俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
翔side
 そんな話をして、すっかり酔い潰れた類を寝かせてから自分の部屋に戻った。
 きっとこの会話を、類が雑に閉めたドアの隙間から父さんたちが盗み聞きしていたんだろう...。
 とにかく、仕事もそろそろ師走の忙しさが本格的になってくる頃だ。来週から絆音が復帰したら少しは秘書課も楽になるだろうが、年末まではあまりゆっくりする暇は無さそうだな。

 そして週が明けた月曜日。
 約二ヶ月ぶりに出社する絆音を迎えに行くと、少し緊張しているようだった。
 「俺との約束は覚えてるよな?あんまり動き回るなよ?」
 「はい、分かりました」
 すでに仕事モードなのか、秘書だった時のようにあまり表情も変えずに淡々と答える絆音に少し違和感を覚えた。急にまたきっちりと壁を立てられたような...そんな寂しさがあった。
 そして会社に到着しまだ誰もいないロビーに入ると、不意に絆音が歩みを止める。
 「どうした?」
 「...いえ。少しお花が気になって...」
 「お前がいない間は受付の二人がやっていたと思うけど。藍田に伝えておくから教えてやってくれ」
 「...文句を付けるようで申し訳ないですが、少し季節感と華やかさが足りないかと...」
 「それは文句じゃない、アドバイスだ。より良くする為の意見を受け入れられないようなやつはいらない。だから遠慮しなくていい」
 秘書課に着くと、すでに山内が仕事をしていたので視線で合図すると小さく頷く。
 「じゃあな、何かあれば内線で連絡してくれ」
 「はい、承知しました」
 そう言って自席に座ったが、水川がいなくなった事で配置換えがあり絆音の机も少し移動していた。
 そのせいか少し複雑そうな顔をしていたのが気になり、その後も時々秘書室を覗いたが作業に集中しているようだったので声はかけなかった。

 あまり動くなと言ったのは俺だが、今までのように資料を届けにきたり報告に来る事もなく、朝と帰りの車でしかまともに顔をみる事も話しをする事も出来ない状態。
 そんな日々が続き、俺は壁をきっちり立て直された所から進めずにいた。
 しかも、今は残業や会食も多く帰りは送れない日も増えている上に、最近はあまり踏み込んで来るなと言われているような雰囲気すら感じる。
 どうしたら絆音の心に寄り添うことが出来るのだろうか...正直分からなくなってきていた。
 そんな事を考えモヤモヤしているうちに、忙しさもピークを迎え食事会にも顔を出さなければならない日々が続く。
 絆音の笑顔を見れていないせいか心は晴れず、久しぶりにストレスが溜まっていることを自覚していた。
 どうしたら前みたいに無邪気に笑ってくれるだろう...。この忙しさが落ち着いたら、どうにか二人でゆっくり出来ないだろうか...
 深夜家に帰ってはそんな事を考えながら眠る毎日で、最近は以前のように映画を見る事も酒を飲むこともしなくなっていた。
 というか、そんな事では心が癒えない事に気づいてしまった。やっぱり絆音がいないと...
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