初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「誰か迎えに来るわけでも無いんだろう、もう遅い時間だしな。
君の家はどっちの方向だ?」
「そんな大丈夫ですから。
それに終電が無くなってしまいますよ」
「で、君の家はどちら側なんだ?」
「南口側です・・・・・・」

逃げることを許さないかのような常務の言葉に、私は諦めてそう答えた。
歩き出し、ついいつもの癖で自宅へ同じルートで帰っていることに気付く。
誰もいない住宅街で、靴音はこの二つだけ。
それでも他に足音がしないか気になってしまう。

常務に不審に思われないような程度で、視線を動かし耳をそばだて周囲を注意した。
そんな私の隣を歩く常務はとても背も高くて体格もしっかりとしている。
こういう男性が隣で歩いてくれるなら、変なヤツもきっと来ないだろうと段々安心して歩くことが出来た。

「家まではあとどれくらいなんだ?」
「あと五分くらいです。本当に申し訳ありません」
「気にしなくて良い」

常務はあまりおしゃべりをするタイプには思えないため、私も余計な話をしないので沈黙している時間がより長く感じる。
頭は自分をつきまとっていた靴音のことより、常務と一緒に歩いていて会話がない時間を過ごすことの方に段々と神経がすり減りそうな気分になってきた。

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