大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
【断腸のミアリ峠】
またところ変わって、施設内にある応接室にて…
主任の女子職員は、私に対して伊佐山《いさやま》さんの娘さん夫婦を紹介した。
「コリントさま、伊佐山《いさやま》さんの娘さん夫婦でございます。」
私は、伊佐山《いさやま》さんの娘さん夫婦に対して初対面のごあいさつをかわした。
「はじめまして、コリントイワマツヨシタカグラマシーともうします。」
「伊佐山《いさやま》の娘と主人でございます。」
「よろしくお願いします。」
「おすわりくださいませ。」
私と伊佐山《いさやま》さんの娘さん夫婦は、向かい合う形でソファに腰かけた。
私は、ショルダーバックに収納されていたゼブラシャーボーの本体とメモパッドを取り出したあとメモ書きをする準備を整えた。
伊佐山《いさやま》さんの娘さんは、私に対して声をかけた。
「熊代さんからの紹介で老健施設《こちら》にお越しになられたのですね。」
「はい、まちがいありません。」
私は、伊佐山《いさやま》さんの娘さんに対してもうしわけない表情で言うた。
「あの〜、娘さんにおたずねしますが…お父さまが女子職員《しょくいん》さんの呼びかけに対して『なに?』と言うお言葉をくりかえして言われていました…こんなことをおたずねしてもうしわけございません…お父さまの具合はどうなっているのですか?」
娘さんは、私の問いに対してこう答えた。
「父は、今から16年前にくも膜下出血で倒れたのです。」
「くも膜下出血?」
「はい。」
「手術はなされたのですね。」
「はい…発見が早かったので大事には至りませんでした。」
「発見が早かったので、命は助かったのですね。」
「ですが…」
「ですが?」
「父は、それから数ヶ月後に重度の認知症にかかりました。」
「重度の認知症?」
「はい。」
「その後、伊佐山《いさやま》さんは老健施設《このしせつ》で生活を始めたのですね。」
「はい。」
「そうでしたか。」
娘さんは、私に対して声をかけた。
「コリントさま。」
「なんでしょうか?」
「コリントさまは、うちの父になにを話そうとしていたのですか?」
「ああ、しばらくお待ちくださいませ。」
私は『え~と…』と言いながらメモパッドのページをめくったあとメモ書きを見た。
その後、伊佐山《いさやま》さんの娘さんに声をかけた。
「伊佐山《いさやま》さん方のご家族のみなさまのことでおたずねしたいことがございますがよろしいでしょうか?」
「いいですよ。」
「え~とですね…伊佐山《いさやま》さんのご家族のみなさまが満州《げんち》へ移住なされたのはいつ頃ですか?」
「1926年の秋頃です。」
私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドの余白のページに『1926年の秋頃に伊佐山《いさやま》さん一家が満州へ移住した』と書き込んだ。
その後、娘さんに対して『分かりました』と言うたあと娘さんに声をかけた。
「満州《げんち》に移住なされた時ですが…ご近所に熊代さんの奥さまともうひと方…宮崎県で旅館を経営なされている宇城田《うきた》のおかみさんの二世帯の家族の方がいらっしゃいしたが…そのお二方をご存知でしょうか?」
「熊代さんの奥さまと宇城田《うきた》のおかみさんのご家庭もご存知です…家がとなり近所だったので、助け合っていました。」
「そうですか…分かりました…しばらくお待ちくださいませ。」
私は、メモ書きを終えたあとショルダーバックの外ポケットに収納されている写真入りのパスケースを取り出した。
パスケースに入っている写真にセヴァスチャンじいさんと実母《ママ》が写っていた。
私は、伊佐山《いさやま》さんの娘さんに対してパスケースに入っている写真を見せながら声をかけた。
「あの…伊佐山《いさやま》さんのご家族たちが暮らしていた家の近くで暮らしていた…(パスケースに入っている)写真に写っている男女をご存知でしょうか?」
伊佐山《いさやま》さんの娘さんは、私に対して『はい、ご存知です。』と答えた。
私は『ご存知でしたね。』と言うたあと伊佐山《いさやま》さんの娘さんに声をかけた。
「さきほどお見せした写真に写っているご高齢の男性と若い女性は…私の実の両親です。」
「コリントさまのご両親でしたね。」
「はい…それともう一人、同居なされていた家族がいたことをご存知でしょうか?」
「ああ、たしかもう一人…チャラい格好をした男がいたのを覚えてます。」
「そのチャラい格好の男を見たのはいつ頃ですか!?」
「移住した翌年でした。」
「1927年頃でしたね。」
「そうです。」
「しばらくお待ちください。」
私は、ショルダーバックの外ポケットに写真入りのパスケースを収納したあとメモパッドとゼブラシャーボーの本体を手に取った。
その後、メモを取る準備を整えた。
私は、伊佐山《いさやま》さんの娘さんに声をかけた。
「くりかえしておたずねしますが、問題のチャラい格好の男が来たのは1927年頃でしたね。」
「間違いありません…ああ、コリントさま。」
「なんでしょうか?」
「コリントさまがおっしゃられたチャラい格好の男のことで思い出した話があるのです。」
「思い出した話?」
「はい。」
「それはどう言うことでしょうか?」
伊佐山《いさやま》さんの娘さんは、私に対してこう話した。
「私の実家のご家族が満州《げんち》に移住した時は…写真に写っていたご高齢の男性の方おひとりが暮らしていたのです。」
私は、おどろいた声で言うた。
「なんだって!?…セヴァスチャンじいさん一人だけが暮らしていた!?…それじゃあ、私の実母《はは》は…いなかった…」
「はい…そのチャラい格好の男がコリントさまのおかあさまを連れて来たのです。」
「分かりました。」
私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドにメモ書きをしたあと伊佐山《いさやま》さんの娘さんに声をかけようとした。
伊佐山《いさやま》さんの娘さんは、私に対してこう言うた。
「コリントさま…その時の話でございますが、私の父がチャラい格好の男に説得したのです。」
「説得した?」
「はい。」
「お父さまは、チャラい格好をした男に対して『われに帰れ』と言うたのですね。」
「はい。」
私は、メモパッドのページを少し戻したあとメモ書きを見た。
その後、私は伊佐山《いさやま》さんの娘さんに声をかけた。
「熊代さんの奥さまから聞いた話でございますが…伊佐山《いさやま》さんのご主人の他にもチャラい格好の男を説得した方がいらっしゃいました…その方は、チャラい格好の男から暴力をふるわれたので、説得に失敗したのです。」
「その方が父に助けを求めに来たのです…『チャラい格好の男に暴力をふるわれた…言うことを聞かないので手に負えない〜』と言うて…助けを求めました。」
「伊佐山《いさやま》さんが説得に入ったと言うことですね。」
「はい。」
「その結果、どうなったのですか?」
「チャラい格好の男は、父からより厳しい言葉を言われたので素直にしたがいました。」
「なんだって…それは一体どう言うことですか!?」
「チャラい格好の男は、自分が未熟者であったことに気がついたので結婚を思い止まると言うて素直に日本《ないち》へ帰りました。」
「私の実母《はは》はどうなったのですか?」
「コリントさまのおかあさまは、親御《おや》が決めた結婚相手と暮らすのがイヤだから日本《ないち》に帰らないと言うて…満州《げんち》に残りました。」
「ちょっとお待ちくださいませ。」
私は、メモパッドのページを何ページかめくったあとメモ書きを見た。
メモ書きを見た私は、顔が真っ青になった。
熊代さんの奥さまがおっしゃられた話と伊佐山《いさやま》さんの娘さんがおっしゃられた話が異なっているじゃないか…
どうなっているのだよ…
……………………………
主任の女子職員は、私に対して伊佐山《いさやま》さんの娘さん夫婦を紹介した。
「コリントさま、伊佐山《いさやま》さんの娘さん夫婦でございます。」
私は、伊佐山《いさやま》さんの娘さん夫婦に対して初対面のごあいさつをかわした。
「はじめまして、コリントイワマツヨシタカグラマシーともうします。」
「伊佐山《いさやま》の娘と主人でございます。」
「よろしくお願いします。」
「おすわりくださいませ。」
私と伊佐山《いさやま》さんの娘さん夫婦は、向かい合う形でソファに腰かけた。
私は、ショルダーバックに収納されていたゼブラシャーボーの本体とメモパッドを取り出したあとメモ書きをする準備を整えた。
伊佐山《いさやま》さんの娘さんは、私に対して声をかけた。
「熊代さんからの紹介で老健施設《こちら》にお越しになられたのですね。」
「はい、まちがいありません。」
私は、伊佐山《いさやま》さんの娘さんに対してもうしわけない表情で言うた。
「あの〜、娘さんにおたずねしますが…お父さまが女子職員《しょくいん》さんの呼びかけに対して『なに?』と言うお言葉をくりかえして言われていました…こんなことをおたずねしてもうしわけございません…お父さまの具合はどうなっているのですか?」
娘さんは、私の問いに対してこう答えた。
「父は、今から16年前にくも膜下出血で倒れたのです。」
「くも膜下出血?」
「はい。」
「手術はなされたのですね。」
「はい…発見が早かったので大事には至りませんでした。」
「発見が早かったので、命は助かったのですね。」
「ですが…」
「ですが?」
「父は、それから数ヶ月後に重度の認知症にかかりました。」
「重度の認知症?」
「はい。」
「その後、伊佐山《いさやま》さんは老健施設《このしせつ》で生活を始めたのですね。」
「はい。」
「そうでしたか。」
娘さんは、私に対して声をかけた。
「コリントさま。」
「なんでしょうか?」
「コリントさまは、うちの父になにを話そうとしていたのですか?」
「ああ、しばらくお待ちくださいませ。」
私は『え~と…』と言いながらメモパッドのページをめくったあとメモ書きを見た。
その後、伊佐山《いさやま》さんの娘さんに声をかけた。
「伊佐山《いさやま》さん方のご家族のみなさまのことでおたずねしたいことがございますがよろしいでしょうか?」
「いいですよ。」
「え~とですね…伊佐山《いさやま》さんのご家族のみなさまが満州《げんち》へ移住なされたのはいつ頃ですか?」
「1926年の秋頃です。」
私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドの余白のページに『1926年の秋頃に伊佐山《いさやま》さん一家が満州へ移住した』と書き込んだ。
その後、娘さんに対して『分かりました』と言うたあと娘さんに声をかけた。
「満州《げんち》に移住なされた時ですが…ご近所に熊代さんの奥さまともうひと方…宮崎県で旅館を経営なされている宇城田《うきた》のおかみさんの二世帯の家族の方がいらっしゃいしたが…そのお二方をご存知でしょうか?」
「熊代さんの奥さまと宇城田《うきた》のおかみさんのご家庭もご存知です…家がとなり近所だったので、助け合っていました。」
「そうですか…分かりました…しばらくお待ちくださいませ。」
私は、メモ書きを終えたあとショルダーバックの外ポケットに収納されている写真入りのパスケースを取り出した。
パスケースに入っている写真にセヴァスチャンじいさんと実母《ママ》が写っていた。
私は、伊佐山《いさやま》さんの娘さんに対してパスケースに入っている写真を見せながら声をかけた。
「あの…伊佐山《いさやま》さんのご家族たちが暮らしていた家の近くで暮らしていた…(パスケースに入っている)写真に写っている男女をご存知でしょうか?」
伊佐山《いさやま》さんの娘さんは、私に対して『はい、ご存知です。』と答えた。
私は『ご存知でしたね。』と言うたあと伊佐山《いさやま》さんの娘さんに声をかけた。
「さきほどお見せした写真に写っているご高齢の男性と若い女性は…私の実の両親です。」
「コリントさまのご両親でしたね。」
「はい…それともう一人、同居なされていた家族がいたことをご存知でしょうか?」
「ああ、たしかもう一人…チャラい格好をした男がいたのを覚えてます。」
「そのチャラい格好の男を見たのはいつ頃ですか!?」
「移住した翌年でした。」
「1927年頃でしたね。」
「そうです。」
「しばらくお待ちください。」
私は、ショルダーバックの外ポケットに写真入りのパスケースを収納したあとメモパッドとゼブラシャーボーの本体を手に取った。
その後、メモを取る準備を整えた。
私は、伊佐山《いさやま》さんの娘さんに声をかけた。
「くりかえしておたずねしますが、問題のチャラい格好の男が来たのは1927年頃でしたね。」
「間違いありません…ああ、コリントさま。」
「なんでしょうか?」
「コリントさまがおっしゃられたチャラい格好の男のことで思い出した話があるのです。」
「思い出した話?」
「はい。」
「それはどう言うことでしょうか?」
伊佐山《いさやま》さんの娘さんは、私に対してこう話した。
「私の実家のご家族が満州《げんち》に移住した時は…写真に写っていたご高齢の男性の方おひとりが暮らしていたのです。」
私は、おどろいた声で言うた。
「なんだって!?…セヴァスチャンじいさん一人だけが暮らしていた!?…それじゃあ、私の実母《はは》は…いなかった…」
「はい…そのチャラい格好の男がコリントさまのおかあさまを連れて来たのです。」
「分かりました。」
私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドにメモ書きをしたあと伊佐山《いさやま》さんの娘さんに声をかけようとした。
伊佐山《いさやま》さんの娘さんは、私に対してこう言うた。
「コリントさま…その時の話でございますが、私の父がチャラい格好の男に説得したのです。」
「説得した?」
「はい。」
「お父さまは、チャラい格好をした男に対して『われに帰れ』と言うたのですね。」
「はい。」
私は、メモパッドのページを少し戻したあとメモ書きを見た。
その後、私は伊佐山《いさやま》さんの娘さんに声をかけた。
「熊代さんの奥さまから聞いた話でございますが…伊佐山《いさやま》さんのご主人の他にもチャラい格好の男を説得した方がいらっしゃいました…その方は、チャラい格好の男から暴力をふるわれたので、説得に失敗したのです。」
「その方が父に助けを求めに来たのです…『チャラい格好の男に暴力をふるわれた…言うことを聞かないので手に負えない〜』と言うて…助けを求めました。」
「伊佐山《いさやま》さんが説得に入ったと言うことですね。」
「はい。」
「その結果、どうなったのですか?」
「チャラい格好の男は、父からより厳しい言葉を言われたので素直にしたがいました。」
「なんだって…それは一体どう言うことですか!?」
「チャラい格好の男は、自分が未熟者であったことに気がついたので結婚を思い止まると言うて素直に日本《ないち》へ帰りました。」
「私の実母《はは》はどうなったのですか?」
「コリントさまのおかあさまは、親御《おや》が決めた結婚相手と暮らすのがイヤだから日本《ないち》に帰らないと言うて…満州《げんち》に残りました。」
「ちょっとお待ちくださいませ。」
私は、メモパッドのページを何ページかめくったあとメモ書きを見た。
メモ書きを見た私は、顔が真っ青になった。
熊代さんの奥さまがおっしゃられた話と伊佐山《いさやま》さんの娘さんがおっしゃられた話が異なっているじゃないか…
どうなっているのだよ…
……………………………