俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
 リビングやキッチン、そしてこのマンションにはカフェやレストラン、ジムやプールにシアタールームまであるそうで一通りの説明が終わった頃、部屋のインターホンが鳴った。
 不意に大きな音がした事に驚きビクッと肩を揺らすと「大丈夫、出前だよ」と私の頭をポンとしてから玄関の方へ向かう。
 戻ってきた副社長の手には、出前とは思えないお皿に盛り付けられたサラダやパスタなどの料理。
 「この下にあるレストラン、頼めば部屋まで届けてくれるんだ。腹減っただろ?」
 「あ、ありがとうございます」
 副社長のグラスにワインを注ぐと「絆音、今は仕事じゃない。気を遣わなくていいから、ほら」と空になっていた私のグラスにも注いで下さる。
 「ワイン好きなんだろう?類が言ってた。...なぁ、思い出したくないだろうけど、いつからだったんだ?あの男にチョコレートを置かれるようになったのは」
 「えっと...類くんが遊びに来た日なので七月の下旬です」
 「類が?」
 「はい、夕方類くんが来た時に玄関のドアにかかっていたそうなんです。その時は誰かが間違えたのかと思っていて...。類くんも食べない方がいいと言っていたんですけど、すぐ捨てる事も出来ずに玄関に置いたままにしていて...」
 「その後は?」
 「週に一度くらいのペースでかけられていました。さすがに変だとは思っていたのですが、何かされた訳でもないので警察にも相談せずそのままに...。ここ三週間くらいはなかったので、ようやく間違いに気がついたのかと...」
 「警察に行くのを躊躇う気持ちは分からなくはないが...。誰かに相談するくらい出来たんじゃないか?」
 「...はい、相談していたらこんなにご迷惑をかけることにはならなかったのかもしれません...」
 「...晴臣じゃなきゃダメか?」
 「...え?」
 「俺じゃダメだったのか?」
 「...いえ、そんな事は。でも...」
 「迷惑かけると思った?」
 「...はい。私も大人なので自分でなんとかしないとと思って...」
 「なぁ、絆音。逆だったらどうだ?もし俺が困っていて、帰る場所が無かったらどうする?」
 「もちろん、私の家で良ければ泊まって頂きます」
 「それは迷惑か?」
 「いえ、そんな事...絶対に思いません」
 「俺だって同じだ。迷惑をかけたくない気持ちも分かるが、困っている時に助けを求めるのは悪い事じゃない。お前はもっと人に頼る事を覚えた方がいい、一人で全てを背負う必要なんてないんだ」
 副社長の優しい言葉と笑顔に、思わず気が緩み涙腺まで緩みそうになってしまった。自分でも気が付かないうちに、ずっとどこか張り詰めていたのかもしれない。
 「ほら、疲れただろう?今日はもう寝ろ」
 今度は慰めるように頭をポンポンと優しく撫でてくれた。

 ベッドに入り目を閉じると、なぜか昔の記憶が頭に浮かぶ。
 そういえば、私が転んだ時や四葉のクローバーを無くした時、晴くんに叱られて落ち込んでいた時、彼は慰めるように頭を撫でてくれていた。
 そして、その笑顔と手の温もりを感じると何故かもう大丈夫だといつも思った。
 昔から彼の優しさに助けられていたんだな...私。
 大人になってからは忘れていた優しいお兄ちゃんという彼のイメージを、昔の記憶と共にはっきりと思い出していた。
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