俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
翔side
 九月も下旬に差しかかり、結婚を発表するパーティーが一ヶ月ほどに迫ってきた頃。
 晴臣から連絡があり、行きつけのバーで待ち合わせをした。
 俺の隣に座り同じものを頼むと「絆音は元気にしてるか?」と、やはりまず気になるのは最愛の妹の事のよう。
 「変わらず元気だよ」
 「俺、あれからずっと考えてたんだよ。美雨にも母さんにもこの一年の事詳しく聞いて...。絆音を傷つけた同期の女ってやつと頭のおかしいストーカー野郎には本気で殺意を覚えた」
 「...俺もだよ」
 「だけど、絆音が今こうして元気に笑って過ごせているのは、そこからあいつを救い出してくれたお前のおかげなんだとわかった。翔がストーカー事件の後かなり過保護に守ってくれた事も、事故のあと献身的に支えてくれた事も聞いた。俺が頼んだとはいえ、その責任感だけで出来る事じゃないと思ったよ」
 「じゃあ信じてくれたのか?俺達が本気で愛し合ってるってこと」
 「はぁー、信じたくはない!...でも、信じるよ。それに見ず知らずの男よりは翔の方が百倍ましだ。類でもちょっと頼りない所があるから心配だったしな」
 「類から聞いたのか?」
 「何を?昔から母さん達は類と絆音をくっつけたがってただろ?俺は反対だったけど。だからと言ってまさか翔と結婚するとは夢にも思ってなかったけどな。まぁ、よく考えたらお前が絆音にとってはベストなんじゃないかと思うよ、なんか悔しいけど」
 「ふっ、じゃあ認めるんだな?俺たちの結婚を」
 「...だから、認めたくないけど認めるよ。絆音のためだ。言っておくが、泣かせるような真似したら即刻離婚だからな!」
 「分かってるよ、これからもよろしくな?お義兄さん」
 「その呼び方絶対やめろ!」

 いつもの調子に戻った晴臣と久しぶりに二人で色んな話をして、一区切りした所で俺は最近気になっていた事を切り出した。
 「なぁ、お前に一つ確認したいんだけど。母方の祖父母には会った事はあるのか?」
 「...絆音から聞いたのか?」
 「いや、ご両親のお墓参りに行った時、絆音が昔住んでいた別荘の管理人に会いたいと言っていたから探してやりたくて。勝手に悪いとは思ったんだが、その過程で少し調べたんだ」
 「そうか。俺も会ったことはないけど、大人になってから母さんに少し事情は聞いたよ。ただ、その時絆音はまだ子供だったし話していないはずだ」
 「それは...絆音には隠しておきたいという事か?」
 「俺は話してもいいと思うけど、母さんはどう思ってるか分からないな」
 「もう一つ立ち入った事を聞くけど、絆音を養子にする事は考えなかったのか?」
 「ああ、事故の後絆音を引き取る事を決めた時から母さん達は養子縁組するつもりだったらしいよ。でも、しばらくその話を本人に出来る感じでもなかったし、子どもとはいえ同意なく勝手に進める訳にもいかなかった。たしか小学校に上がる頃だったと思うけど、本人にその話をしたんだ。そしたら、"風戸絆音"になるのは嫌って言ったんだよ」
 「...え?」
 「お母さんとお父さんと同じ名前が無くなるのは嫌だって、はっきりそう言ってた。だから母さん達もその意思を尊重して養子縁組はしなかったんだ。法律上の親子にならなくても絆音は家族だからって」
 「...そうか」
 「それより、来月のパーティーで婚約発表するんだろ?翔の立場的にもそれは仕方ないと思うけど、また絆音が狙われるような事にはならないよな?」
 「もちろん去年のような事にはならないよう厳重警戒するつもりだ。それに、今年は秘書としてじゃなく俺の妻として出席してもらう。だから俺のそばから離れる事はないよ」
 「妻って...お前らそこまでに籍入れるのか?」
 「そのつもりだよ。パーティーで発表するのは婚約じゃなく結婚だ」
 「はぁー、マジかよ。あの小さかった絆音がもうすぐ人妻になるのか...?じゃあ結婚したら秘書は辞めさせるってことか?」
 「いや、今回のパーティーではって話だ。多分絆音はこのまま仕事を続けるつもりだろうし、俺も仕事中も近くにいてくれた方が助かる」
 「...お前もなかなかの過保護だよな。独占欲が半端じゃないというか...」
 「どの口が言ってるんだ?晴臣には負けるよ」
 「まぁ、その方が俺も安心だけど。今は家で一人なのか?」
 「ああ、でも多分類とゲームしてるよ」
 「じゃあそろそろ帰るか、あんまり絆音を一人にさせておきたくないし」
 そう言って席を立つ晴臣に続いて店を出ると「絆音に何かあればすぐに連絡しろよ?」と最後まで念を押されてからタクシーに乗りマンションへ帰ってきた。

 時刻は二十二時半。きっとゲームをしているだろうと思ったが、リビングへ行く途中で風呂場に明かりがついているのが見えた。
 顔が見られなくて少し残念な気持ちで、ドアの外から「ただいま」と声をかければ「あ、お帰りなさい!今出ますね」と言われてある事を思いついた。
 「ゆっくり入ってていいよ、俺も入るから」
 「...え?今出ますから!ちょっとだけ待ってください!」
 「一緒に入れば良いだけだろ?」そう言いながら服を脱ぎドアを開けると「ひゃっ!」と軽く悲鳴を上げながら慌てて湯船に入り背を向ける。
 「待ってって言ったのに!」
 「ゆっくり入ってていいって言っただろ?」
 シャワーを浴び始めた俺を赤い顔でチラッとみて、すぐにまた後ろを向く。
 「ふっ、もう裸なんて何回か見てるだろ?」
 「こ、こんな明るい所でなんて見れませんし見せられません!」
 そんな話をしながら湯船に入ると慌てて端っこに逃げようとする絆音を捕まえて、後ろから抱きしめながらお湯に浸かった。
< 104 / 132 >

この作品をシェア

pagetop