俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
翔side
観光地からは少し遠ざかり山道を進んだ所にある温泉宿に到着すると、離れのスイートヴィラへと案内してもらう。
「大丈夫か?足元気をつけろよ」
段差や雪で濡れている所もある為、絆音のバッグを持ちその手を取る。
「あ、ありがとうございます。大丈夫です」
ペースを合わせてゆっくり歩き部屋へ入ると、広々とした和室に置かれているソファへと座らせる。
襖を開けると、木々や竹などの緑に囲まれた日本庭園が広がる。
そこには源泉掛け流しの露天風呂も付いていて、今の時期は冬の凛とした空気の中雪化粧した風景を楽しみながらゆっくりとお湯に入る事が出来る。
「わぁ、すごい!素敵ですね!」
「少し休んだら、さっそく露天風呂入るか?」
「はい!あ、でも副社長からどうぞ」
「手も冷たかったし身体が冷えると良くないから、絆音が先に入ってこい」
「で、でも...」
「一緒に入りたいのか?」
「ち、違います!じゃあ、お先に入らせてもらいます」
このやり取りに少し懐かしさを感じつつ、温かい日本茶と程よい甘さの和菓子を頂いてから露天風呂へ行く絆音を見送り襖を閉めた。
時々声をかけ大丈夫か確認しながら待っていると、しばらくしてすっきりした表情の絆音が戻ってきた。
「お待たせしました、とっても気持ちよかったです」
まだほんのり頬が赤い彼女に水を渡して、俺も久しぶりにゆっくりと温泉に浸かる。
前に来たのは、まだ類が留学する前だったからもう十年近くここへは来ていなかった。
昔は景色を楽しむとか、温泉でゆっくり過ごす事の贅沢さをあまり理解していなかったが、今ならそれが身に染みてよく分かる。
俺も歳をとったんだなと、なぜか少し切なくなった。
着替えて戻ると、絆音は隣の部屋で畳に座って外の景色を眺めていた。
「足、痛くないか?」
「大丈夫です、まだ指先までぽかぽかです」
俺も彼女の隣に座り外を見ると、はらはらと雪が降ってきて綺麗に整えられた緑の絨毯や池に次々と舞い落ちてはすぐに消えていく。
「雪...懐かしいです。小さい頃、よく雪の中で遊んでいました」
「そうか、絆音が住んでいたのも長野の山の方だったよな」
「はい、少しだけ覚えているんです。お家の庭でお父さんが積もった雪を集めて坂を作ってくれて、ソリで滑るのがとても楽しかったんです。それをお家の中からお母さんが見ていて、時々手を振ったりして...」
「絆音の心の中には、幸せな記憶がたくさん詰まっているんだろうな」
「...そうだと思います。両親と過ごせた時間は少なかったけど、晴くんたちと暮らし始めてからもたくさん幸せな思い出がありますよ」
「いつか、全部聞かせて欲しいな。それに、これからも頭の中まで全部幸せな記憶でいっぱいにしてやりたい」
「...副社長」
「なぁ、絆音。仕事、辛いなら辞めてもいいんだぞ?」
「...それは、やっぱり私はもう必要ないという事ですか...?」
「そんな訳ないだろ?前にも言ったけど、俺にはお前が必要だよ。でも、あの場所に居たら嫌でも思い出してしまうだろ?だったら、いっそ全く別の環境に変えるとかお前の能力があれば選択肢はいくらでもある」
「...私は、これからも副社長の為に仕事がしたいです。でも...なんだか、分からなくなってしまって...」
「分からない?」
「私...瀬那ちゃんの気持ちに、全く気がついていなかったんです。だから、相手が笑っていても本当はどう思っているんだろう?とか、心では私の事を憎く思っているんじゃないかと考えるようになってしまって...。そうしたら、何を信じて良いのか分からなくて、だったらもうあまり人と関わらないようにした方が良いかなって...。仕事が辛いわけではないんです。ただ、人の心が分からないのが、怖いんです...」
意を決した様子で本音を話してくれた絆音を、思い切り抱きしめてやりたい衝動にかられる。その気持ちを抑えて、膝に置いている彼女の手を握った。
観光地からは少し遠ざかり山道を進んだ所にある温泉宿に到着すると、離れのスイートヴィラへと案内してもらう。
「大丈夫か?足元気をつけろよ」
段差や雪で濡れている所もある為、絆音のバッグを持ちその手を取る。
「あ、ありがとうございます。大丈夫です」
ペースを合わせてゆっくり歩き部屋へ入ると、広々とした和室に置かれているソファへと座らせる。
襖を開けると、木々や竹などの緑に囲まれた日本庭園が広がる。
そこには源泉掛け流しの露天風呂も付いていて、今の時期は冬の凛とした空気の中雪化粧した風景を楽しみながらゆっくりとお湯に入る事が出来る。
「わぁ、すごい!素敵ですね!」
「少し休んだら、さっそく露天風呂入るか?」
「はい!あ、でも副社長からどうぞ」
「手も冷たかったし身体が冷えると良くないから、絆音が先に入ってこい」
「で、でも...」
「一緒に入りたいのか?」
「ち、違います!じゃあ、お先に入らせてもらいます」
このやり取りに少し懐かしさを感じつつ、温かい日本茶と程よい甘さの和菓子を頂いてから露天風呂へ行く絆音を見送り襖を閉めた。
時々声をかけ大丈夫か確認しながら待っていると、しばらくしてすっきりした表情の絆音が戻ってきた。
「お待たせしました、とっても気持ちよかったです」
まだほんのり頬が赤い彼女に水を渡して、俺も久しぶりにゆっくりと温泉に浸かる。
前に来たのは、まだ類が留学する前だったからもう十年近くここへは来ていなかった。
昔は景色を楽しむとか、温泉でゆっくり過ごす事の贅沢さをあまり理解していなかったが、今ならそれが身に染みてよく分かる。
俺も歳をとったんだなと、なぜか少し切なくなった。
着替えて戻ると、絆音は隣の部屋で畳に座って外の景色を眺めていた。
「足、痛くないか?」
「大丈夫です、まだ指先までぽかぽかです」
俺も彼女の隣に座り外を見ると、はらはらと雪が降ってきて綺麗に整えられた緑の絨毯や池に次々と舞い落ちてはすぐに消えていく。
「雪...懐かしいです。小さい頃、よく雪の中で遊んでいました」
「そうか、絆音が住んでいたのも長野の山の方だったよな」
「はい、少しだけ覚えているんです。お家の庭でお父さんが積もった雪を集めて坂を作ってくれて、ソリで滑るのがとても楽しかったんです。それをお家の中からお母さんが見ていて、時々手を振ったりして...」
「絆音の心の中には、幸せな記憶がたくさん詰まっているんだろうな」
「...そうだと思います。両親と過ごせた時間は少なかったけど、晴くんたちと暮らし始めてからもたくさん幸せな思い出がありますよ」
「いつか、全部聞かせて欲しいな。それに、これからも頭の中まで全部幸せな記憶でいっぱいにしてやりたい」
「...副社長」
「なぁ、絆音。仕事、辛いなら辞めてもいいんだぞ?」
「...それは、やっぱり私はもう必要ないという事ですか...?」
「そんな訳ないだろ?前にも言ったけど、俺にはお前が必要だよ。でも、あの場所に居たら嫌でも思い出してしまうだろ?だったら、いっそ全く別の環境に変えるとかお前の能力があれば選択肢はいくらでもある」
「...私は、これからも副社長の為に仕事がしたいです。でも...なんだか、分からなくなってしまって...」
「分からない?」
「私...瀬那ちゃんの気持ちに、全く気がついていなかったんです。だから、相手が笑っていても本当はどう思っているんだろう?とか、心では私の事を憎く思っているんじゃないかと考えるようになってしまって...。そうしたら、何を信じて良いのか分からなくて、だったらもうあまり人と関わらないようにした方が良いかなって...。仕事が辛いわけではないんです。ただ、人の心が分からないのが、怖いんです...」
意を決した様子で本音を話してくれた絆音を、思い切り抱きしめてやりたい衝動にかられる。その気持ちを抑えて、膝に置いている彼女の手を握った。