俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
翔side
 そして待ちに待った週末、荷物を運ぶため車で迎えに行き彼女の部屋を整えていった。
 実家から持ってきたローテーブルや一人がけのソファなど部屋の中が彼女の物で埋まっていくと堪らない気持ちになり、クローゼットに服をかけている絆音を後ろから抱きしめた。
 「ふ、副社長?あの、服がかけられません...」
 「ここは会社じゃない」
 キョトンとしている彼女の手からハンガーを取り、くるっとこちらを向かせ唇に噛みつくようにキスをする。
 「っ、ん...」
 突然の事にグッと力が入った絆音の身体を撫でキスを深めていく。戸惑う舌を絡めとり、優しく口内を撫でていると彼女の手は俺の胸を押している。
 「鼻で息しろって教えただろ?」
 「はぁ、はぁ」
 肩で息をする絆音の瞳はとろんと潤んでいて、その可愛いさに止められなくなった。まだ呼吸が整わない唇を再び塞ぎ、気が済むまで堪能していると膝から崩れそうになるのでグッと腰を支える。
 「もう、無理です...」
 涙をため真っ赤な顔で俺を見上げながらそう訴える姿に、もっとグズグズにしてやりたい欲求が迫り上がって来る。
 このままベッドへ連れて行きたいが...こういう経験のない絆音にはキスから少しずつ慣らしていかないと...。
 「でも、絆音が悪い」
 「...え?」
 「家では名前で呼べって言っただろう?」
 「あ...」
 「次間違えたらもっと激しいのするからな?」
 「っ、無理です!」
 「大丈夫、俺が少しずつ慣らしていくから」
 ぺたんと力が抜けた様子の絆音をソファに座らせ、クローゼットに服をかけていった。

 約一年ぶりの彼女との生活は待ち侘びたもので、毎日手料理を食べキスをして抱きしめて一緒に眠る。
 そんな幸せに浸り癒され、絆音もこの生活に少しずつ慣れ始め二週間ほど経った頃。
 秘書室に彼女を迎えに行き、帰ってご飯の用意を手伝う。二人で食事をし順番にシャワーを浴びてからソファで絆音を膝に乗せ愛でる。
 それが日常のルーティンになりつつあり、今日も俺が先にシャワーを浴び彼女が出てくるのを待っていると...突然インターフォンが鳴った。
 画面を確認すると、そこに映し出されていたのは明らかに怒っている晴臣と呆れた様子の美雨さん。玄関へ行きドアを開けると「おい翔!絆音に会わせろ!」と掴みかかる勢いで晴臣が入ってきた。
 そしてその後ろで、美雨さんが顔の前で両手を合わせ"ごめんなさい"と口だけで言う。
 「絆音なら風呂だよ。いつ帰国したんだ?」
 「今日だよ。それよりどういう事だ!何がどうなってお前が絆音と結婚する事になってんだよ⁈ 確かにお前に絆音を守ってくれと言ったが、俺は結婚まで頼んでないぞ!」
 「とりあえず座れよ、お前には帰ってきたらちゃんと説明するつもりだったよ。この一年の事は聞いたのか?」
 「ああ、俺だけ除け者にされてた話なら聞いたよ。ストーカーの件もな」
 「すみません、突然押しかけて。自分だけ色々聞いてなかった事に拗ねてるんです。それで、どうしても絆音ちゃんの顔を見ないと気が済まないみたいで」
 「美雨は余計な事言わなくていいんだよ。というかお前らいつから知り合いになったんだよ⁈よりによって俺がいない一年になぜこうも色々事件が起きるんだ...」
 すると、ゆっくりとリビングのドアが開き恐る恐るといった感じで絆音が顔を覗かせた。
 その瞬間、婚約者を目の前に溺愛する妹を勢いよく抱きしめに行った晴臣に、絆音も目を丸くしている。
 「は、晴くん⁈ ちょ、ちょっと苦しいよ!」
 「もう身体は大丈夫なのか⁈ 足は?本当に完治したのか?もう痛い所はないんだな?」と腕や顔を触り、跪いて彼女の足首をみている。
 「も、もう大丈夫だから!心配かけてごめんなさい...。それよりいつ帰国したの?なんでここに...?」
 「お前の顔を見るために決まってるだろ。それより、何で俺に何も言ってくれなかったんだよ!事件のこともストーカーの事もそうだけど、なんで翔と結婚なんだよ⁈」
 「あ、えっと...」
 目を泳がせ助けを求めるように俺を見る彼女を晴臣から離しソファに座らせる。
 「とにかく説明しろ、中途半端な理由なら俺は認めないからな!」
 「もう、晴臣が決めることじゃないでしょ?二人はしっかり気持ちを確かめ合って時間をかけて結婚を決めたのよ!さっきそう説明したじゃない」
 「美雨の話を信じてないわけじゃない。ただ、お互い子どもの時から今までそんな素ぶりは一ミリもなかっただろ?それが何で急にこの一年で結婚までいくんだよ?俺はそれが信じられない。まさか会社のためとか、利害の一致とかで愛のない契約結婚しようとしてるんじゃないよな⁈」
 「ち、違うよ!晴くん、本当にそんなんじゃないの。私は、か、翔さんを、愛してるの...」
 こんな状況で彼女がそんな言葉を言うとは思わず俺も驚いたが、俺よりもはるかに驚き言葉を失っているやつがいる。
 恥ずかしそうにしながらもしっかりと晴臣を見て意志を伝えようとする姿に、グッと胸を掴まれた。
 俺もこれまでの事、彼女を好きだと自覚してからの事を説明すると固まっていた晴臣は次第に顔を顰め頭を抱える。
 「お前ら、本気で言っているのか...?」
 「もちろん本気だ」
 「...はぁー、嘘だろ?信じられない。もう脳がキャパオーバーだ。ちょっと考えさせてくれ...」
 そう言って玄関の方へとトボトボ歩いて行く。
 「突然お邪魔してすみませんでした、あとは私に任せてください。絆音ちゃんも心配しなくていいからね?」
 美雨さんは俺たちにそう声をかけてから、来た時とは正反対にガックリと肩を落とした晴臣の手を引いて出て行った。
< 95 / 132 >

この作品をシェア

pagetop