初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「違う、大切にされているのはわかってた。
でも、あの時の子供だからかな、女に見えないのに結婚して申し訳なくて」
「理世、最後はどういう意味だ?」
「だから、お兄ちゃんには所詮私は子供しか見えないのに。
ちゃんと今度は女の人と思える人と結婚して欲しくて」
「理世は可愛いよ。女に見えないってどこからくるんだ」
「だって、今まで一緒に住んで旅行までしたのにキスも無いし!」

思わず口を手で覆う。
上目遣いで彼を見れば、彼の目は丸くなっていた。
恥ずかしい不満をぶつけてしまい、自分の身勝手さに逃げたくなる。

「それは」
「良いんです、忘れて下さい!
だから今度は」

言い終わる前に抱きしめられた。
大きな腕が背中に回り、こんなにも強く抱きしめられたのは初めてに思える。

「俺が君に欲情していないとでも思っていたのか」

耳元で囁かれた怒りを含む低い声に、私の体が固まる。

「君は幼い頃、何も悪くないのに男から恐怖を味わった。
そして今度も君は何も悪くないのに男から怖い思いをした。
俺はただ君に安心して欲しかった。
側で、守っていたかった。
俺の腕の中が安心してくれるのなら、まずは逃げたくないほど甘えてもらおうと考えた。
君が思うほど優しい男じゃ無い。
好きな女を絶対に逃さないでいるためなら、そんな欲情などいくらでも我慢する」

背中に回されていた右手が私の頬を包む。
ゆっくり親指が動いて、私の唇をそっと撫でた。

「もしも、君が離婚届を置いた本当の理由が俺が君を女性としてみていないということなのならあり得ない誤解だ。
君が許してくれるなら今すぐにでもベッドに連れ込みたいというのに」

初めて向けられる獣のように鋭い目。
怖いはずなのに、こんなにも心が跳ねている。
この気持ちを素直に伝えて良いのだろうか。

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