大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【道しるべ】

時は、夜10時過ぎであった。

またところ変わって、国鉄敦賀駅のエントランスホールにて…

ショルダーバックを持って特急列車《れっしゃ》から降りた私は、改札口を通って外へ出た。

この時間、小浜線は最終列車《さいしゅう》が出たので乗り継ぐことができなかった。

宮津方面へ行くのは、明日にしよう…

それよりも、今夜の寝床を探さなきゃ…

……………………………

この時であった。

私は、エントランスホールで熊代さんと会った。

熊代さんは、私に対して声をかけた。

「コリントさま。」
「ああ、熊代さん。」
「これからどちらへ行かれるのですか?」
「これから宮津へ向かう予定です。」
「コリントさま、その前にコリントさまに話したいことがあるのです…すみませんけれど、予定を変更していただけますか!?」
「かしこまりました。」

………………………………

それからまた30分後であった。

またところ変わって、敦賀市中央町にある警察署にて…

警察署の生活安全課《せいあん》のソファに図体のでかい中年の男が座っていた。

生活安全課《せいあん》の男性職員さんは、電話をかけていた。

この時、熊代さんとショルダーバックを持っている私が警察署にやって来た。

私は、怒った表情で言うた。

「あの図体のでかい男はどこのどいつや!!」

熊代さんは、私に対して声をかけた。

「その件については、このあと私が説明いたします。」

このあと、熊代さんと私は警察署内《しょない》にある会議室へ移動した。

……………………………

またところ変わって、会議室にて…

熊代さんと私は、向かいあった状態で座っていた。

私が座っている席のテーブルの上にゼブラシャーボーの本体とメモパッドがおかれていた。

熊代さんは、私に対して生活安全課《せいあん》にいた図体のでかい中年男のことについて話した。

「生活安全課に保護された男性の身元は、田渕祝彦《たぶちのりひこ》さま(43歳)」

私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドにメモ書きをしながら『田渕のりひこ』と言うたあと熊代さんに声をかけた。

「のりひこの『のり』の漢字は?」
「祝詞《のりと》の『のり』です。」
「はい、『祝』…『ひこ』は『彦根』の『彦』ですね。」
「はい、そうです。」
「職業は?」
「伊根町にある農協の支所です。」

私は、メモ書きをしながら『伊根町にある農協』と言うたあと熊代さんに声をかけた。

「田渕さんのご家族の方はいらっしゃいますか?」
「ご家族の方?」
「田渕さんは、おひとりで住まわれているのですか?」
「はい。」
「婚姻歴はありますか?」
「聞いていません。」
「そうですか、分かりました。」

この日は、具体的な話を聞くことができなかった。

きょうは体が疲れたので署内にある留置場で一泊することにした。

……………………………

さて、その頃であった。

またところ変わって、ハバロフスクにある貨物列車のヤードにて…

貨物列車のコンテナの中に現金が入っているジュラルミンケースが積み込まれた。

現金は、ママと重俊《しげとし》と久通《ひさみち》と一久《かずひさ》とさよこが死亡した時に支払われた保険金であった。

金額は、9999垓円《がい》であった。

(プォーッ…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

時は、日本時間11月12日の深夜0時過ぎであった。

9999垓円《がい》の現金が積み込まれた貨物列車がヤードから出発した。

貨物列車は、シベリア鉄道を通って例の場所へ向かった。

溝端屋の番頭《ばんと》はんは、ニヤニヤした表情で走り出した貨物列車を見つめていた。

………………………………
< 937 / 940 >

この作品をシェア

pagetop