【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 馬車から出てきた人物――エルヴィスが顔を上げて周りを見渡す。

 そして、アナベルに気付くと一瞬目を(みは)り、それから破顔した。

「ベル!」
「エルヴィス、陛下……」

 エルヴィスはアナベルに近付いた。ドクンドクンと鼓動は早鐘を奏でている。

「今はもう王ではない。ただの『エルヴィス』だ」

 彼は優しく笑うと、(ふところ)からブローチを取り出した。あの日、アナベルが置いていったブローチだ。

「――王位を降りた私では、ダメだろうか?」

 アナベルはふっと笑みを浮かべて、ゆっくりと首を左右に振る。

「そんなわけ、ないでしょう……!」

 ブローチを受け取り、涙を浮かべて震える言葉で伝えた。

 エルヴィスは「よかった」とつぶやいて彼女をぎゅっと抱きしめる。

「私もここで暮らしたいと思うのだが……」
「それは……良いのですか?」
「ああ、それに――きみに会いたいと、ここで暮らしたいという者たちも連れてきた」

 アナベルが「え?」とキョトンとした表情を浮かべると、宮殿でともに過ごしていた人たちが続々と現れた。みんな、アナベルを選んだのだ。
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