性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
第四章【喫茶烏天狗】
礼二が運転する車に揺られること十分、類はおしゃれな街並みの一角に位置する純和風な建物の前で車を降りる。
(…なんか想像していたよりもオシャレ)
建物をみるなり、類は不安そうにあたりを見渡す。喫茶店というのだからそこまで客足は多くないだろうと踏んでいた類であったが、店の前にはメニュー表を片手に列を成す女性客で賑わっている。
「…す、すごい数」
「すげーよな…、どうせコーヒーとシフォンケーキしかねぇのによ」
礼二が車から鞄を引っ張り出すと、少し皮肉そうに呟く。
「やけに女性の方が多いですね…」
「ああ…、ありゃ全部光目当てのファンだ」
「ふぁ、ファン?!」
礼二の言葉に類は思わず列に並ぶ客を二度見する。
「…んな驚いてやるなよ」
「いや、だって…、光さんのですよね?」
類は改めて光の事を思い出す。
どこか怖い雰囲気を纏い、話せばただの無愛想。とりわけ優しいわけでもなく、話し上手という訳でもない。
(まあ、顔はかっこいいけど…)
うーん、とどこか微妙な反応を見せる類に礼二は思わず吹き出す。
「まあ、お前の言い分もよくわかるぜ?あいつ顔がいいだけで他、最悪だもんな?」
「な?!」
そこまではいっていないが、どうやら礼二にも思うところはあるようだ。
「でも…、光さんって確かお店を経営してるだけですよね…?」
それなのに何故光の存在を知っているのだろう。
「ああ、それはよく店に顔出すからだよ…。よく窓際の一番いい席でよくわかんねぇ仕事してんだ」
「そ、そんなんであんなにファンができちゃったんですか?」
「だから、んな驚いてやるなって…。まぁ、あいつ顔はイケメンで有名だったからな…」
まるで昔から知っているような礼二の口ぶりに、類はキョトンとした表情を見せる。
「礼二さんって…、光さんとお知り合いだったんですか?」
「知り合いも何も、俺と光は小せぇ時からの顔なじみよ」
そういって欠伸をする礼二に、類は意外そうに何度も目をパチクリさせる。
「えっと、要するに幼馴染?」
「まー、ムカつくけどそーなるな」
「ムカつくんですか…?」
あまり仲が良くないのだろうか?
「ムカつくに決まってんだろ、毎回俺が惚れた女の子は光の事好きになっちまうし…、何かといえばみんな光絡みで俺に近づいてくるし、ようやく成人して離れられると思ったら今度は店番任せられるしな…」
まるで、何か諦めたようにそう話す礼二に類は苦笑する。
(嫌なら、店番はやらなくても良かったんじゃ…?)
類は内心そう思ったが、彼にも何かしらの断れない理由があったのだろうと考えなおし、変に聞き返すのはやめることにした。
「ま、とにかく、ここじゃあんまり光に近づかない方がいいぜ?」
「え…、なんでですか?」
礼二はちらりと行列を成す女性陣達を一瞥する。
「中には、ガチ恋の奴もいるからよ…。お陰で女の従業員は入れ替わりが激しいんだ…」
(まじか…)
恐ろしい事実に、類は心の中で光には絶対声を掛けないと固く誓いを立てる。
「んじゃ、行くぞ」
「は、はい!」
(…なんか想像していたよりもオシャレ)
建物をみるなり、類は不安そうにあたりを見渡す。喫茶店というのだからそこまで客足は多くないだろうと踏んでいた類であったが、店の前にはメニュー表を片手に列を成す女性客で賑わっている。
「…す、すごい数」
「すげーよな…、どうせコーヒーとシフォンケーキしかねぇのによ」
礼二が車から鞄を引っ張り出すと、少し皮肉そうに呟く。
「やけに女性の方が多いですね…」
「ああ…、ありゃ全部光目当てのファンだ」
「ふぁ、ファン?!」
礼二の言葉に類は思わず列に並ぶ客を二度見する。
「…んな驚いてやるなよ」
「いや、だって…、光さんのですよね?」
類は改めて光の事を思い出す。
どこか怖い雰囲気を纏い、話せばただの無愛想。とりわけ優しいわけでもなく、話し上手という訳でもない。
(まあ、顔はかっこいいけど…)
うーん、とどこか微妙な反応を見せる類に礼二は思わず吹き出す。
「まあ、お前の言い分もよくわかるぜ?あいつ顔がいいだけで他、最悪だもんな?」
「な?!」
そこまではいっていないが、どうやら礼二にも思うところはあるようだ。
「でも…、光さんって確かお店を経営してるだけですよね…?」
それなのに何故光の存在を知っているのだろう。
「ああ、それはよく店に顔出すからだよ…。よく窓際の一番いい席でよくわかんねぇ仕事してんだ」
「そ、そんなんであんなにファンができちゃったんですか?」
「だから、んな驚いてやるなって…。まぁ、あいつ顔はイケメンで有名だったからな…」
まるで昔から知っているような礼二の口ぶりに、類はキョトンとした表情を見せる。
「礼二さんって…、光さんとお知り合いだったんですか?」
「知り合いも何も、俺と光は小せぇ時からの顔なじみよ」
そういって欠伸をする礼二に、類は意外そうに何度も目をパチクリさせる。
「えっと、要するに幼馴染?」
「まー、ムカつくけどそーなるな」
「ムカつくんですか…?」
あまり仲が良くないのだろうか?
「ムカつくに決まってんだろ、毎回俺が惚れた女の子は光の事好きになっちまうし…、何かといえばみんな光絡みで俺に近づいてくるし、ようやく成人して離れられると思ったら今度は店番任せられるしな…」
まるで、何か諦めたようにそう話す礼二に類は苦笑する。
(嫌なら、店番はやらなくても良かったんじゃ…?)
類は内心そう思ったが、彼にも何かしらの断れない理由があったのだろうと考えなおし、変に聞き返すのはやめることにした。
「ま、とにかく、ここじゃあんまり光に近づかない方がいいぜ?」
「え…、なんでですか?」
礼二はちらりと行列を成す女性陣達を一瞥する。
「中には、ガチ恋の奴もいるからよ…。お陰で女の従業員は入れ替わりが激しいんだ…」
(まじか…)
恐ろしい事実に、類は心の中で光には絶対声を掛けないと固く誓いを立てる。
「んじゃ、行くぞ」
「は、はい!」