性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
車が依頼主の屋敷へと着いたのは鴉天狗を出てから一時間後のことであった。
光は近くの駐車場へと車を停めると、類に声をかけた。
「依頼人とのやり取りは基本的に俺がやる。一応助手って立ち位置で依頼人には紹介するけど、やる事に変わりはないから安心して」
「は、はい!」
「それから、余計な事は口走るな」
「余計な事?」
類は首を傾げる。
「例えば、絶対に大丈夫ですとか、絶対によくなりますとか…、励ましの言葉は基本NG」
「え、どうしてですか?」
類は意味がわからないといった様子で、光に尋ねる。
「昔あったんだよ…、励ますだけ励まして手遅れになった件が…」
「昔…ですか…」
「とにかく、お前は黙ってろ。わかった?」
これ以上話を深掘りされたく無いのか、光は強制的に話を切ると、車を降りた。類もそれに合わせて車を降りる。
到着したお屋敷はそれは大きな屋敷で、今では名家でしか見ることのできない大きな門が構えられていた。
光は門に取り付けられた小さなインターホンを慣れた手つきで押すと、古い屋敷には不釣り合いな甲高い女の「はい」という声が響く。
「夜分遅くにすみません。私陰陽師協会から来た土御門と申します。本日、ご主人様とのお打ち合わせで参りました」
ちなみにここでの打ち合わせとは、立前のような物で実際は憑き物落としのことを指す。
「はい。少々お待ちください」
女はそう答えると風の様な速さで門の横にある小さな勝手口からひょっこりと姿を現した。
「どうも、こんな夜分遅くにお呼び建てしてしまい申し訳ございません」
「いえ、こちらこそ、お時間をとって頂きありがとうございます」
いつもの光にしては丁寧な口ぶりに、類は少し驚く。
女は綺麗に結い上げた髪を押さえながら小さくお辞儀をすると、二人を屋敷の中へと招き入れた。
屋敷の中は想像通りの内装で、多くの部屋と立派な中庭、そして長い渡り廊下で構成されていた。
(なんか…、社が小さく感じる)
類たちが住んでいる社も一般的には広い分類に入るが、こうやって見ると酷くちっぽけに見えてしまう。
しばらく長い廊下を三人で歩いていると、ふと視界の隅に何かが通りすぎる。
(子供…?)
うまく捉えられなかったが、類は何故かそれが小さな子供の様に見えた。そして、そう思ったのも束の間耳元で大きな鈴の音が鳴る。
突然の大きな音に類は驚いて耳を塞ぐ。そして、次の瞬間ー。
「ここには何もありゃせんよー。」
凍りつくような何モノかの掌が類の両方を捉えた。
光は近くの駐車場へと車を停めると、類に声をかけた。
「依頼人とのやり取りは基本的に俺がやる。一応助手って立ち位置で依頼人には紹介するけど、やる事に変わりはないから安心して」
「は、はい!」
「それから、余計な事は口走るな」
「余計な事?」
類は首を傾げる。
「例えば、絶対に大丈夫ですとか、絶対によくなりますとか…、励ましの言葉は基本NG」
「え、どうしてですか?」
類は意味がわからないといった様子で、光に尋ねる。
「昔あったんだよ…、励ますだけ励まして手遅れになった件が…」
「昔…ですか…」
「とにかく、お前は黙ってろ。わかった?」
これ以上話を深掘りされたく無いのか、光は強制的に話を切ると、車を降りた。類もそれに合わせて車を降りる。
到着したお屋敷はそれは大きな屋敷で、今では名家でしか見ることのできない大きな門が構えられていた。
光は門に取り付けられた小さなインターホンを慣れた手つきで押すと、古い屋敷には不釣り合いな甲高い女の「はい」という声が響く。
「夜分遅くにすみません。私陰陽師協会から来た土御門と申します。本日、ご主人様とのお打ち合わせで参りました」
ちなみにここでの打ち合わせとは、立前のような物で実際は憑き物落としのことを指す。
「はい。少々お待ちください」
女はそう答えると風の様な速さで門の横にある小さな勝手口からひょっこりと姿を現した。
「どうも、こんな夜分遅くにお呼び建てしてしまい申し訳ございません」
「いえ、こちらこそ、お時間をとって頂きありがとうございます」
いつもの光にしては丁寧な口ぶりに、類は少し驚く。
女は綺麗に結い上げた髪を押さえながら小さくお辞儀をすると、二人を屋敷の中へと招き入れた。
屋敷の中は想像通りの内装で、多くの部屋と立派な中庭、そして長い渡り廊下で構成されていた。
(なんか…、社が小さく感じる)
類たちが住んでいる社も一般的には広い分類に入るが、こうやって見ると酷くちっぽけに見えてしまう。
しばらく長い廊下を三人で歩いていると、ふと視界の隅に何かが通りすぎる。
(子供…?)
うまく捉えられなかったが、類は何故かそれが小さな子供の様に見えた。そして、そう思ったのも束の間耳元で大きな鈴の音が鳴る。
突然の大きな音に類は驚いて耳を塞ぐ。そして、次の瞬間ー。
「ここには何もありゃせんよー。」
凍りつくような何モノかの掌が類の両方を捉えた。