俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
翔side
 「ありがとう、話してくれて。あんな経験をしたんだからそう思うのも当然だ。でも...、人の心なんて本人以外分からないよ。俺だって、こうして教えてもらわなければ好きなやつの心だって分からない。だから、絆音が信じたいと思う人だけ信じればいい」
 「...私が、信じたいと思う人...?」
 「少しずつ気持ちを整理しながら、本当に大切だと思う人とだけ繋がっていれば、それで十分じゃないか?」
 「...人との繋がりは、幸せに生きていく為にとても大切...誰かに優しくすると、必ずそれは自分に返ってくる...。そう、母がよく言っていたんです。私の名前には、そういう想いが込めてあるって...」
 「素敵なご両親だな」 
 「私...事故の後に眠り続けていた時、夢で両親に会ったんです。でも、私を待っている人がいるからまだこっちにきてはダメって、もっと幸せになってからまた会いにきてねって言われたんです。それで、二人の姿が消えてしまって絶望していた時、誰かが名前を呼んでいて...。その声の方へ必死に走って行ったら、副社長に会えたんです」
 「...それは、目を覚ました時?」
 「はい。その時、また会えたことがすごく嬉しくて、副社長の顔を見た時とても安心して...。あの時も入院中も、そばにいてくれて本当にありがとうございました」

 あの時、そんな夢を見ていたなんて...。
 絆音が目を覚ました時の気持ちも鮮明によみがえり、たまらず握っていた手を引いて抱きしめてしまった。
 「...悪い。少しだけでいいから、こうさせてくれないか?」
 俺の腕の中で、小さな声で「はい」と呟き、身を委ねるように少し体重をかけてくれる。愛おしさが募りどうしようもない気持ちでぎゅっと強く抱きしめ、いい香りのする髪を何度も撫でた。
 「...本当は、副社長のことも信じているはずなのに、もし私への気持ちが変わってしまったら...そう思うと怖くて...。どう接したらいいのか、分からなくなっていたんです...」
 「ふっ、そんな心配一生しなくていい。俺の気持ちが変わるとしたら、今よりもっとお前を好きになるってだけだ」
 「...好きって、どういう気持ちの事を言うんでしょうか...?」
 「そうだな...例えば、抱きしめて安心するとか、二度と離れたくないとか、他のやつと仲良くしてるとモヤっとするとか。そういうのが、友人としてとか尊敬じゃなく恋愛感情の好きって気持ちなんじゃないか?」
 「...じゃあ、私は副社長の事が好きなんでしょうか...?」
 「ふっ、疑問系か。焦らなくていいよ、まだ分からないならゆっくり考えてくれ。俺はいくらでも待つ覚悟だし、絶対に諦めないと決めたから。でもただ黙って待つ訳じゃない、それは覚えておいて」
 そう言ってゆっくりと身体を離し、少し潤んだ戸惑いに揺れている瞳をじっと見つめていると、玄関のチャイムが鳴った。
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