【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「アナベルさま、これからどうしますか?」
「もちろん、彼女たちに淑女レッスンを」
「……え?」

 驚いたような声を上げる三人に、アナベルはにっこりと微笑んだ。

「カルメ伯爵夫人に、ビシバシと鍛えられてくださいね」

 頬の横で手を合わせてこてんと首をかたむけるアナベルに、三人はごくりと喉を鳴らした。

 メイドがお茶を用意して部屋に入るのと同時に、エルヴィスが姿を現す。

「エルヴィス陛下! お忙しかったのでは……?」
「昨日詰め込んだから、今日は早めに終わらせたんだ。……彼女たちは、例の?」

 アナベルはこくりとうなずいて、ロマーヌとエルヴィスに彼女たちを紹介した。

 彼らは彼女たちのことを興味深そうに眺め、黙って紹介を聞いていたエルヴィスが口を開く。

「――危険なことに巻き込むことになるが、その覚悟はあるか?」
「娼婦たちの度胸を舐めないでいただきたいですわ」

 真っ直ぐに、ロクサーヌがエルヴィスを見つめた。

「ええ、あたしたち、いろんな客に買われているんですよ?」
「そうそう。命の危機なんて、いつどこであってもおかしくない世界ですし、ね」

 くすくすと鈴を転がすように笑う彼女たち。
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