俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
 コーヒーを流し込んで会議へと向かった彼を見送ってから秘書室に戻ると「副社長大丈夫そうでしたか?」と山内さんに声をかけられる。
 「珍しくソファに横になっていましたし、あまり顔色は良くない気がしますが...変わらず大丈夫の一点張りです」
 「そうですか。今が正念場ですからここで副社長に倒れられては大変です。後一週間ほどだと思いますが、少し様子を見ていて下さい」
 そう言われた私は、最近手をつけられていなかったファイルの整理や資料作成などをわざわざ副社長室で作業していた。
 「...なぁ、最近やけにここで仕事してるよな。何かあったのか?」
 ひと段落したらしい副社長はコーヒーを片手に私の顔を覗き込む。
 「...いえ、ここのファイルを最近整理できていなかったのでやっておこうと...」
 自分がこんなにも忙しいにも関わらず私の事を気にかけてくれる彼に、本当は見張りも兼ねてここで作業しているとは言えず少し胸が痛んだ。
 「本当にそれだけか?」
 「...はい」
 小さい声で歯切れの悪い返事をする私の横にドスッと座ると、思案顔でカップに口をつけている。
 久しぶりに間近で見る顔はうっすらと目の下に隈が浮かび瞳も充血している。相変わらず肌はとても綺麗だけど、唇は少し荒れているし色も良くない。
 ほとんど自炊はされないし、やっぱりご飯もちゃんと食べていないのかな?と思いながら、今日も何杯目かわからないコーヒーを飲む彼をじっと見つめてしまった。
 「ん?どうした?」
 ぱちっと目があった瞬間にドクッと心臓が跳ね、それを悟られないようそっと彼が持っているカップを取ってテーブルにおく。
 「そろそろお昼です、コーヒーでお腹いっぱいになってしまいますよ?」
 「腹が減ったら適当に食べるよ」
 「...あの、良かったらご飯作りに行きましょうか...?」
 「家に作りにきてくれるのか?」
 「...はい、副社長が良ければ...」そう言うと、彼はじっとこちらを見た後で「はぁー」とため息をつきながら項垂れる。
 「めちゃくちゃ嬉しいけど、今そんな事言うなよ...」
 「す、すみません...。身体が心配だったので、つい...」
 「ご飯よりお前が欲しくなる。ランチもいらないから、絆音がパワーくれ」
 私が手にしていたファイルをパッと取られその手をグッと引かれて、気づけば彼の腕の中にいた。
 「今はシャワーを浴びるくらいしか家に帰ってないんだ。...なぁ、この仕事が落ち着いたら来てくれないか?また一緒に暮らしたい。今は、絆音に癒されたい...」
 小さい声で不安そうに耳元で呟きながらも、ぎゅっとさらに強く抱きしめられる。
 私が、彼を癒してあげられるなら、何でもしたい...
 素直にそう思えて、無意識に腕をそっと彼の背中に伸ばし優しく撫でていた。
 「ふっ、絆音に慰められる日が来るとはな。でもパワー充電できたよ、ありがとう」
 しばらくして身体を離した彼は、そう言って優しい目で頭を撫でてくれる。
 思わずぼーっと見つめてしまったけれど、ハッと我にかえり慌てて立ち上がる。
 「す、すみません。というか、今は業務中です!ダメです!こんな所でこんなこと...。と、とにかくランチ買ってくるのでちゃんと食べてください!」
 急いでテーブルを片付け出て行こうとする私に「山内に言っておけ。監視なんて付けなくても俺は倒れたりしないから心配するなって」そう言ってまたパソコンに向き合った彼は、もう戦闘モードの顔をしていた。
 はぁ、ドキドキした...というか、山内さんの指示で見張りも兼ねていた事も全部バレている...。
 でも、副社長は必ずこの正念場もしっかり乗り越えてまたきっちりと成果を上げるのだろう。先ほどの彼の顔つきを見れば、私はそう確信できた。

 そして、次の日から私も少しでもお役に立てるよう自分ができることをしようと、お弁当を作って渡す事に決めた。
 秘書として仕事のサポートはもちろんだけど、やっぱり身体が元気でないと。
 出社してすぐお弁当を渡しに行くと、不思議そうにしながらも受け取ってくれた。
 「...弁当?絆音が作ったのか?」
 「はい。お節介だとは分かっていますが、少しでも栄養を摂って頂きたかったので...」
 「...ふっ、俺の秘書は心配性だな。ありがとう、嬉しいよ」
 そう言って立ち上がり私に近づくと、そっと右手で頬に触れ、親指で唇を撫でながら前髪に軽くキスを落とす。
 「こっちはまだ我慢するよ、だからそれ以外は許せ」
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