俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
 そんな日々を過ごしていると、時間に追われず静かに仕事が出来る就業後が一番落ち着くことに気がつき、残業が多くなっていた。
 今日もバタバタと一日を終え、静かな秘書室で一人資料集めをしていると内線が入り副社長に呼ばれた。
 「何かお手伝いする事ありましたか?あ、コーヒーですか?」
 「いや、手伝いもコーヒーもいらない。お前今何やってた?」
 「えっと...次回の会議で必要になりそうな資料を集めていました」
 「次の会議って...まだ先だろう?山内も言っていたが最近残業し過ぎだ。明日の用意が出来ているなら十分だから今日はもう帰れ」
 「...はい、後三十分ほどで帰ります」
 「こら、今すぐに帰れ。お前最近妙に張り詰めてるよな?今はそこまで忙しくはないはずなのに、仕事も先の先の先まで手をつけている。何かあるのか?」
 「いえ...特に何かあるという訳では...」
 「そんな曖昧な返答で逃げられると思ったか?明らかに最近様子がおかしいだろう?ほら、ちゃんと理由を言え」
 そう言いながら立ち上がり私の前まできて、長身を屈めて顔を覗き込まれる。
 理由は...信頼を失いたくないから。仕事も出来ないやつだと見放されたくないから。人として尊敬する彼のそばで秘書として仕事をしていたいから。
 でも、そんな事本人にはとても...

 沈黙が落ち、目を逸らしたまま黙っている私に副社長は「何考えてる?どんな事でもいいから言ってみろ」と落ち着いた声で諭す。
 どんなに探してもこの場を収められるような適当な言い訳が見つからず、結局諦めてボソボソと理由を話し恐る恐る視線をあげた。
 すると、彼は驚いたような顔でフリーズしている。そして数秒見つめ合った後、フッと柔らかい顔で微笑む。
 「バカだな、お前は。とにかく今日はもう遅い、家まで送ってく」
 「...へ?一人で帰れます」
 「いいから。上司命令だ、今すぐ片付けて駐車場で待ってろ」
 「...分かり、ました」
 どうして家まで送ってくれるのか、なぜバカだと言いながらあんなに優しい顔をしたのか...。
 いくつも疑問を抱えながらも、上司命令と言われてしまえばそれ以上何も言えず素直に従う事にした。
 カバンを持ち駐車場のある地下まで降りると、すぐに彼も降りてきてドアを開けて下さる。滑らかに走り出した車は、迷いなく私のマンションへと向かっているよう。
 「あの...マンションの場所、分かりますか?」
 「分かるよ、晴臣に教えられたから」
 「...え?」
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