性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
第十六章【想定外の来訪者】
秋の彩りが消え、冬の寒さが差し迫る頃。
類は光の自宅で真っ白い天井を見つめながら、主人《あるじ》の帰りを待っていた。
時刻は午後14時ー。今日は朝から溜まった協会の事務処理があると言って早々に外出してしまった光は「昼までに帰る」といい残して出て行ったきり、音沙汰がない。
(せっかく、お昼ご飯一緒に食べようと思ってたのに)
類は壁にかけられた時計を見つめる。この調子だと今日は夜まで一人の可能性が高い。
(エリカちゃんと礼二さんは今日鴉天狗だし、誠君は、学校だし…)
こんなことなら、礼二に頼み込んで鴉天狗に出勤すれば良かったと酷く後悔する。
(本当に、事務処理なのかな…)
そんなもの、檜森に頼んでも良さそうに見えるが教会内では色々とやる事が多いらしい。
(まさか、また女の子のフォローだったり…)
類は険しい顔で、天井を睨みつける。
最近はそういった話を聞くことは少なくなった。しかし、それは単に光が女性関係の話題を避けるようになっただけで、決して無くなったという訳ではない。
(まぁ、別にいいけど…)
類は思い切り、伸びをする。別に自分は光の恋人ではない。婚約者なんて聞こえのいい言葉で縛られてはいるが、その言葉の裏にあるのは都合の良い道具という事実だけである。
類は大きく欠伸をすると、横へと寝返りを打つ。
(今日はこのままお昼寝でもしちゃおうかな…)
うつらうつらと微睡みながら、心地よさの波に意識を手放そうとしていると、突然、大きなインターホンの音が部屋に鳴り響いた。
音に驚いた類は閉じかけていた目を思い切り開くと、ソファから飛び起きる。
「誰…?」
別に出る必要はないのだが、何となく来訪者の顔が気になりチカチカと光るインターフォンを確認しに向かう。
「げ…」
すると、そこにはニコニコと張り付いた笑みを浮かべる堂上の姿があった。
類は少し動揺した様子で、インターフォンから、距離を置く。
「な、なんで?」
まさかの来訪者に類は、思わず声を上げる。
光から誰か来るとは聞いていない、ましてや、あまり仲の良いとはいえない感じの陰陽師が何故わざわざ光の自宅に来訪するのだろうか?
(ま、まさか、また仕事の依頼?)
類は変な汗をかきながら再びインターフォンの画面を覗き込む。堂上は何を考えているのか、ずっとニコニした表情でこちらを見ている。その笑顔が何とも気味が悪い。
(ど、どうしよう…)
類は胸元を押さえながらその場に立ち尽くす。どうか、このまま留守だと察して帰ってはくれないだろうか。
すると、そんな類の心情を感じ取ったのか堂上は画面上から姿を消した。
(帰った?)
類はホッと胸を撫で下ろす。しかし、安心したのも束の間、今度は玄関先のインターフォンが鳴り響く。
「え?!」
どうやら、何かしらの方法で下のオートロックを潜り抜け上層階に辿り着いてしまったようである。
怖くなった類はスマホを握りしめ、自室へと続く中央の螺旋階段を駆け上る。
部屋に入り鍵を閉めると、かがみ込むようにしてベッドサイドの陰に隠れる。
(お願い!帰って…)
類は祈るように両手を合わせて、身を縮ませる。しかし、インターフォンはそんな事お構いなしにひっきりなしに鳴り続ける。
「お願い!もう、帰ってよ!」
「それは、無理な話かな」
祈るように声を上げると、誰も居ない部屋の中から堂上の声が響き渡った。
類は恐る恐る顔を上げる。
「ど…、どうして?」
あまりの恐怖に、呆然と声の主を見つめると、堂上は再びニッコリと微笑んだ。
「どうしてって、君って変な子だね」
「さ、さっきまで外に居た…じゃない…」
類は微笑みながら近づいてくる堂上を震えながら見つめる。そう、先ほどまで確かに外に居たはずの男が何故今、自身の部屋の中にいるのか。
「別に家の中に侵入するくらい、どーってことないさ」
堂上は類の部屋に飾られた無数のぬいぐるみを掴むと興味なさげにそれを後ろへと放り投げていく。
「や、やめて下さい!け、警察呼びますよ?!」
すると、堂上は今まで閉じていたその鋭い瞳を開眼させ、類の顎を掴んだ。よく見ると彼の瞳は何処となく赤い色をしている。
「やめときなよ…、警察なんか何の役にも立たないから」
「ッ…」
「やっぱ、君はあの時俺が貰っておくべきだったな…」
いつもとは話し口調が違う堂上の態度にこれが彼の本当の姿であることを知る。
「まぁ、いっか、あんた俺と組んだらすぐ死んじゃいそうだし…」
一体、何んの話しているのか、類は目尻に涙を溜めながら堂上の事を睨みつける。
「会長がお呼びだ。ったく、せっかく迎えに来たってのに、居留守なんて使いやがって…」
堂上はそう言うと、もう片方の手でスマホを取り出し何処かに電話をかける。
「……、えぇ、はい。対象は捉えました。今からお宅に伺います」
堂上はどこかぶっきらぼうにそう話すと、早々にその通話を切った。
「さて、着いてきてもらおうか?光の婚約者さん?」
類はその言葉を最後に意識を手放した。
類は光の自宅で真っ白い天井を見つめながら、主人《あるじ》の帰りを待っていた。
時刻は午後14時ー。今日は朝から溜まった協会の事務処理があると言って早々に外出してしまった光は「昼までに帰る」といい残して出て行ったきり、音沙汰がない。
(せっかく、お昼ご飯一緒に食べようと思ってたのに)
類は壁にかけられた時計を見つめる。この調子だと今日は夜まで一人の可能性が高い。
(エリカちゃんと礼二さんは今日鴉天狗だし、誠君は、学校だし…)
こんなことなら、礼二に頼み込んで鴉天狗に出勤すれば良かったと酷く後悔する。
(本当に、事務処理なのかな…)
そんなもの、檜森に頼んでも良さそうに見えるが教会内では色々とやる事が多いらしい。
(まさか、また女の子のフォローだったり…)
類は険しい顔で、天井を睨みつける。
最近はそういった話を聞くことは少なくなった。しかし、それは単に光が女性関係の話題を避けるようになっただけで、決して無くなったという訳ではない。
(まぁ、別にいいけど…)
類は思い切り、伸びをする。別に自分は光の恋人ではない。婚約者なんて聞こえのいい言葉で縛られてはいるが、その言葉の裏にあるのは都合の良い道具という事実だけである。
類は大きく欠伸をすると、横へと寝返りを打つ。
(今日はこのままお昼寝でもしちゃおうかな…)
うつらうつらと微睡みながら、心地よさの波に意識を手放そうとしていると、突然、大きなインターホンの音が部屋に鳴り響いた。
音に驚いた類は閉じかけていた目を思い切り開くと、ソファから飛び起きる。
「誰…?」
別に出る必要はないのだが、何となく来訪者の顔が気になりチカチカと光るインターフォンを確認しに向かう。
「げ…」
すると、そこにはニコニコと張り付いた笑みを浮かべる堂上の姿があった。
類は少し動揺した様子で、インターフォンから、距離を置く。
「な、なんで?」
まさかの来訪者に類は、思わず声を上げる。
光から誰か来るとは聞いていない、ましてや、あまり仲の良いとはいえない感じの陰陽師が何故わざわざ光の自宅に来訪するのだろうか?
(ま、まさか、また仕事の依頼?)
類は変な汗をかきながら再びインターフォンの画面を覗き込む。堂上は何を考えているのか、ずっとニコニした表情でこちらを見ている。その笑顔が何とも気味が悪い。
(ど、どうしよう…)
類は胸元を押さえながらその場に立ち尽くす。どうか、このまま留守だと察して帰ってはくれないだろうか。
すると、そんな類の心情を感じ取ったのか堂上は画面上から姿を消した。
(帰った?)
類はホッと胸を撫で下ろす。しかし、安心したのも束の間、今度は玄関先のインターフォンが鳴り響く。
「え?!」
どうやら、何かしらの方法で下のオートロックを潜り抜け上層階に辿り着いてしまったようである。
怖くなった類はスマホを握りしめ、自室へと続く中央の螺旋階段を駆け上る。
部屋に入り鍵を閉めると、かがみ込むようにしてベッドサイドの陰に隠れる。
(お願い!帰って…)
類は祈るように両手を合わせて、身を縮ませる。しかし、インターフォンはそんな事お構いなしにひっきりなしに鳴り続ける。
「お願い!もう、帰ってよ!」
「それは、無理な話かな」
祈るように声を上げると、誰も居ない部屋の中から堂上の声が響き渡った。
類は恐る恐る顔を上げる。
「ど…、どうして?」
あまりの恐怖に、呆然と声の主を見つめると、堂上は再びニッコリと微笑んだ。
「どうしてって、君って変な子だね」
「さ、さっきまで外に居た…じゃない…」
類は微笑みながら近づいてくる堂上を震えながら見つめる。そう、先ほどまで確かに外に居たはずの男が何故今、自身の部屋の中にいるのか。
「別に家の中に侵入するくらい、どーってことないさ」
堂上は類の部屋に飾られた無数のぬいぐるみを掴むと興味なさげにそれを後ろへと放り投げていく。
「や、やめて下さい!け、警察呼びますよ?!」
すると、堂上は今まで閉じていたその鋭い瞳を開眼させ、類の顎を掴んだ。よく見ると彼の瞳は何処となく赤い色をしている。
「やめときなよ…、警察なんか何の役にも立たないから」
「ッ…」
「やっぱ、君はあの時俺が貰っておくべきだったな…」
いつもとは話し口調が違う堂上の態度にこれが彼の本当の姿であることを知る。
「まぁ、いっか、あんた俺と組んだらすぐ死んじゃいそうだし…」
一体、何んの話しているのか、類は目尻に涙を溜めながら堂上の事を睨みつける。
「会長がお呼びだ。ったく、せっかく迎えに来たってのに、居留守なんて使いやがって…」
堂上はそう言うと、もう片方の手でスマホを取り出し何処かに電話をかける。
「……、えぇ、はい。対象は捉えました。今からお宅に伺います」
堂上はどこかぶっきらぼうにそう話すと、早々にその通話を切った。
「さて、着いてきてもらおうか?光の婚約者さん?」
類はその言葉を最後に意識を手放した。