性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
 「ッ…ヒック…」

 突然、本気で泣き始めてしまった類に光は驚いて顔を上げる。

 「…類?」

 「…ッ」

 鼻を啜りながら両手で顔を覆う類の姿に光は我に帰ると、慌てて類の身体を優しく抱きしめる。

 「え、ごめん…、そんな嫌だった?」

 突然のガチ泣きに光は焦りの表情を見せると、類の背中を優しくさする。

 「ヒック…、嫌じゃッ、無いけど…」

 「無いけど…?」

 「怖い…」

 「…」

 涙を流しながら、怖いと言った類の姿に光は酷く反省する。

 いつだって好きなものへの愛が強すぎる光は、いつもそれを握りつぶしてしまう悪い癖がある。

 「ごめん、そうだよな…、もうしないから、だから泣くなよ…」

 類の涙に参ってしまった光は、なんとか類を落ち着かせようと優しく彼女の額に口付ける。

 「ッ、ヒック…、んぐ…」

 しばらく泣きじゃくる類の身体を抱きしめながら、光は過去一番の反省をする。今まで付き合ってきた女性に喜ばれる事はあってもここまで本気で泣かれたの初めての事である。

 (俺は何してんだ…、あんなの嫌に決まってるだろ)

 光は悶々と頭の中でそう呟くと、精神世界で何度も自身の頬にパンチを喰らわす。

 そんな光を他所に、ようやく落ち着き始めたのか類の呼吸は徐々に穏やかなものに戻っていく。

 「す、すみません…、ちょっと、びっくりして…」

 類は遠慮気味に謝罪すると、光は優しく微笑んだ。

 「お前は謝る必要ない。悪いのは俺の方だから…、色々気持ちが先走った。本当に、ごめん」

 「いえ…、大丈夫です…」

 類は必死に謝る光の首に手を回すと優しく微笑む。

 「やっぱ、兄弟じゃないんですね…私たち」

 「…残念だった?」
 
 「いえ…ちょっと安心しました」

 意外な類の発言に光は呆気に取られる。

 「貴方が兄弟だとちょっと、色々思うところがあったので」

 「…何ソレ、詳しく聞かせてよ」

 「いえ、結構です…」

 少し恥ずかしそうに、しかし確実に喜ばしいその反応に光は自信を取り戻すと優しく類を抱きしめる。

 「お詫びになんか上手いお茶菓子でも頼もうか。ここの宿は部屋から直接頼むことが出来て便利なんだ」

 光はそう言うと、一冊のメニュー表を類へと手渡す。

 「…おいしそう」

 「だろ?、好きなの選んでいいよ。何にする?」

 光の問いかけに、類は懸命にメニュー表と睨めっこする。

 「えーと…、うーんと…」

 「なんなら、全部頼む?」

 光の提案に類は一瞬、迷いの表情をみせるが直ぐに首を左右に振る。

 「ひ、光さんは何にしますか?」

 「俺はなんでもいい。お前が食べたいの選びなよ」

 「じゃ、じゃあ…、あんみつ二つで」

 「あんみつ二つね、それが来たら今までのこと説明しないとな」

 もう、これ以上彼女に嘘つきだなんて言われたくはないー。
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