堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「あの、えっと……総務部の茅田です」

 羽瀬川先生のお供でついて来ましたと言いそうになり、寸でのところで口をつぐんだ。
 お招きにあずかり、と言うのもなにか違う気がする。
 もっとほかにいい文言はないかと考えてみたけれど思いつかなくて、所属部署と名前だけを伝えて深く頭を下げた。

「へぇ、うちの社員だったんだ。じゃあ俺の紹介はいらないね、茅田さん」
「もちろん国枝副社長のことは存じ上げております」

 恐縮しながらうつむいて返事をすると、副社長が羽瀬川先生の肩に手を回してグイッと引き寄せた。

「亜蘭くんよ、お前も隅に置けないねぇ。法務部以外で仲のいい女性が社内にいるなんて聞いてないぞ?」
「いや、うちの部署の女性とは特別仲よくもないし、既婚者ばかりだから……」

 そういう理由で法務部の同僚には頼めなかったのか。疑問だったことが今の会話で腑に落ちた。
 だけど先生は私に白羽の矢を立ててくれたのだ。そう思うとしだいにうれしさが込み上げてくる。

「まさかお前、無理やり連れてきてないよな? それだとパワハラ。……いやセクハラか?」
「ふざけるな。俺を誰だと思ってるんだ。法曹家がコンプラ違反をしたら終わりだろ」

 白けた視線を向けて羽瀬川先生が肩に置かれた手を払うと、副社長が子どもみたいな笑みを浮かべる。
 ふたりは幼馴染だから、こうして昔から冗談を言い合っているのだろう。親密さがうかがえてほっこりする。
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