性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
 試合の結果は意外にも十点差で檜森達が勝利した。

 「あれれー?どこの誰っすか?俺が居るから負けないなんてスカしてた輩は?」

 檜森の発言に光はわかりやすく青筋を立てる。

 「こっちは戦力ゼロのお荷物背負ってんだ、寧ろこんなんでお前らが負けたら末代の恥だろ…」

 意味のわからない光のいい分に類は溜め息を吐く。

 「でも、でも、途中までマジ負けるかと思っちゃった!やっぱ、あーしの戦略が良かったのかな!」

 エリカはえっへんと自慢げに胸を叩く。

 「どんな戦略だよ…、ってかさっさとしろよ。この俺に何を命令すんだ?」

 ポケットに手を突っこみながら訪ねる光の態度に檜森分かりやすく、視線を逸らす。

 「はいはーい!それならエリカちゃんもう考えてまーす!」

 勢いよく手を上げるエリカに檜森は意味のわからない拍手を送る。

 「ヒカルン達への罰ゲームは…」

 「「罰ゲームは?」」

 珍しく声がハモッたことはこの際どうでも良い。

 「罰ゲームはー、チューするまでここから帰れませーん!」

 エリカの発表に類と光はわかりやすく顔を顰める。

 「さぁ、お二人さん♪、このエリカちゃんの前で愛の口付けをして見せなさい!」

 いつもの喋り口調ではなく、どこか演技がかった声でそう命令するエリカに光は盛大に溜め息を吐く。

 「エ、エリカちゃん!さすがにそれは…」

 「…まぁ、何となく予想はしてたけど」

 「えぇ?!そうなんですか?!」

 エリカの提示する罰ゲームに、光は意外にも冷静な反応を見せる。

 「さ、さ、早く、早く!」

 「…しゃあねぇ、おら。さっさと済ませるぞ」

 「いや、そんな軽く済ませられるもんなんですか?!」

 「こういうのは早く済ませた方が恥ずかしくねぇんだよ、覚悟決めろ」

 光はそういうと、指でちょいちょいと類を呼び寄せる。

 「で、でも!私!」

 「はい、目ぇ瞑って」

 「光さん!」

 「早くしろ、俺に恥をかかせるな」

 光の一言に類は押し黙る。そして、一つ呼吸を置くと覚悟を決めてギュッと両目を瞑った。

 (ファーストキスなのに…)

 内心、色んな感情でごちゃごちゃになりながら、類は今か今かと光を待ち受ける。

 「…」

 「…」


 しかし、口づけは中々やってこない、類は徐々に不安な気持ちに苛まれる。
 
 (まさか、冗談でしたー的なあれかな…?)

 あれだけ早く済ませようとしていた光にしては、少し遅すぎるような気がした。

 (…まだかな)

 いよいよ、不安が頂点に達した類は少しだけ目を開けようとする。

 
 その時だったー、


 額あたりに、やわらかい温もりを感じると同時に小さくリップ音が響いた。

 類は驚いて、思い切り目を開けるとエリカと檜森が少々驚いた表情でこちらを見ている。

 「はい、終わり。さ、帰るぞ」

 光は何事もなく類から離れると伝票をもって出口へと歩いていく。

 「ちょ、ちょっと!何アレ!」

 エリカは不満そうに、光の後を追いかける。

 「何ってキスだけど?」

 「はあ?!あんなの大人が子供にする奴と一緒じゃない!」

 エリカはもう一度!と言って声を張り上げる。

 どうやら、光は類の口にではなく額に軽くキスをしただけのようだ。

 「場所の指定が無いならあれでも有りだろ。お前、意外と馬鹿なのな」

 「はあ?、誰に向かって言ってんだコラ!」

 光の言葉に、エリカは猛烈に腹を立てた。

 「まぁ、まぁ、エリカちゃん。確かに仕方ないですよ。また次に期待しましょ?」

 一体何を次に期待する必要があるのか。しかし、まずはこの窮地を切り抜けられたことに安堵する。




 (次、遊びに来るときは頑張って勝たなきゃな…)
 
< 105 / 131 >

この作品をシェア

pagetop