俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
翔side
 あれは先日、類が絆音の病室に見舞いに来た時のこと。
 俺は廊下に出てコーヒーを飲んでいると、病室から出てきた類は足取りが重く明らかに落ち込んでいる。
 「兄さん...。やっぱり、兄さんには敵わないみたいだ。俺には絆音ちゃんを守ることが出来ないってことだね...」
 そう言ってトボトボと歩いて行く後ろ姿を見送ってから病室に戻ると、なぜか類と同じくらい落ち込んでいる様子の絆音。
 振った方まで相手の気持ちを考えて落ち込むとは...本当にお人よしだな。

 そして絆音が眠ったのを確認してから実家に帰ると、母さんが駆け寄ってきた。
 「翔、待ってたのよ!さっき類が突然帰ってきたと思ったらなんか落ち込んでるみたいで、ワインボトルもって部屋に篭っちゃったのよ。ちょっと様子見てきてほしいの」
 「...はぁ。心配しなくても大丈夫だよ、ただのやけ酒だろうから」
 「あら、理由知ってるの?私にも教えなさいよ!」
 「とりあえず様子見てくるから。母さんたちはもう寝てていいよ」
 なぜ俺が二人とも宥めないといけないんだよ...そう思いながら類の部屋をノックすると勢いよくドアが開いた。
 「兄さんが帰ってくるの待ってたんだから!」と、もうすでにかなり酔っている様子の類に腕を引かれベッドに座らされる。
 「お前な...もうやめとけよ。明日も仕事あるんだろ?」
 「兄さんには関係ないでしょ!どうせ俺なんてどんなに頑張ったって兄さんを越えられないし、大切な人も守れないダメなやつだよ」
 すっかり拗ねてやっかいなモードに入っている類にため息しかでない。
 「兄さんはいつから絆音ちゃんが好きだったの⁈俺が本気でアプローチするって言った時、なんで何も言わなかったの⁈いつから絆音ちゃんはあんな可愛い顔で兄さんを見るようになったの⁉︎」
 「落ち着けって。...あの時は本当にそんな気はなかったよ。事故の後に気づいたっていうか...」
 「ふぅーん?まぁ、どのみち俺には勝ち目はなかったみたいだけど。まさか絆音ちゃんが兄さんを好きになってるなんて、考えてもいなかったよ...」
 「いや、絆音が俺を好きだなんて一言も言ってないだろ?」
 「言ってないけど俺には顔を見たら分かるの!小さい頃からずーっと見てきたんだから!病室に入った時、明らかに俺に見せてくれる顔とは違ったもん...。あっ!もしかしてもう絆音ちゃんに手出したの⁈」
 「出してるわけないだろ?俺がプロポーズしたのは入院してからだぞ?」
 「プロポーズ⁈ ...はぁ、いきなりプロポーズなんて...やっぱり敵わないな...。それで?絆音ちゃんはOKしたの?」
 「...いや、まだ何とも」
 「え?なんだ、てっきり二人はもうそういう関係なのかと思ってたよ、一緒に住んでたし。そういえば、絆音ちゃんのファーストキス奪ったのも兄さんだもんね。やっぱり初めから俺には勝機もなかったって事か...」
 「...よくそんな事覚えてるな」
 「だって俺見てたもん!晴くん家の庭で遊んでた時、二人がチューってするの」
 「事故だよ、あれは。ただの接触事故だ」
 「はぁー落ち込むなぁ。俺なんて押し倒しても表情一つ変えてくれなかったのに、兄さんとは話してるだけであんなに可愛い顔するんだもん」
 「は?押し倒した⁈」
 「俺のこと全く男として見てくれないから実力行使に出てみたけど、全然効果はなかったよ」
 「お前な...」
 「それに、俺は顔出ししてるから少なからず変なファンの人もいるし、もしかしたらまた危険な目に合わせてたかも...。だからやっぱり絆音ちゃんを守れるのは俺じゃなくて兄さんなんだよ。悔しいけど俺は絆音ちゃんのために諦めるから、必ず兄さんが結婚してよ?」
 「...約束するよ」
 「絶対だよ?そうなったら俺は絆音ちゃんと本当の兄妹になれるわけだし!友人とか幼馴染なんて言葉で片付けられない、特別な関係になれるんだから!」
 そう言って目をキラキラさせている類。もっと落ち込んでるかと思ったが、意外と切り替えの早いやつだ。
 正直、少し類には悪いなと思っていたからそう言ってもらえて気が楽になったけど。
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