俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
翔side
 日も暮れ始め窓からの夕陽が眩しく感じるようになった頃、着信があった。それは山内からで、その口ぶりは重く良い話ではないことはすぐに察しがついた。
 「結論から申し上げてよろしいですか?」
 そう前置きをしてから始まった山内の話は、とてもじゃないが絆音には聞かせられない内容だった。
 「...まさかとは思っていたが、事故じゃなかったんだな...」
 「これは傷害事件です。今後の会社としての対応も含め、これから社長とも話をするところです」
 こんな残酷な事実は知ってほしくない。絆音がこれ以上傷つくところなんて見たくない。
 ただでさえ、目が覚めたら全身の痛みや病院にいるストレスに耐えなければいけなくなるのに。さらに心にまで深い傷を負うことになるなんて...。
 身勝手な思い込みで、こんなにも絆音を傷つけたあいつを俺は許せない。
 だが、俺のせいだな...。それに、少し前からあいつの言動には疑念を抱いていた。もっと早く何か対応していれば、こんな事になる前に止められていたかもしれない...
 病室に戻り、思わず絆音の手をそっと握った。
 守ってやれなくて、本当にごめん... ダメな上司で、ごめんな...
 しばらくそのままでいたが、絆音が手を握り返してくれる事はなかった。

 気づけば外は暗く陽が沈んでいて、カーテンを閉めているとドアがノックされ入ってきたのは白衣姿の柊哉だった。
 「彼女の様子はどう?」
 「...まだ、目が覚めないんだ」
 「そうか。ずっとここにいたのか?」
 「一度着替えを取りに戻ったよ」
 「絆音ちゃんって...翔の恋人なのか?」
 「...いや、訳あって数ヶ月一緒に暮らしていたんだ。俺のマンションで」
 「そうだったのか。晴臣には連絡したのか?」
 「...あいつは今アメリカにいる。だから日本にいない間、絆音の事を守ってくれって頼まれていたんだ。なのに、守るどころかこんな事になって...」
 「翔のせいじゃないだろ?どんなに気をつけたって避けられない事故もある。晴臣だって、それくらい分かっているよ」
 「...事故じゃなかったんだ。突き落とされたんだよ、悪意を持って故意に。そしてその原因は...俺なんだ」
 「...どういう事?」
 「突き落としたやつは...どうにか俺に近づきたかったらしい。だから絆音が俺の秘書になって近くで働いている事も、俺に可愛がられている事も、俺と幼馴染だという事にも全部嫉妬して気に入らなかったそうだ」
 「なんだよ、それ...」
 「絆音を陥れるような噂を流したが彼女の評価が落ちることもなく、むしろ俺が庇う形になった。その上同居している事を知って腹を立て、パーティーで彼女が躓いた時に俺が抱き止めたのを見て我慢の限界に達し、嘘の集合時間を伝えて急がせ焦った為の転倒事故に見せかけた」
 「...酷すぎるな。下手したら怪我だけでは済まなかったかもしれないのに」
 「...しかも、それをやったのは彼女と同期で友人だと言っていた人物なんだ...」
 「...友人?」
 犯人は、水川瀬那だった。
 ホテル側の協力もあり防犯ビデオを確認させてもらったところ、階段は映っていなかったがそこから慌てて走り去る水川の姿が映っていたらしい。
 今日も平然と出勤していた水川を呼び出し問い詰めると、初めは否定していたが防犯ビデオの映像を見せた途端に開き直った様子で色々と話し出したそう。
 絆音の事がずっと羨ましくて、それが徐々に嫉妬や憎悪に変わっていったと。
 彼女が遊び人だと噂を流し専務にも嘘を吹き込み絆音を襲わせようとした事、それを利用して嫌いだった専務を辞めさせようとした事、怪我でもして働けなくなれば俺の秘書を外されると思い階段の上で背中を押した事も認めたという。
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