堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
「料理、どれを取ろうか」

 羽瀬川先生がおもむろにお皿に手を伸ばして私に尋ねた。
 たしかにホテルのビュッフェだから料理はどれも手が込んでいておいしそうだけれど、気後れしてしまう。
 私なんか、目立たない隅のほうで大人しくしているほうがいいのではないか、と。

「食べちゃっても大丈夫ですか?」
「もちろん。苦手なものは?」
「ないです」

 おいでと手招きされたので料理が並んでいる場所に近づくと、先生が慣れた手つきで料理をいくつかお皿に乗せて私に渡してくれた。
 どれもかわいらしくてカラフルで、見ているだけでも楽しくて思わず笑みがこぼれる。

「このゼリーみたいなやつはコンソメを固めたものらしい」

 じろじろと料理を眺めていると、先生が隣で説明してくれた。

「一番上に乗ってるのって……?」
「キャビア」
「ですよね」

 たっぷり乗せられすぎていて、キャビアだと気づくのが遅れた。
 こんな料理を食べるのは生まれて初めてだなと思いつつ、恐る恐る口の中に入れてみる。

「おいしいです!」
「よかった。こっちは生ハム」

 指で示されたほうを見ると、アボカドとチーズを生ハムで巻いたものだった。ひとくちサイズでかわいらしい。

「え、これもめちゃくちゃおいしい。さすが東京翠雲グランドホテル。クオリティー高すぎです」

 どれも高級感あふれる上品な味付けで、普段なかなか食べられないようなものばかりだ。
 ますます自分が場違いなところへ来てしまったと実感が湧いてくるけれど、羽瀬川先生が私の反応を見て笑ってくれているならそれでいいと思えた。

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