俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
とんでもない噂が広まっている事に呆然としていた私は、背中を押され副社長室へと戻ってきた。
ソファに座らされると、彼はどこからかウェットティッシュを取り出し先ほど専務に掴まれた手と一瞬だけ触れられた頬をゴシゴシと擦る。
「ふ、副社長...?」
「他にどこか触られたか?」
「い、いえ。あの、メイク落ちちゃいます!」
「ああ、悪い。でもセクハラおやじに触られた感触が残っているよりいいだろ?」
そう言って再び頬を拭われ、微かにアルコールの香りが鼻を掠めた。
消毒してくれているつもりなのかな...そう思うと、副社長の優しさが嬉しくなった。
「ふふっ、ありがとうございます」
「とにかく専務の件は俺に任せろ、ちゃんと社長に処分してもらうから。にしても、どこからあんな噂が流れたんだ?俺の車に乗った所を見ただけならともかく、後をつけられていたのか?」
「そ、そうですね...」
「しかも俺を陥れるためならともかく、何故雪原なんだ?お前の評価を下げて得するやつなんかいるか?」
「思い当たる事はありません...」
「それにしても、噂を流したやつはお前がどれだけ社長に気に入られているかを知らないようだな。父さんがこんな噂を信じるはずがないのに。とにかく、そのうち消えるだろうが今回みたいに何かあればすぐに俺に言えよ?」
「はい、副社長にもご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「お前のせいじゃないだろう?こんなくだらない噂は放っておけばいい。お前はいつも通り堂々と俺の秘書をしていればいいんだよ」
その後、噂は人から人へと伝わるたびに形を変えていき、"私が副社長をたぶらかしている"というものだったはずが、いつの間にか"副社長と私は幼馴染で許婚同士だった"というものになっていた。
最近はその事で人目が気になりあまり外には出ていなかったけれど、今日は瀬那ちゃんに誘われ久しぶりにカフェにランチをしに出てきた。
「やっと専務の辞任が決まって落ち着いてきたよ。絆音の事もあり得ないけど、その前から接待交際費とか出張費とかちょっとずつ誤魔化してたみたいだし、辞めてくれる事になって本当よかったー」
「お疲れ様、色々大変だったみたいだね」
「でも専務とお別れできると思うと清々する。あの人、私にもいやらしい目してたし接待の時もホステスみたいな事させられてたし。この際だから全部ぶちまけてやったわ」
私もつい先日副社長から聞き驚いた。専務には以前から経費の水増し疑惑があり、副社長と山内さんは内密に調べ証拠を掴んでいたそう。
そんな中であの騒動があり、事実を認め自ら辞任するという事になったらしい。
「絆音も大変だよねー、次々と色んな噂話が広まっちゃって。今じゃ副社長と許婚だったなんて言われてるけど嘘だよね?」
「うん、そんな関係じゃないよ」
「ホテルまで副社長の車で行った話は?あれも全部嘘?」
「あれは私があの日ホテルのレストランで食事をする約束があって、副社長もちょうど帰る所だったからって送ってくれただけなの」
「ふーん?ホテルのレストランで食事なんて、彼氏でも出来たの?」
「ち、違うよ。相手は副社長の弟で、彼とも小さい頃からの友人で...」
「へぇ、弟さんだったんだ。だから副社長もわざわざ送ったってことね。でも、二人が何も言わないから噂話がどんどん広がってるんじゃない?」
「副社長はそのうち消えるから放っておけって」
「まぁそれでも副社長の人気が落ちる事はなさそうだしね。しかも、他の幹部達からも評判悪かった専務を追い出してくれたんだから、むしろ評価は上がったのかも」
そんな話をしながらうどんを食べ終え、二人で会社に戻ると秘書室の前に社長が立っていた。
「二人ともお疲れ様。雪原さん、ちょっといい?」と着いてきてという仕草をされるので後に続けば、向かった先は副社長室だった。
社長の後に私も入室すると、副社長は眉間に皺を寄せ怪訝な顔をしている。
「何ですか?雪原まで連れてきて」
「いや、ちょっと絆音ちゃんと話したかっただけでお前はどうでもいいんだ」
「...じゃあ自分の部屋でやって下さい」
副社長の言葉を聞き流してソファに座った社長は、私にも座るように促す。
「絆音ちゃん、最近はどうだい?嫌がらせとかされてないかい?」
「い、いえ大丈夫です」
「本当だね?何かあったらすぐに相談するんだよ?翔じゃ頼りなかったら、私でもいいし山内も信頼できるだろう?」
「誰が頼りないんですか」
「この間みたいな事がないように、私からも幹部達には釘を刺しておいたから。それから、女性同士だと陰湿な嫌がらせもあると聞くがそういう事もないかい?」
「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」
副社長の言葉を聞き流して話を続ける社長だったけれど「社長、雪原の事は大丈夫ですから。山内が探してますよ」そう言われ渋々という感じで腰をあげた。
「じゃあ絆音ちゃん、本当に何かあればすぐに言うんだよ?」と最後まで心配してくださり、念を押しながら出て行かれた。
「はぁ、やっと帰ったか。...雪原、何かあればまず俺に言うよな?社長でも山内でもなく直属の上司である俺にまず言うよなぁ?」となぜか怖い顔で睨んでいる副社長の迫力に押され「も、もちろんです!失礼します...」と言葉を返しながら後退りさっと部屋を出てきた。
...なんであんなに怖い顔をされていたんだろう?それに、私の直属の上司は山内さんなのでは...?
それにしても、社長にまで心配をおかけして申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
早く変な噂話も収まってくれるといいんだけど...
ソファに座らされると、彼はどこからかウェットティッシュを取り出し先ほど専務に掴まれた手と一瞬だけ触れられた頬をゴシゴシと擦る。
「ふ、副社長...?」
「他にどこか触られたか?」
「い、いえ。あの、メイク落ちちゃいます!」
「ああ、悪い。でもセクハラおやじに触られた感触が残っているよりいいだろ?」
そう言って再び頬を拭われ、微かにアルコールの香りが鼻を掠めた。
消毒してくれているつもりなのかな...そう思うと、副社長の優しさが嬉しくなった。
「ふふっ、ありがとうございます」
「とにかく専務の件は俺に任せろ、ちゃんと社長に処分してもらうから。にしても、どこからあんな噂が流れたんだ?俺の車に乗った所を見ただけならともかく、後をつけられていたのか?」
「そ、そうですね...」
「しかも俺を陥れるためならともかく、何故雪原なんだ?お前の評価を下げて得するやつなんかいるか?」
「思い当たる事はありません...」
「それにしても、噂を流したやつはお前がどれだけ社長に気に入られているかを知らないようだな。父さんがこんな噂を信じるはずがないのに。とにかく、そのうち消えるだろうが今回みたいに何かあればすぐに俺に言えよ?」
「はい、副社長にもご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「お前のせいじゃないだろう?こんなくだらない噂は放っておけばいい。お前はいつも通り堂々と俺の秘書をしていればいいんだよ」
その後、噂は人から人へと伝わるたびに形を変えていき、"私が副社長をたぶらかしている"というものだったはずが、いつの間にか"副社長と私は幼馴染で許婚同士だった"というものになっていた。
最近はその事で人目が気になりあまり外には出ていなかったけれど、今日は瀬那ちゃんに誘われ久しぶりにカフェにランチをしに出てきた。
「やっと専務の辞任が決まって落ち着いてきたよ。絆音の事もあり得ないけど、その前から接待交際費とか出張費とかちょっとずつ誤魔化してたみたいだし、辞めてくれる事になって本当よかったー」
「お疲れ様、色々大変だったみたいだね」
「でも専務とお別れできると思うと清々する。あの人、私にもいやらしい目してたし接待の時もホステスみたいな事させられてたし。この際だから全部ぶちまけてやったわ」
私もつい先日副社長から聞き驚いた。専務には以前から経費の水増し疑惑があり、副社長と山内さんは内密に調べ証拠を掴んでいたそう。
そんな中であの騒動があり、事実を認め自ら辞任するという事になったらしい。
「絆音も大変だよねー、次々と色んな噂話が広まっちゃって。今じゃ副社長と許婚だったなんて言われてるけど嘘だよね?」
「うん、そんな関係じゃないよ」
「ホテルまで副社長の車で行った話は?あれも全部嘘?」
「あれは私があの日ホテルのレストランで食事をする約束があって、副社長もちょうど帰る所だったからって送ってくれただけなの」
「ふーん?ホテルのレストランで食事なんて、彼氏でも出来たの?」
「ち、違うよ。相手は副社長の弟で、彼とも小さい頃からの友人で...」
「へぇ、弟さんだったんだ。だから副社長もわざわざ送ったってことね。でも、二人が何も言わないから噂話がどんどん広がってるんじゃない?」
「副社長はそのうち消えるから放っておけって」
「まぁそれでも副社長の人気が落ちる事はなさそうだしね。しかも、他の幹部達からも評判悪かった専務を追い出してくれたんだから、むしろ評価は上がったのかも」
そんな話をしながらうどんを食べ終え、二人で会社に戻ると秘書室の前に社長が立っていた。
「二人ともお疲れ様。雪原さん、ちょっといい?」と着いてきてという仕草をされるので後に続けば、向かった先は副社長室だった。
社長の後に私も入室すると、副社長は眉間に皺を寄せ怪訝な顔をしている。
「何ですか?雪原まで連れてきて」
「いや、ちょっと絆音ちゃんと話したかっただけでお前はどうでもいいんだ」
「...じゃあ自分の部屋でやって下さい」
副社長の言葉を聞き流してソファに座った社長は、私にも座るように促す。
「絆音ちゃん、最近はどうだい?嫌がらせとかされてないかい?」
「い、いえ大丈夫です」
「本当だね?何かあったらすぐに相談するんだよ?翔じゃ頼りなかったら、私でもいいし山内も信頼できるだろう?」
「誰が頼りないんですか」
「この間みたいな事がないように、私からも幹部達には釘を刺しておいたから。それから、女性同士だと陰湿な嫌がらせもあると聞くがそういう事もないかい?」
「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」
副社長の言葉を聞き流して話を続ける社長だったけれど「社長、雪原の事は大丈夫ですから。山内が探してますよ」そう言われ渋々という感じで腰をあげた。
「じゃあ絆音ちゃん、本当に何かあればすぐに言うんだよ?」と最後まで心配してくださり、念を押しながら出て行かれた。
「はぁ、やっと帰ったか。...雪原、何かあればまず俺に言うよな?社長でも山内でもなく直属の上司である俺にまず言うよなぁ?」となぜか怖い顔で睨んでいる副社長の迫力に押され「も、もちろんです!失礼します...」と言葉を返しながら後退りさっと部屋を出てきた。
...なんであんなに怖い顔をされていたんだろう?それに、私の直属の上司は山内さんなのでは...?
それにしても、社長にまで心配をおかけして申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
早く変な噂話も収まってくれるといいんだけど...