一途な脳外科医はオタクなウブ妻を溺愛する

「でも、これから式なのに……。メイクが落ちちゃったら」
「もう一度やり直してしてもらえばいい」
「誓いのキスより前にキスしていいんですか?」
「それはそれ、これはこれだ。今日の式にはゲストもいないし、神様だって愛し合う夫婦には寛大だろう」
「もう……」

 観念して目を閉じると、柊二さんの唇が優しく触れた。

 こういう時は意外とワガママな柊二さんだが、流されてしまう私も私。彼と親しくなったばかりの頃は恥ずかしくてたまらなかったキスも、今では大好きなスキンシップのひとつだ。

 じゃれ合うように唇を合わせては微笑みを交わし、穏やかに愛が深まっていく。

「……今日は、とびきり素敵な魔法をありがとうございます」

 一旦唇が離れたタイミングで、私は照れながらそう伝えた。突然のサプライズには驚かされたけれど、豪華な機内で過ごすふたりきりの時間は、身に余るほど極上の幸せだ。

「どういたしまして。でも、まだ終わりじゃないぞ。チャペルから望む空と海の青さは、夢みたいに美しいんだ」

 美しい笑みを浮かべ、自信たっぷりに宣言した柊二さん。ふたりで顔を突き合わせ、窓から外を覗く。

 緑がかった美しい海のきらめきに、胸が高鳴る。

 プライベートジェットは幸福な新郎新婦を乗せて、まっすぐバリ島へと向かっていった。

 




 FIN
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