俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
 「っ、メイク取れちゃいます...」
 触れられている頬が、どんどん熱をもっていくのが分かる。きっと微かに指先が触れている耳まで真っ赤になっているだろう。
 それが恥ずかしくて、彼の手を外しながら親指についたリップグロスをハンカチで拭う。
 「ダメ、です。こんな所で、こんな事しないで下さい...」
 「今はまだ業務時間外だ」
 「でも、ここは会社です」
 「じゃあ、家ならいいのか?」
 「そ、そういう事では...」
 妙に熱っぽい瞳で見つめられ、その視線に耐えきれずパッと彼から離れ「メイク直してきます」と急いで部屋を出てきた。
 ロッカールームでグロスを塗り直すと「ふぅ」と思わずため息が漏れる。
 最近は会社でしか彼に会わないけれど、どんどんスキンシップが増えている。
 少し前まではハグにもドキッとする程度だったけれど、最近は触れられるとドクドクと熱いものが身体を流れているような感覚がして、勝手に顔まで赤くなってしまう。
 だから会社ではあまりしてほしくない...
 "会社では" そう思っている自分に少し驚く。
 この感覚は何なのかな...自分でも自分の気持ちがよくわからなくなってきた。

 ...というか、さっき触れた彼の手が妙に熱かったような...。
 あの時はドキドキして私も熱くなっていたから気が付かなかったけれど、あの妙に色っぽい目つきも...。もしかしてと思いすぐに来た道を引き返すと、副社長室のドアが開き社長が出てきた。
 「絆音ちゃんおはよう。ちょっといいかな?翔の事なんだが、どうにかあいつを休ませてくれないかい?私が言っても聞く耳を持たなくてね」
 「私もずっと気になっていたんですが...すみません。でも今日は少し熱があるように思うので、なんとか休んで頂けるよう話してみます!」
 「今朝の会議はあいつがいなくてもなんとかなるだろうし、今日一日休んで構わないから。もう翔をコントロール出来るのは絆音ちゃんだけなんだよ、悪いけど頼むね」
 社長にもそう言われ、改めて副社長室へ行くと彼はおにぎりを食べている。
 嬉しく思いながらも、今日こそは引き下がらないぞと気合いを入れ直す。
 「どうした?久しぶりに絆音の手料理、美味いよ」
 「あ、ありがとうございます。あの...失礼します」
 不思議そうな顔をしている彼に近づき、そっとおでこに手を当てる。
 「...え?」
 「やっぱり...。副社長、今日は休みましょう」
 「...は?な、何だよ急に」
 「熱があります。とにかく今日は休みましょう、すぐに病院に...」
 「待てよ、俺は大丈夫だって。これ食ったら元気になったし」
 「食欲があるのは良いですが、絶対的に休養が足りません。とにかく今日だけでも休んで下さい」
 「これくらい大丈夫だ。朝から会議もあるし今は休んでる場合じゃない事はお前も分かるだろ?いつものコーヒー頼むよ」
 「いえ、今朝の会議は副社長が出られなくてもなんとかなると社長が。今日一日休んで構わないと仰っていました。なので、とにかくまずは医務室に行きましょう」
 副社長の手を引き椅子から立たせようとするけれど、全く動く気配がない。
 「待てって。絆音、心配してくれるのはありがたいが本当に今はそんな事している場合じゃ...」
 「ダメです!もちろん今が大事な時だという事は私もわかっています!ですが、プロジェクトが成功しても副社長が身体を壊されてしまっては元も子もありません!お願いですから、今日だけでも休んで身体の回復に専念して下さい!」
 副社長の視線に怯みそうになりながらも、グッと彼を見つめ続けるとしばし沈黙が落ちた後「...はぁー」と深いため息を吐く。
 すると彼は立ち上がり一歩私に近づくと「お前はいつからそんな目をするようになったんだ?」と顔を近づける。
 怒っているのかと思い肩がビクッと揺れると、優しくポンポンと頭を撫でられた。
 「分かったよ、絆音」
 その言葉に安堵してパッと顔を上げると「ただし条件がある」と不敵な笑みを浮かべる彼と目があった。
 「...条件?」
 「お前の言う通り午前中は休むよ。だから、今日は俺とマンションに帰って気の済むまで抱きしめさせろ」
 「...へ?」
 「俺が心配なんだろ?早く回復して欲しいんだよな?」
 「...は、はい」
 「だったら、お前も協力してくれるよな?」
 とんだ交換条件に思わず気の抜けた声が出てしまったけれど、彼は至って真剣な様子。
 全く予想外の展開だけど、休んでくれると言うしこれ以上に上手く彼を言いくるめられそうな方法は見当たらない。
 「...分かりました。では医務室に」
 「言ったな?忘れるなよ?」
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