性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
 「ーーーと、ここまでが事の顛末。どう?一段と俺のこと怪しくなったでしょ?」

 光は目の前に置かれたあんみつを突きながら、自嘲気味にこれまでのことについて説明する。

 「ま、まぁ…怪しいか怪しくないかで言ったら怪しいですけど…」

 正直、かなり複雑だった二人の関係性に思わず本音が漏れる。

 「で、でも、光さんは私の命を助けてくれたんですよね?」

 「まぁ、そうなるのかな…一般的には」

 「だ、だったら私にとって光さんは恩師といったところでしょうか?」

 類は自分なりに二人の関係性を整理してみる。

 「は?ここまできて俺は恩師止まりなの?…あ、いや、ごめん。口が滑った」

 光はバツが悪そうに頭をかくと、再び大人しくあんみつを頬張り始める。

 「…では、恋人?」

 「何で疑問系?」

 光は子供の様に不満気な表情を見せる。

 「…」

 「…あー、ごめん。俺また嫌味言った?」

 光の不安そうな表情に類は思い切り顔を横に振る。

 「ち、違うんです!、その、なんて言うか…、私なんかでいいのかな…って思ってしまって」

 「お前って、いつも自己卑下ばっかなのな…、具体的にどう言うところが私なんかって思うの?」

 光は机に肘立てると、可能な限り優しく理由を尋ねる。

 「私は昔から…、人に嫌われないようにと思って生きてきました。きっかけは些細な事だったと思うんです。気弱だった私は、よく気の強い子に苛められてて…妹ができてからは親に迷惑をかけないようにと常に仮面を貼り付けて生きてきました」

 光はその言葉に静かに耳を傾ける。

 「そしたら大人になって、ふと自分の気持ちがわからなくなってしまったんです…。私はどうしたいのか、私は何が好きで何が嫌いなのか、嬉しいのか、悲しいのか、この感情は本当に心から湧いて来るものなのか…だから、何をするにも自信が無いんです」

 類は、何故か言葉に詰まって顔を下げる。今感じている感情も本当は偽物なのでは無いかと思うと、どうしようもなく発狂したい気分になる。

 「だから…、私ー」

 「話遮って悪いけどさ、お前はもう充分お前だよ。お前は自分の感情でちゃんと動いてるし、喜怒哀楽もちゃんとある。お前がお前じゃない感じがするのは、自己卑下する自分を否定するからだ」

 類は光の発言に、顔を上げる。

 「それって…、どういうー」

 「そうやって自己卑下する事を心のどこかで悪い事だと決めつけてない?でもそれってお前の一部だし、その考えもお前の一部なんだよ。本当はそう言う自分を認めてほしいのに、自分で否定してしまう。だから、わからなくなる。まぁ、俺も時々やるから人のこと言えた立場じゃ無いけどね」
 
 「…光さんも、やるんですか?」

 「もちろん。人間なら誰にだってある感情さ」

 「…」

 「でも、安心しなよ。もし、この先お前が自己卑下したとしても、俺が全部認めてやる」

 「光さんが?」

 「うん、俺じゃ不安?」

 「い、いえ、別にそう言う訳では…」

 「じゃあさ、俺を信じてよ。もうお前を言霊で支配しようとはしないから、囮の仕事も辞めていいから、だから、ありのままの俺をー」


 信じてよ。



 
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