性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
 光が自宅マンションの地下駐車場へと車を停めた頃、時刻は既に夜の八時を回っていた。

 (流石に、遅くなったな…)

 光はバックミラーで髪型を整えると、急いで車から降り立つ。

 (怒るかな?、いや、あいつのことだ、多分ー)

 類について思考を巡らせていると、ふと嫌な気配を感じ取った。

 「…」

 光は、全神経を集中させてその気配に意識を集中させる。

 堂上が居る。

 確かに、この気配は堂上のものだ。しかし、問題はそこではない。

 (類の気配がない…)

 次の瞬間、光は何かに気づいたように目を見開くと術を使って、一気に自室の扉前へと移動した。

 慌てて、扉を開けて中に転がり込むと、そこにはだいふくを撫でながらソファに腰掛ける堂上の姿があった。

 「何してる…」

 光は、どこか怒りに満ちた表情で堂上に尋ねる。

 すると、堂上はニッコリといつもの笑みを浮かべながら猫を床へと優しく下ろした。

 「留守番だよ」

 「留守番だと?」

 堂上の説明に光はハッとした表情で類の部屋へと駆け上がる。しかし、案の定そこに類の姿はなかった。

 すると、背後から堂上の声が響いた。

 「彼女なら、今頃お茶会を楽しんでいると思うよ?」

 その言葉に光の顔から血の気が引いていく。

 「…誰と」

 「そんなの決まってるだろ、会長とー!?!?」

 突然、右頬を思い切り殴られたかと思えば、堂上の身体は盛大に後ろへと吹き飛ぶ。

 「ッ!…」

 しかし、光はそんなことお構いなしに堂上へと馬乗りになる。

 「おい…、今何っつった、親父が何だって?」

 明らかに常軌を逸した光の行動に、堂上は何とか抵抗すると、術を唱えて先程のリビングルームへと退避する。

 だが、光も同じように術を発動させると、堂上の背後へと回り込み、その大きな体を最も簡単に床へと捩じ伏せた。

 (クソ!!)

 焦った堂上は片方の手を使って印を結ぼうとするが、それは光の靴に部踏みつけられ妨害されてしまう。

 「おい、何で逃げんだよ」

 「ッ!!」

 堂上の指がミシミシと音を立てる。

 「なぁ?、俺はただ聞いてるだけだろ…」

 光はそう言うと、一気に堂上の指先へと体重をかける。

 「ぐあ!!」

 掌の指が一本づつ折れていく感覚に、堂上は堪らず声を上げる。
 
 「親父が何だって?、まさか、攫った訳じゃねぇよな?、なぁ、答えろよ」

 「命…令、だ。君が、住んでた旧邸宅に連れて来いと…ぐあぁぁああ!!」

 光はその言葉に容赦なく堂上の指をへし折った。

 「そうか、それはご苦労だったな」

 「わかったなら、さっさと離せ!!」

 堂上は悶絶した表情で光に命令する。

 「ああ、離してやるよ。【お前の指を全て破壊】してからな…」
 
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