俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
 今日は日曜日だけれど、荷物を置くと彼は仕事に行くようなので、つけたばかりの暖房をけして私も一緒に連れて行ってもらった。
 「なにも今日から仕事しなくてもいいんだぞ?せめて月曜日の明日からで...」
 「いえ、ご迷惑をおかけしたので少しでも力になりたいんです」
 「気にするなって言っても...絆音には無理そうだな。気持ちは分かったけど程々にな?」
 会社に着くと、社長も山内さんもいらっしゃったので二人にもご迷惑をおかけしたことを謝罪した。
 「元気そうで安心したよ。今回の事は絆音ちゃんは何も悪くない、むしろ会社として守ってあげられなくて申し訳なかった」
 「いえ、ご迷惑おかけしてすみませんでした。また翔さんの妻として副社長の秘書として、よろしくお願い致します」
 「正直、雪原さんがいないと秘書課は手が足りないのが現状で...」
 「山内さんにも秘書課の皆さんにも、忙しい時期にご迷惑おかけしました。その分も頑張りますので、またよろしくお願いします」
 
 そして翌日、改めて挨拶をさせてもらったあと、翔さんから藍田さんが心配して下さっていたと聞き受付へと降りた。
 「あ!雪原さん!戻られたんですね、本当に良かったです!」
 「ご心配おかけしてすみませんでした」
 「いえ、雪原さんが無事で何よりです!昨日発売のあの女性誌も見ましたよ!やっぱり副社長はさすがですねー。SNSでも愛妻家ってたちまち話題になっていましたし!それに雪原さんも、まさか一条財閥総帥のお孫さんだったなんて!でもなんか納得です、いつも品があってお嬢様って言葉がしっくりきます!」
 私はもうSNSは見ないと決めたのだけど藍田さんによると、あの女性誌のインタビューで翔さんの溺愛ぶりが話題になり、愛妻家だとさらに彼の人気に拍車をかけることになったのだそう。
 そして、私には両親の事もあり同情の声も多いそうだけれど、"総帥の孫娘"というパワーワードがSNSを少しざわつかせたらしい...。
 とにかく、今回の騒動は翔さんの思惑通りになり、会社のイメージダウンは避けられ彼の好感度も上がるという結果になったので私もホッと息をついた。

 そしてその後、私は今まで以上にハイペースで仕事をこなし残業も長くなっていた。
 忙しいけれど、やっぱり近くで彼の為に仕事を出来る事が嬉しくて全く苦ではない。それに最近の翔さんは、会食という名の忘年会に挨拶のため顔を出さなければいけない事が多く、毎日のように帰りも遅いのでバレていないと思っていたのだけど...。
 二十三時頃に帰宅し玄関のドアを開けると、そこには腕を組み仁王立ちの翔さんの姿があった。
 「あ...。お、お帰りだったんですね、お疲れ様でした」
 鋭い視線と目に見えそうな程の怒りオーラに怯みそうになりながらも笑顔でそう言うと、彼の眉間にグッと皺が寄る。
 「今、何時だと思ってる?」
 「えっと...二十三時すぎ、です」
 「なんで会食に行った俺よりも帰りが遅いんだよ⁈」
 「それは...区切りの良い所まで仕事をしようと思っていたら、こんな時間になっていて...」
 「全く...お前は程々という言葉を知らないのか⁈忙しいのは分かるが、どう考えても残業が長すぎだ!」
 「...すみません。また副社長の為に仕事が出来ることが嬉しくて、つい...。明日からは気をつけますので...」
 そう言うと「うっ...」と言葉に詰まったように少し顔を顰めると、私から離れて「はぁー」とため息をつく。
 さらに怒らせてしまったかとチラッと顔を伺うと、それに気づいた彼はふっと表情を緩める。
 「とにかく風呂入って早くベッド行くぞ」
 怒りオーラが消えたようで安心していると、彼はそう言いながら私の手を引いてお風呂場へと進んでいく。
 そして当たり前のように一緒に入ろうとする翔さんに、到底拒否できる雰囲気ではなかった...。

 例年、師走の忙しさはクリスマス頃がピークになる。
 恋人もいた事がない私はそもそも無縁な行事だったため、毎年残業をして帰りに小さなケーキを買って帰るのが恒例だった。
 今年はどうするのかな...?翔さんは会食の予定は無いようだけれど。
 そう思っている間に当日が来てしまい、今年のクリスマスも私は少し残業をしないと仕事が終わりそうにない。
 翔さんもきっとそうだろうと思い、残って仕事をしていると一時間ほどして彼から内線が入った。
 「絆音、終わったか?そろそろ帰るぞ」
 「はい。もう終わりますので、車まで行きますね」
 片付けて駐車場へ向かい車に乗り込むと「さっき頼んでおいたから、レストランでテイクアウトして帰ろう」と言う翔さん。
 「...ありがとうございます」
 「悪いな、クリスマスだけど仕事が読めなかったから何も用意できてないんだ」
 彼もすごく忙しかったし、クリスマスなんて意識していないのだと思っていたけれど、ちゃんと考えてくれていたんだ...。
 それだけでも嬉しかったし、何も用意していないと言いながらレストランにお料理を頼んでくれているのが翔さんらしい優しさだ。
 それに、彼が寄ったレストランは普段テイクアウトなどはしていないお店。私たちの為に特別に用意して頂いたのが分かるお料理ばかりだった。
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