堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
 それ以来、茅田静珂のことが気になって仕方なかった。
 ふさぎ込んで会社を休んだりしていないだろうかと心配しては、社内で同僚とふたりで歩く姿を見つけてホッとしたり。
 なぜこんな感情が湧いてくるのか、自分でもよくわからない。
 泣き腫らした瞳でキーマカレーを食べたときの無垢な笑顔が時折自然と浮かんでくる理由も。

「亜蘭、来週末にパーティーがあるんだけど、お前も出てくれないか?」
 
 勇気はいつもこうだ。厄介なことをなんでもないような顔でさらりと言ってくる。

「俺の肩書きは企業内弁護士だぞ? 行かなきゃダメか?」
「亜蘭は俺の右腕だから。方々に紹介しときたいんだよ。それと、パートナー同伴だから誰か連れてきてくれよな」
「は?!」

 副社長室へ呼び出されたから、また叔母さんの離婚の話かと思ったのだけれど。
 パートナー同伴でのパーティーの話は、完全に俺の想像を超えていて自分の耳を疑った。

「パス! 俺には相手がいない。出席はなしだな」
「仲のいい女性に頼めばいいじゃないか」

 そういう女性がいないのは勇気もわかっていて、その上であえて言っているのだからタチが悪い。
 俺が普段、恋愛や結婚に関する話を一切しないから、ここぞとばかりに探りを入れたいのだ。

「誰か思い当たる人は?」

 尋ねられて、ふと頭に浮かんだのは、なぜか茅田静珂だった。
 ……いや、ただの同僚だ。特別仲がいいとは言えない。
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