた。

ショルダーバックを持っている私は、つり革につかまった状態で立っていた。

ほたるさんは、私に対して声をかけた。

「三永《みえ》ちゃんが32の時の話だけど…子どもたち二人を連れて家出したのよ…うちが三永《みえ》ちゃんと出会ったのは、昭和40年の夏だった…三永《みえ》ちゃんと二人の子どもたちは、(ことでん)円座《えんざ》の駅の待合室のベンチで寝泊まりしていたのよ。」
「その頃、ほたるさんは塩上町でちょいの間の旅館を始めたばかりでしたね。」
「そうよ。」

それから5秒後にほたるさんは私に声をかけた。

「うちが三永《みえ》ちゃん母子《おやこ》と会ったのは、うちが円座の駅の近くにあるスーパーへ買い出しに行ってた時だったわ…行くあてもない…帰るあてもない…子どもたちを育てる自信がない…それを聞いたうちは、三永《みえ》ちゃん母子《おやこ》を引き取ったわ。」
「三永《みえ》さん母子《おやこ》は、あの旅館で暮らしはじめたのですね。」
「ええ。」
「子どもたちが通う学校はどうなされたのですか?」
「三永《みえ》ちゃんの子どもたちが通う学校については、高松市内《しない》にある小学校に転校させたわよ。」
「そうですか…それで、三永《みえ》さん母子《おやこ》があの旅館で暮らしていたのはいつ頃までですか?」
「昭和45年の暮れまでよ。」
「その後は?」
「くら替えするために城東町《じょうとうまち》へ移ったわよ。」
「城東町《じょうとうまち》。」
「そこにあるソープに転向したのよ。」
「ちょいの間のあとはソープランドで働いていたのですね。」
「その後はどうなったか知らないけど…」
「そんなことがあったのですね。」

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ほたるさんと私が乗っている電車は、琴平方面へ向かって走り続けた。

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