俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
大気の状態は非常に不安定です
 瞼に明るさを感じ目が覚めると、副社長がベッドサイドに座ったまま眠っていた。
 もしかして、一晩中ここに...?
 さっき目が覚めた時、彼はどこか痛そうなほど切ない表情で必死に私の名前を呼んでくれていて驚いた。
 その後とても優しい顔で言っていた言葉は、まだ頭がぼんやりしていて聞き取れなかったけれど...。
 それにしても、階段から落ちたなんて...私はどこまでバカなんだろう...。
 少し動いただけでも身体中が痛くて自力で起き上がる事も出来そうにない。
 副社長やみんなに心配をかけて、仕事も休んで迷惑を...その上しばらく入院なんて...
 そう考えると思わず身体に力が入り、繋いだままの副社長の手をぎゅっと握ってしまった。
 すると、それに反応してゆっくりと身体を起こした彼は、ハッと目を見開き慌てた様子で顔を近づけ私の頬を撫でる。
 「絆音...起きていたんだな。よかった...」
 「あの、すみません。ご心配おかけしたようで...」
 「お前が謝ることじゃない、そんなこと気にしなくていいから」
 また優しい顔で頭を撫でてくれたあと、ふと窓の方を見て「もう朝か...。電話してくるから、ちょっと待ってて」そう言って病室を出て行った。

 しばらくすると伯父さん伯母さんも来てくれて、二人とも目を潤ませ震えた声で「よかった、絆音ちゃん...」と手を握ってくれる。
 だけどその顔には疲れが滲んでいて、二人にもたくさん心配をかけてしまったのだと気づいた。
 「二人とも、ごめんなさい...」
 「謝らなくていいのよ、絆音ちゃんは何も悪くないんだから。今は身体を治すことだけ考えましょう?」
 「翔くん、ありがとう。ずっと絆音ちゃんについていてくれて。今日は夜まで朝香がついていられるから、君は少し休んだ方がいい」
 伯父さんがそう言うと、副社長はカバンを持って「じゃあまた来るから。必要な物があれば連絡して」と頭をポンとしてから出て行ってしまった。
 「翔くん、ずっとそばにいてくれたのよ?目が覚めるまでここに居させて下さいって。会社にも行かないで、絆音ちゃんが目を覚ますのをずっと待っていてくれたの」
 「...え?そう、だったの...?」
 「そうよ、本当に心配してくれていたの。私には、とてもただの上司と部下の関係には見えなかったわよ?ふふっ」
 副社長...ずっといてくれたんだ...
 それに会社にも行っていないなんて...。きっと忙しかったはずなのに。
 でも、目が覚めた時彼が居てくれた事がすごく心強かったし嬉しかった。ちゃんとお礼を伝えないと...。

 その次の日から、少しずつ身体を起こせるようになりシャワーも浴びることが出来た。
 そして副社長は忙しいはずなのに、毎朝連絡をくれ仕事が終わると病室にきてくれている。
 ここは会社から少し離れているし、申し訳ないと伝えたけれど「迷惑か?」と悲しそうな顔で言われてしまう。
 「いえ、そういう訳では...」
 「じゃあ気にしないでくれ、俺が絆音の顔を見たいだけだから」
 そう言いながらベッドサイドに座り、私の手をとって薄くなってきた腕の痣を撫でる。
 ...なぜか最近の副社長は、とても優しい顔で微笑んだり少し寂しそうな顔をしたり、毎日手や頬にそっと触れたり頭を撫でてくれたり...
 スキンシップも多くなったし、私を見つめる瞳は怪我をする以前の鋭さを含んだものとはまるで違う...。
 慰めてくれているの...?でもこの怪我も私の不注意だから、普段の副社長なら「気をつけろって言ったよな⁈心配したんだぞ馬鹿!」なんて言いそうなものだけど...
 そんなことを考えながらじっと副社長を見ていると「ん?どうした?」とまた優しく微笑む。
 「あ...いえ、何でもないです...」
 なんだかその笑顔にドキッとしてしまいどこを見て良いか分からず、先ほどからザーザーと音を立てながら雨が降っている窓の方へ目を向ける。
 「雨、気になって眠れないか?」
 「いえ、大丈夫です。それより、もっと雨風がひどくなるみたいですしその前に帰られた方が...」
 「絆音が眠るまで帰らない」
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