性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
光が自宅へと着いたのは朝の六時丁度であった。ガレージに車を駐車し、疲れた身体を引きずってエントラスルームへと向かう。
(さすがに、起きてるよな…)
光は類に伝える言い訳を考えながらカードキーを取り出す。
体調不良という理由では流石に不自然すぎる、かといって鴉天狗に行っていたと言うには無理がある。
光は一人悶々と言い訳を考えながら、自動ドアを潜り抜けると、ふとエントランスに置かれたソファで蹲る類の姿が視界に映った。
「何やってんだ、あいつ…」
突然の事に驚いた光は、足早に類に近づくとその鼻下に指を置いて生きているかを確認する。
(寝てるのか…?)
一体何故こんな所で寝ているのか気になった光はそっと類の肩を揺らしてみる。
「んっ…、んん…」
「おい、起きろ」
「…んー」
「おい!」
何度目かの呼びかけに類はゆっくりと瞼を開くと、視界に映った光の顔をまじまじと見つめる。
そしてー、
「ひ、光さん!!!」
ものすごい声量で光の名を呼ぶとそのまま恥ずかしげもなく光の身体に抱きついた。
「光さん!、光さんだ!!」
突然の事に光は理解が追いつかない、しかし、類は光に抱きつきながら嬉しそうに光の名前を何度も呼び続ける。
「ちょ、ちょっと…何?苦しいんだけど」
やっとのことで出た光の言葉に類は慌てて体を離す。
「す、すみません…嬉しくてつい…」
「嬉しいって…、まさか俺が帰ってきて嬉しいって事?」
光は少し鬱陶し気に頭をかく。すると、類は目を輝かせながら思い切り頷いた。
「は、はい!そうです!」
まるで今か今かとご主人の帰りを待っていた飼い犬の様な素振りに光は眉根を寄せる。
「…悪いけど、そういうのいいから」
明らかに不機嫌そうな表情をした光に類の顔から笑顔が消える。
「俺とお前はビジネスパートナー、んな俺に尻尾振っても何もでねぇよ」
「ち、違います…!私は唯…」
何だか出会った頃の雰囲気に戻ってしまった光の態度に類は少し傷つく。家を出る前は比較的優しく接してくれていたが。どうやらそれは光の気まぐれであったようだ。
「何?、違うの?」
高圧的に質問を返してくる光に、類は戸惑う。
「その、ちょっと…心配だっただけで…」
類はそういうと顔を伏せる。何故だか物凄いプレッシャーを充てられているような感覚に光の顔を直視することができない。
「心配?俺が?」
光は苦笑すると髪をかき上げる。
「お前さ、馬鹿じゃないの?」
「…」
「言ったよな?俺は陰陽師だって。それに服を取りに行くから寝てろとも言ったはずだけど?」
「す、すみません…。でも…、本当に心配だったんです!もしかしたら何かあったのかもしれない…、何か困っているのかもしれないって…だ、だから…、全然、眠くなくて…、その…、何かあったらどうしよう…って…」
類は一気にまくし立てると、意を決したように勢いよく顔を上げる。
「よ、要するに私もビジネスパートナーの貴方に死なれては困るんです!」
エントランス中に類の言葉が響き渡る。時刻は六時半を回っており、通勤に向かうサラリーマン達が不思議そうな顔をしながら二人の横を通り過ぎていく。
「…」
「…」
どうせ、また泣かれるのだろうと身構えていた光はどこか呆気にとられた様子で類の事を見つめる。
「だ、だから!、手間かけさせないで下さい!私なんか、この周りをうろうろしすぎて二回も同じお巡りさんに職質を受けたんですから…!」
何とか、沈黙を破ろうと類は必死に説明をする。確かによく見て見ると髪は乱れ、顔には砂埃の様な物が付着している。
(一体、どこ探したんだよ…)
光は内心そんなことを考えたが、不思議と先ほどまでの怒りは消えていた。
「ちょ、聞いてます?!わ、私、これでも怒ってるんですよ?!」
いつの間にか自分が叱られる側になっていたことに、光は参ったといった様子で両手を上げて見せる。
「わかった、わかった…。確かに今回は俺が悪かった」
素直に謝罪の言葉を述べた光に、類は少し意外そうな表情を見せる。
「んだよ…」
「い、いえ…、別に…」
まさか素直に謝罪されると思っていなかった類は途端に何と言っていいのかわからなくなる。
「そんじゃあ、謝罪も済んだ事だし上あがろうぜ。あとお前もう一回風呂入ってこい」
「え…、またですか…」
「当たり前だ。んな汚ねぇ姿で買い物に連れていけるかよ…」
光の言葉に類は「誰のせいだと思ってるんですか…」と呟くと、ようやく帰宅した家主と共にエレベーターへと飛び乗った。
(さすがに、起きてるよな…)
光は類に伝える言い訳を考えながらカードキーを取り出す。
体調不良という理由では流石に不自然すぎる、かといって鴉天狗に行っていたと言うには無理がある。
光は一人悶々と言い訳を考えながら、自動ドアを潜り抜けると、ふとエントランスに置かれたソファで蹲る類の姿が視界に映った。
「何やってんだ、あいつ…」
突然の事に驚いた光は、足早に類に近づくとその鼻下に指を置いて生きているかを確認する。
(寝てるのか…?)
一体何故こんな所で寝ているのか気になった光はそっと類の肩を揺らしてみる。
「んっ…、んん…」
「おい、起きろ」
「…んー」
「おい!」
何度目かの呼びかけに類はゆっくりと瞼を開くと、視界に映った光の顔をまじまじと見つめる。
そしてー、
「ひ、光さん!!!」
ものすごい声量で光の名を呼ぶとそのまま恥ずかしげもなく光の身体に抱きついた。
「光さん!、光さんだ!!」
突然の事に光は理解が追いつかない、しかし、類は光に抱きつきながら嬉しそうに光の名前を何度も呼び続ける。
「ちょ、ちょっと…何?苦しいんだけど」
やっとのことで出た光の言葉に類は慌てて体を離す。
「す、すみません…嬉しくてつい…」
「嬉しいって…、まさか俺が帰ってきて嬉しいって事?」
光は少し鬱陶し気に頭をかく。すると、類は目を輝かせながら思い切り頷いた。
「は、はい!そうです!」
まるで今か今かとご主人の帰りを待っていた飼い犬の様な素振りに光は眉根を寄せる。
「…悪いけど、そういうのいいから」
明らかに不機嫌そうな表情をした光に類の顔から笑顔が消える。
「俺とお前はビジネスパートナー、んな俺に尻尾振っても何もでねぇよ」
「ち、違います…!私は唯…」
何だか出会った頃の雰囲気に戻ってしまった光の態度に類は少し傷つく。家を出る前は比較的優しく接してくれていたが。どうやらそれは光の気まぐれであったようだ。
「何?、違うの?」
高圧的に質問を返してくる光に、類は戸惑う。
「その、ちょっと…心配だっただけで…」
類はそういうと顔を伏せる。何故だか物凄いプレッシャーを充てられているような感覚に光の顔を直視することができない。
「心配?俺が?」
光は苦笑すると髪をかき上げる。
「お前さ、馬鹿じゃないの?」
「…」
「言ったよな?俺は陰陽師だって。それに服を取りに行くから寝てろとも言ったはずだけど?」
「す、すみません…。でも…、本当に心配だったんです!もしかしたら何かあったのかもしれない…、何か困っているのかもしれないって…だ、だから…、全然、眠くなくて…、その…、何かあったらどうしよう…って…」
類は一気にまくし立てると、意を決したように勢いよく顔を上げる。
「よ、要するに私もビジネスパートナーの貴方に死なれては困るんです!」
エントランス中に類の言葉が響き渡る。時刻は六時半を回っており、通勤に向かうサラリーマン達が不思議そうな顔をしながら二人の横を通り過ぎていく。
「…」
「…」
どうせ、また泣かれるのだろうと身構えていた光はどこか呆気にとられた様子で類の事を見つめる。
「だ、だから!、手間かけさせないで下さい!私なんか、この周りをうろうろしすぎて二回も同じお巡りさんに職質を受けたんですから…!」
何とか、沈黙を破ろうと類は必死に説明をする。確かによく見て見ると髪は乱れ、顔には砂埃の様な物が付着している。
(一体、どこ探したんだよ…)
光は内心そんなことを考えたが、不思議と先ほどまでの怒りは消えていた。
「ちょ、聞いてます?!わ、私、これでも怒ってるんですよ?!」
いつの間にか自分が叱られる側になっていたことに、光は参ったといった様子で両手を上げて見せる。
「わかった、わかった…。確かに今回は俺が悪かった」
素直に謝罪の言葉を述べた光に、類は少し意外そうな表情を見せる。
「んだよ…」
「い、いえ…、別に…」
まさか素直に謝罪されると思っていなかった類は途端に何と言っていいのかわからなくなる。
「そんじゃあ、謝罪も済んだ事だし上あがろうぜ。あとお前もう一回風呂入ってこい」
「え…、またですか…」
「当たり前だ。んな汚ねぇ姿で買い物に連れていけるかよ…」
光の言葉に類は「誰のせいだと思ってるんですか…」と呟くと、ようやく帰宅した家主と共にエレベーターへと飛び乗った。