性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
 「ハハハ!!んだよそれ!!!」

 無事初出勤を終えた類は、再び礼二の車に揺られ帰路についていた。ちなみに、スマホがない話をしてから礼二は何かツボにハマったのか、先ほどからずっと笑い転げている。

 「し、仕方ないじゃないですか!」

 まともに物を買ってもらえていたのは類が小さい頃の話である。小学校に進学するころには下の子が産まれ、類の物など一つも買ってはもらえなかった。

 「悪りぃ、悪りぃ、でも良かったじゃん。お陰であの光様とデート出来るんだからよ」

 「デートじゃなくてただの買い出しです!!」

 どこかからかうように、茶化してくる礼二に類は顔を真っ赤にして反論する。

 「でも大型ショッピングセンターに買い出しに行くんだろ?」

 「大型ショッピングセンター内にある携帯ショップに行くだけです」

 怒った様子でそう答える類に礼二は苦笑する。

 「でも、あいつが買い出しにわざわざ付き合ってくれるなんて中々レアだぜ?」

 礼二はハンドルを切りながら答える。

 「レア…ですか…」

 「おう。特にお前みたいな女と出かけるの一番嫌がるしな」

 礼二の発言に、類は顔を青くする。

 「そ、それって、私大丈夫なんですかね…」

 「さぁ?大丈夫なんじゃね?嫌なら嫌っていうだろ、あいつ」

 なんとも適当な返答に類は不安になる。このままでは、再び覚を召喚してしまいかねない。

 「光さんは、女性の方が苦手なんですか?」

 ふと、疑問に思ったことを聞いてみる。

 「いや?特に苦手ってわけでもなさそうだぜ?学生時代は普通に彼女いたしな。ただ前に聞いた話から察するに、メンタルの弱い女がめんどくせーんだと」

 何だか自分の事を言われているような気がして、類は静かに傷つく。

 「まあ、あいつの仕事柄、色々相談持ちかけてくる奴多いからな…。中にはあいつの気を引こうとして、メンヘラになる女も何人かいるくらいだしな…」

 礼二の恐ろしい発言に類は生唾を飲み込む。

 「要するに、あいつはメンヘラ製造機なわけよ。お前も気ぃ付けろよ」

 「わ、私は別にメンヘラじゃ!」

 反論しようとする類に礼二は「んな事わぁってるよ」と呟く。


 そして…


 「俺が言ってるのは、これから、溺れねぇように注意しろって言ってんだ」


 この時放った礼二の言葉は、やけに静かで重かった。
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