俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
翔side
 そして、それから一週間は余計な事を考える暇など全くないほど忙しかったが、絆音にもらったパワーと献身的なサポートのおかげもあり無事山場は乗り越えた。
 新しいプロジェクトも軌道に乗り始めたし、新設した工場も直前にトラブルがあったが無事に予定通りの開業を迎える事ができた。
 そして、時間をかけ慎重に進めてきた海外市場への参入もようやく話がまとまった。
 今夜はそのお祝いを兼ねた慰労会が開かれ俺も出席しなければならなかったのだが、一通りの挨拶を済ませると適当な理由をつけて早々に会場を後にした。
 マンションへ帰ると、部屋には明かりが灯っていて可愛らしいエプロンをつけた絆音が笑顔で出迎えてくれる。
 はぁ、贅沢だな... 幸せだ...
 さっそく気持ちが抑えられず腕を引いて抱きしめると、いつもは胸の前でぎゅっとしている腕が俺の背中に回った。
 「...ご飯もう少しで出来ますので、シャワー浴びてきて下さい」
 「ふっ、新婚みたいな会話だな」

 今日の午後、無事にこの正念場を乗り切った事を伝え、必死にサポートしてくれた秘書課のメンバーにも労いと感謝を込めて差し入れをした。
 それぞれ好きな物を選ぶ中、嬉しそうにプリンを手に取った絆音を手招きして副社長室まで連れて行った。
 「お前のおかげで無事にひと段落したよ」
 「いえ、副社長のお力です。本当にお疲れ様でした。それにご褒美も頂いてありがとうございます」
 さっそくソファでプリンを食べている彼女の隣に座り口を開けてみると、恥ずかしそうにしながらも一口入れてくれる。
 「甘い...」
 「お茶でも淹れましょうか?コーヒーがいいですか?」
 「いや、お茶もコーヒーもいらない。でも、俺もご褒美が欲しい」
 「ご褒美、とは...?」
 「絆音。お前とゆっくりする時間が欲しい」
 「そ、それがご褒美ですか...?では、副社長が食べたい物を私が作るというのはどうでしょう...?」
 「嬉しいけど、俺はそばにいてくれるだけで十分だよ。今日俺のマンションに帰ってきてくれるか?」
 「...でも今夜は慰労会では?」
 「ああ、だから少し遅くなるが挨拶だけ済ませてすぐに帰るよ」

 そんなわけで、俺は一杯だけ付き合いすぐに絆音が待つ家に帰ってきた。
 ハンバーグを作ってくれていたようで、リビングにはいい香りが立ち込めている。シャワーを浴びて戻ると、まるでレストランのような食事がテーブルに並べられていた。
 「...これ全部作ったのか?」
 「下ごしらえがしてある野菜を使ったので簡単にですが...。この数ヶ月、本当にお疲れ様でした」
 「ありがとう。お前も疲れただろう?かなり気を遣わせたし面倒な事も多かったのに、俺のために一生懸命力になろうとしてくれて本当に嬉しかったよ」
 「少しでもお力になれたのなら、私も嬉しいです」
 久しぶりに開放感があり、リラックスした気分でゆっくりと味わって食事を堪能した。
 「そのエプロン、新しいの?」
 「はい、可愛いですよね!これ、おばさんに作って頂いたものなんです」
 「母さんに...?」
 「この間お家に誘って頂いて、美雨さんと二人でお邪魔したんです。生地とかボタンとかたくさんあって、私たちが選んだ物で作って下さったんです」
 「へぇ...」
 可愛いなと思ったが、母さんが作ったものだと聞いた途端に見え方が変わってくるのはなぜだろう...。
 まぁ、いい。今度俺がもっと絆音に似合う物を買おう。
 そして、食器を下げるとすぐに洗い物を始めようとする彼女をソファへ連れていく。
 向かい合うように膝に乗せ顔を近づければ、途端に頬を赤く染めて俯く。
 「ご飯美味しかったよ。仕事以外でも俺を支えてくれて、ありがとう。やっと少しゆっくり出来るな」
 「...はい」
 「気分転換にまた温泉でも行くか?」
 「...はい」
 「何で目逸らすんだよ?ほら、俺のこと見ろ」
 熱くなっている頬に手をあて前を向かせれば、恥ずかしそうに目を逸らす。
 「ふっ、恥ずかしい?」
 「...はい」
 「キスしていい?」
 「...はい」
 「俺のこと好きになった?」
 「......はい」
 「...はい?」
 「...はい。...好き、です」
 「...寝言じゃ、ないよな?」
 「...はい」
 「ありがとう、最高のご褒美だ」
 堪らず引き寄せて、念願の唇にキスを落とす。
 ピクッと肩が揺れ、身体に力が入ったのがわかったが抵抗する様子はない。
 何度も啄むように、柔らかくて甘い唇を堪能してからゆっくり離れると、真っ赤な顔で目を泳がせる絆音。
 「キスしていいって言っただろう?」
 「...はい」
 「ふっ、"はい"ばっかりだな」
< 90 / 132 >

この作品をシェア

pagetop