大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【あの町へ帰りたい】

時は、11月29日の夕方5時半頃であった。

またところ変わって、国鉄宮崎駅の西口にある駅前広場《ひろば》にて…

ショルダーバックを持って再び旅に出た私は、国鉄吉都線から日豊本線《にっぽうせん》の各駅停車《どんこう》を乗り継いでここまで来た。

私はこのあと、今夜の宿を探しに行くところであった。

この時であった。

濃い紫色の振りそでと白い帯の和服姿のほたるさんが手を振りながら私を呼んでいた。

「よーくん!!よーくんこっちよ!!」

後ろをふりかえった私は、ほたるさんに声をかけた。

「ほたるさん!!ほたるさん!!」
「よーくん!!」

私のもとにやって来たほたるさんは、切羽詰まった声で言うた。

「よーくん!!無事でよかった!!」
「ほたるさん!!ちょうどよかった!!ほたるさんに話したいことがあるのだよ!!」
「うちもよーくんに話したいことがあるのよ!!」
「それじゃあ、近くにある居酒屋《みせ》へ行きましょう!!」
「いいわよ。」

……………………………

それからまた1時間後であった。

またところ変わって、宮崎市高千穂通《しないたかちほどお》りにある居酒屋にて…

店内の個室席のテーブルの上に宮崎地鶏《じどり》のからあげとポテトサラダと枝豆と切り干し大根と大きめのタンブラーに入っている(そば焼酎)雲海のお湯割りが置かれていた。

私は、ほたるさんに対して宇城田《うきた》のおかみさんが熊代さんの奥さまの借金の保証人になっていたことを話した。

私の話を一通り聞いたほたるさんは、私に対してこう言った。

「よーくん…うちね…宇城田《うきた》のおかみさんと熊代の奥さんが話していた現場を聞いたのよ。」
「えっ?聞いた!?」
「うん。」
「それはいつ頃!?」
「たしか…3週間前…だったわ。」
「3週間前…場所は!?」
「京町温泉街《おんせんがい》にある喫茶店《サテン》よ。」
「京町温泉街《おんせんがい》にある喫茶店《サテン》。」
「うん。」
「宇城田《おかみ》さんと熊代さんの奥さまは、どんな話をしていたのですか!?」

ほたるさんは、のみかけのお湯割りをひとくちのんだあと私に対してわけを話した。

……………………………

時は、11月8日の昼過ぎであった。

ところ変わって、えびの市の京町温泉街《おんせんがい》にある喫茶店《サテン》にて…

宇城田《おかみ》さんと熊代さんの奥さまは、向かいあった状態で座っていた。

熊代さんの奥さまは、宇城田《おかみ》さんに対して『借金のホショウニンになってほしい』と頼んだ。

宇城田《おかみ》さんは、ものすごく困った声で熊代さんの奥さまに言うた。

「ホショウニンになってほしい?」
「うん。」
「紀子《のり》ちゃん、よく考え直した方がいいわよ。」
「アタシはまじめに考えているわよ…ホショウニンを頼もうと思っていた人はいたけど、断られたのよ…今、頼むことができるのは伊久子《いく》ちゃん(おかみさんの名前)しかいないのよ〜」
「紀子《のり》ちゃん、人の話をよく聞いて…紀子《のり》ちゃんは、ホショウニンを頼もうと思っていた人に断られたと言うたわね。」
「うん。」
「断られた理由はなんであるのかと言うのを考えたことがあるの?」
「なんで断られたのかって?」
「そうよ。」

熊代さんの奥さまは、つらそうな声で『思い出せない〜』と言うた。

宇城田《おかみ》さんは、熊代さんの奥さまに対してこう言った。

「紀子《のり》ちゃん方の家には、娘さんがふたりいたよね。」
「うん…長女(34歳)はシンガポール…次女(30歳)はドバイに生活の拠点をかまえているのよ。」
「おふたりの娘さんは、一度でもいいから実家《いえ》に帰って来た時はあったの?」
「ない…ふたりとも外資系企業のお仕事で多忙よ。」

宇城田《おかみ》さんは、怒った表情を浮かべながら熊代さんの奥さまをたしなめた。

「紀子《のり》ちゃん…娘さんは結婚しているの!?してないの!?」あ
「して…ない…」

宇城田《おかみ》さんは、より厳しい声で熊代さんの奥さまをたしなめた。

「紀子《のり》ちゃんのふたりの娘さんが結婚しなかった理由がなんであるのか…と言うことをよく考えなさい!!紀子《のり》ちゃんは、ふたりの娘さんにふさわしい結婚相手像《あいてぞう》を厳しく設定していたのじゃないの!?」

熊代さんの奥さまは、いいわけがましい言葉を言うた。

「あの時は、娘たちを食べさせることができたらよかったのよ…そのためには…年収が1000万円以上必要だったのよ…あと、自家用車《くるま》を持っている…安定した経済力がある人じゃないとだめなのよ!!」

宇城田《おかみ》さんは、ものすごく怖い表情を浮かべながら熊代さんの奥さまをたしなめた。

「『安定した経済力』と言う言葉の意味とは何よ!!…紀子《のり》ちゃんとダンナさまがハードルを高く設定したことが原因でふたりの娘さんが女の幸せをあきらめたのよ…紀子《のり》ちゃん!!人の話を聞きなさい!!」

このあと、宇城田《おかみ》さんは熊代さんの奥さまに対してガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミ…と言いまくった。

……………………………

またところ変わって、居酒屋の個室席にて…

私に対してわけを話したほたるさんは『…と言うことがあったのよ。』と言うた。

私は、ほたるさんに対して声をかけた。

「話は一通りお聞きしました…この時、熊代さんの奥さまは宇城田《おかみ》さんに対して借金のホショウニンを頼まなかったのですね。」
「うちが聞いたところでは、熊代さんの奥さまは宇城田《おかみ》さんに借金のホショウニンを頼むことはしなかった…ということになるわよ。」
「しかし…宇城田《おかみ》さんは熊代さんの奥さまが申し込んだ借金のホショウニンになっていた…熊代さんの奥さまは、どうやって宇城田《おかみ》さんをホショウニンにしたのか?…こればかりは…分からない…」

私は、のみかけの(雲海の)お湯割りを一気にのみほしたあと大きくため息をついた。

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