俺様副社長の溺愛注意報 〜秘書ときどき幼馴染のち妻〜
溺愛の嵐にはご注意下さい
 パタンと玄関の扉が閉まると、急にシーンと静寂に包まれ思わず二人で顔を見合わせる。
 先ほど勢いで晴くんに言ってしまった言葉を思い出し、今更とても恥ずかしくなって目を逸らした。
 「晴くん、帰国していたんですね」
 「今日帰ってきたって言ってたよ。話を聞いてそのままここに来たってとこだろうな」
 「そうですね。なんか、すみません...」
 そんな話をしながらリビングに戻りソファに座ろうとすると、ひょいっと抱き上げられ彼の膝に乗せられた。
 「そんな事より、さっきのもう一回俺に言ってくれよ」
 「さ、さっきの...?」
 最近はよくこうして膝に乗せられ、至近距離で見つめられたり撫でられたりハグする事が彼のルーティンの一部になってしまっている。ただでさえ恥ずかしいのに、さっきの事もあり目を見られない。
 「絆音?ほら、ちゃんと俺の事見て言って」
 両手で熱くなっている頬を包まれ、視線を合わせるように顔を上げられる。
 恥ずかしいのに、その期待に満ちた瞳には逆らえなくて改めて彼への気持ちを口にする。
 「わ、私は...」

 はっきりとそれを自覚したのは、あの夢から目覚めた時だった。
 退院後のプロポーズからずっとわからない感情に悩んでいたけれど、純粋に二人で過ごす時間が楽しくて仕事が忙しくて会えないと寂しくて、連絡を待っている自分がいた。
 そして、度々見る悪夢に恐怖を感じる理由がはっきりと分かったのは、初めて彼と一緒に眠った時。ハッと目が覚めた時にすぐそばに彼がいて気がついた。
 私は落ちる事じゃなく、彼に会えなくなる事が怖かったんだ...と。
 抱きしめてもらった時の安心感と、どこにも行かないから安心しろと言ってくれた言葉に涙が出そうだった。
 このままずっと抱きしめていて欲しい、少しも離れたくない、彼を失いたくない...そう思った時、今までのもやもやした感情の輪郭がはっきりと見え、これが好きだと愛しているという感情なのだと気づいた。
 彼が熱を出した時も、私がそばで支えたいという思いは秘書としてだけでなく、一人の女性として自分でも気づかないうちに独占欲のような感情が生まれていたのかもしれない。
 誰にもこの役目は代わりたくないし、これからもずっと私が彼を支えていきたいと強く感じた。 
 彼を人として尊敬し慕っていた思いは、一緒に過ごした時間の中で少しずつ変化していた。
 もしかしたら、もっともっと前から好きだったのかもしれない。でも無意識に誤魔化そうとしていたのかもしれない。
 だけどもう、はっきりと自覚してしまった。類くんや晴くんや美雨さんを好きな気持ちとも違う、彼だけに抱く感情に気づいた。
 この気持ちを晴くんにも分かってもらいたいと思う反面、反対されても彼と離れたくないと強く思う。
 
 「か、翔さんを、愛しています...」
 私の言葉に、今までに見たことがないくらい優しい極上の笑みを浮かべた彼がとても愛おしく感じて、自分から抱きついた。
 耳元で「はぁー」と大きく息を吐きながら、優しく抱きしめ頭を撫でてくれる。
 「やばいな...」と呟いたのと同時に、グッと強く抱きしめられ身体が浮かんだ。
 彼が足早に向かったのはベッドルームで、そのまま傾れ込むとキスの雨が降ってくる。
 恍惚な彼の表情と甘いキスにすっかり酔いしれ頭はふわふわしてくると、その感覚がとても気持ち良くてまるで微睡に包まれていくようだった。 
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