【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「――人口が増えるなぁ」

 クレマンが楽しそうに目元を細めて、言葉をつぶやく。

「本当に大丈夫なの? ここで暮らすなんて――……」
「ああ、ダヴィドからも、『さっさと行け』と言われたしな」

 肩をすくめて嗤うエルヴィスに、アナベルはふふっと笑い声を上げた。

「――まずは、アナベルのご家族に挨拶をしたいのだが」
「……こっちよ、ついてきて」

 村を復興するとき、焼け払われた人たちのために墓を作った。

 そこに案内すると、エルヴィスは大きく目を見開く。

「――墓、なのか?」
「ええ。クレマン座長たちが手伝ってくれたの。人口の少ない村だっただから、すぐに終わったわ。……それに、なんとなく、命を感じるものが良かったの」

 アナベルは墓石ではなく樹木を植えた。樹木は成長し、いつか美しい花を咲かせるだろう。

「……そうか」

 エルヴィスはその場に(ひざまず)き、目を伏せて祈りを捧げた。

「――アナベル」

 静かに彼女の名を紡ぐエルヴィスに、アナベルは「エルヴィス?」と首をかしげる。

「私とともに、生きてくれるか?」
「――ええ、もちろん。あたしの心は、あの日からあなたのものよ」

 立ち上がり、真っ直ぐにアナベルに向かい合うエルヴィス。アナベルは微笑みを浮かべてうなずいた。
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