大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【冬の蛍】

時は、午後3時過ぎであった。

またところ変わって、松山市古川南《しないふるかわみなみ》の河川沿いの地域にて…

ショルダーバックを持って再び旅に出た私は、熊代さんが書いてくださった地図をたよりに目的地へ向かっていた。

「え~と…松山市古川南…の(目的地)は…ああ、もうすぐだ。」

…………………………

またところ変わって、松山市古川南にある老健施設のロビーにて…

熊代さんの実家の近くで暮らしていた伊佐山《いさやま》さんのご主人は、14年ほど前から老健施設《このしせつ》で暮らしていた。

ロビーには、利用者さんたちがたくさん集まっていた。

お茶をのみながらおともだちと楽しく話をしている利用者さん…

職員と一緒に折り紙を楽しんでいる利用者さん…

…が集まっていた。

その中で、テレビの前にじっと座っている男性の利用者さんがいた。

その男性の利用者さんが伊佐山《いさやま》のご主人さまであった。

ショルダーバックを持って旅を続けていた私は、女性職員と一緒にロビーにやって来た。

女性職員は、私に対して声をかけた。

「テレビの前にじっと座っている男性の利用者さんが伊佐山《いさやま》さんです。」
「ああ…はい。」
「こちらです。」

私は、女性職員と一緒に伊佐山《いさやま》さんのもとへ行った。

また場面は変わって、ロビーに設置されているテレビの付近にて…

ロビーに設置されている21型のナショナルα2000の画面にNHK総合テレビで放送されている『大相撲九州場所』の実況生中継が映っていた。

伊佐山《いさやま》のご主人は、ひとことも言わずに相撲中継を観ていた。

そこへ、女子職員と私がやって来た。

女子職員は、伊佐山《いさやま》のご主人に対して声をかけた。

「伊佐山《いさやま》さん…伊佐山《いさやま》さん。」

伊佐山《いさやま》のご主人は、弱々しい声で『なんぞぉ〜』と言うた。

女子職員は、伊佐山《いさやま》のご主人に対しておだやかな声で言うた。

「伊佐山《いさやま》さんにお客さまですよ〜」
「客?」
「コリントイワマツヨシタカグラマシーさまです。」
「なに?」
「コリントイワマツヨシタカグラマシーさまがお越しになりましたよ〜」
「なに?」

伊佐山《いさやま》のご主人は、女子職員の呼びかけに対して『なに?』と答えた。

伊佐山《いさやま》のご主人は、会話することがコンナンな状態であった。

セヴァスチャンじいさんと実母《ママ》のことや満州《げんち》で暮らしていたことをたずねても、伊佐山《いさやま》のご主人は『覚えてない』『忘れた〜』と言うだけである。

どうしたらいいのだ…

…………………………

この時であった。

主任の女子職員が私と女子職員のもとにやって来た。

主任の女子職員は、私と女子職員に対して『伊佐山《いさやま》さんの娘さん夫婦がお越しになりました。』と言うた。

このあと、私と女子職員は主任の女子職員と一緒に施設内にある応接室へ行った。

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