俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
 高校二年の時、人手が足りないからと頼まれ一時期だけバスケ部のマネージャーをしていた。
 次第に選手を支える仕事が楽しくなり大学まで続けると、顧問の先生や友人からも「将来秘書になるといいよ」と言われた事がきっかけで資格を取っていた。
 そして、両親はアメリカとフランスに住んでいた経験があり語学が堪能だったそうで、私も物心がついた頃には自然と理解できるようになっていた。
 その語学のおかげもあり、業界最大手のDメディックスに就職できたものの...私の言動一つで副社長に多大なご迷惑をかけてしまう可能性があるこの仕事は、とてもプレッシャーに感じる...。

 先ほど終わった会議室の片付けを済ませて上階へと戻り、副社長室の前で待っていると和やかな雰囲気の二人が出てきた。
 お見送りの為エレベーターに一緒に乗り込むと、副社長の姿が見えなくなった途端に彼は私に名刺を差し出す。
 「絆音さん、君とはもっとゆっくり話がしたい。良かったら食事でも行かないか?」
 「あの、えっと...」
 どうお断りしようかと言葉を選んでいる私に彼は一歩近づく。
 入り口のボタン前にいる私は逃げ場がなく、手首を掴まれ掌に名刺を握らされた。
 「これはプライベートなお誘いだから、仕事上のあれこれは気にしなくていい。連絡待っているよ」
 そう目の前でニヤッと笑う様子に思わず背筋がヒヤッとしたけれど、エレベーターの到着音が聞こえ我に返り、なんとか微笑んで玄関まで見送った。

 彼の姿が見えなくなりホッと息を吐くと、受付の藍田さんと目が合う。
 「雪原さん大丈夫ですか?あの人、目つきがいやらしかったですけど」
 「そ、そうですか?特に何も...」そう言いながら歩き出した時、力が緩んだ掌から名刺が落ちてしまい、それを拾った彼女は途端に顔を顰める。
 「うわ、ハートマークついてますよ?」
 受け取った名刺の裏面には、プライベート用と思われるスマホの番号と"連絡まってるよ♡"の文字...。
 実は同じ様な事はたまにあり、受付の彼女に助けてもらうこともあるので、今回も心配してくれているようで申し訳ない。
 触れられた感触を消すように、手首を撫でながら副社長室へと戻った。
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