俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
翔side
 思わぬ形での挨拶となったが、無事に許可を得られたことにホッと息をつく。
 だが、残る大きな障壁をどう乗り越えようか...
 いよいよ帰国するんだな...。結局この一年、晴臣には一度も連絡をしていない。
 まずは正直に全てを話し謝罪するか...いや、その前にもう少し外堀を埋めておきたい。

 伯父さんは出張中らしく美雨さんを含めた四人で蕎麦を頂いた後、帰り際彼女に話があると声をかけると、何かを察したのか外に出ようと言ってくれた。
 「私に話って、絆音ちゃんの事ですか?」
 「はい、彼女と結婚したいと思っています。その事で、少し相談が...」
 「ついに決めたんですね!よかった、私も絆音ちゃんには堂上さんがお似合いだと思っていたので」
 予想通り俺たちの結婚に肯定的な言葉をくれた彼女に、この話を晴臣にする時は同席して欲しいと頼んだ。
 「分かりました。お役に立てるかわかりませんが、協力させてもらいます。晴臣も最初は頭に血が昇るかもしれませんが、話せば分かると思いますよ」
 「助かります、その時はよろしくお願いします」
 「ふふっ」とどこか楽しそうに含みのある笑みを見せる彼女に一抹の不安を覚えながらも、とりあえず交渉は成立だ。
 そして、このままうちにも挨拶を済ませてしまおうと絆音を連れて隣の実家へと向かった。
 突然の訪問だったが二人とも在宅していて、彼女を連れてきた俺をニヤニヤしながら迎えてくれた。
 「絆音ちゃん、毎年お蕎麦ありがとうね!もしかして翔も一緒に行ってきたの?」
 「俺も挨拶に行かせてもらったよ」
 「あら、挨拶って事は...もしかして...?」
 「絆音と結婚したいと思ってる」
 「まぁ!よかったわね翔!ありがとう、絆音ちゃん!本当に絆音ちゃんがお嫁に来てくれるなんて...!」
 「よくやったな翔、本当に良かったよ。絆音ちゃん、これからもよろしくね」
 こちらも予想通りの反応で、絆音は少し緊張していたようだが母さんにハグされ嬉しそうに笑っていた。

 そして月曜日、朝の会議が終わり自室へ戻ろうとしていた時、慌てた様子で秘書室から絆音が出てきた。
 「あ、副社長!」
 「どうした?」
 「今、会長がお見えになったと...」
 「もう耳に入ったのか」
 「あの、私まだ心の準備が...」
 「大丈夫、いつも通りでいい。俺に任せておけ」
 そわそわしている絆音はそう言いながらも会長を迎えに行き、しっかり秘書の顔で副社長室まで連れてきた。
 「翔、聞いたぞ。ついに結婚を決めたそうだな」
 「はい、彼女と結婚したいと思っています」
 絆音の隣に行き肩を抱き寄せると、ビクッと固まっていた身体が揺れる。
 「お前ってやつは...。どうしてもっと早く言わなかったんだ!何度も絆音ちゃんに見合い写真を渡してしまったじゃないか!はぁ、申し訳ない。絆音ちゃん、私は知らなかったんだ、許してくれ」
 「い、いえ!とんでもございません!」
 会長の一語一句にビクビクしていたが、まさかの謝罪に絆音の声は上擦っている。
 「では、彼女との結婚を認めていただけるんですね?」
 「もちろんだ。今日は絆音ちゃんに謝りに来たんだ、お前達の結婚に文句をつけに来たわけじゃない。これで一安心だな」
 満足そうに言うと「ついでにちょっと見てから帰るか」と機嫌良くエレベーターに乗り下の階へ降りて行った。
 「はぁ、ドキドキしました...」
 「ふっ、でも心配いらなかっただろう?」
 「よかったです、認めていただけて...」
 「荷物は準備出来たか?今週末にでも迎えに行くよ」
 「あ、ありがとうございます...」
 「あのマンションは住みやすかったか?もし不満なら別の所を探すよ」
 「い、いえ!窓からの景色も素敵ですし、セキュリティも万全ですし不満なんてありません」
 「じゃあ今週末、迎えに行く」
 「は、はい...」
 目を泳がせ少し頬をピンクに染める姿が可愛いくて、つい抱きしめそうになる。しかし、今後は公私はしっかり分けようと絆音とも話していたのでグッと我慢した。
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