性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
水中の奥深くから、酸素を求めて這い上がる様に類は勢いよくその場に身体を起こした。身体中からは大量の汗が吹き出し、身にまとう服が体にへばり付いてきて不快だ。
「だ、大丈夫?」
ふと声のする方をみると、夢で見た派手目の女が少し驚いた様子でこちらの様子を伺っている。
「あ、貴方は…」
驚いた様子の類に、女は少し微笑むと「あーしは藤波《ふじなみ》エリカ」と言って右手を差し出した。
夢の中とは少し印象の違うエリカに類はキョトンとした表情でその右手を見つめる。
「あー、あんた本当に大丈夫…?」
エリカは困ったように右手を引っ込めると、心配そうに類の顔を覗き込む。
「あ、あの、私…」
類は混乱した様子で辺りを見渡す。調度品は全て夢で見た物と同じである。
明らかに混乱した様子の類に、エリカは一つため息をつくと、その場に立ち上がった。
「ま、混乱するのもしゃーなしか。待ってて、今ヒカルん呼んでくるから」
「ヒ、ヒカルん?!」
悪夢の中の光の姿を思い出した類は素っ頓狂な声を張り上げる。そんな、類の様子にエリカはおかしそうにクスクスと笑う。
「そ、ヒカルん。あんたをここに連れてきた張本人」
エリカはそういうと、「ちょっと待ってなよ」と一言残して部屋の外へと出て行った。
一人残された類は再び室内を見渡す。
(ここ、現実よね…?)
先程見た変な悪夢のせいで、いまいち状況が掴めない類はそわそわと何度も辺りを見渡す。
夢と全く変わりのない部屋に、類は恐る恐るその場に立ち上がる。そこで、ふと自分が着ている服が夢の中のものとは違う事に気付かされる。
(あれ、浴衣じゃない…)
類はまじまじと自身の服を見つめる。あのビルから飛び降りようとしていた時と変わらぬその服装に類は何故かほっと胸を撫で下ろした。
どうやら、ここは現実であると認識した類はその場に力なく座り込むと、先程エリカが言っていた言葉を思い出す。
(ヒカルんって確かあの人の事だよね…)
類は昨日出会った男の顔を思い出す。
(黒い服を着ていて…それから…)
「おい」
一人悶々と男の姿を思い出そうとしていると、不意に背後から声をかけられた。
驚いた類は慌てて声のする方へと振り返る。
すると、そこには黒いマスク姿の男が襖に寄りかかるようにして立っていた。
類は男の顔をまじまじと見つめる。
歳は二十代後半くらいだろうか?、猫の様に美しいアーモンド形の瞳が鋭くこちらを見据えている。
(怖い…)
なんとなくそう感じた類は、どこか不安そうに男を見つめる。すると、男は再び「おい」と類に声をかけた。
類はその問いかけに慌てて「は…はい」と返事を返す。
「…調子は?」
「調子、ですか…」
「エリカの話じゃ随分とうなされていた様だな」
男はそう言うと、腕組みを解いて類の側へと近づく。そして、何の躊躇もなくその額へと触れようとした。しかし、類は、咄嗟に身を後ろへと引く。
「…人生リタイアしようとしてた割には警戒すんだな」
「…」
男の言葉に類は黙り込む。すると、男は一つため息をついて類に体温計を放り投げた。
「熱がないか確認して」
男の意図をようやく理解した類はコクリと頷くと、素直に体温計を脇へと挟みこむ。
「どこか痛むところは?」
「な、無いです…」
「そう」
男はそういうと、自らも床へと胡座を描く。類はどこか警戒した様子で、男の顔を見つめる。
「んだよ」
視線に気づいた男は眉をしかめて類を睨む。
「いえ、その…」
聞きたいことは山の様に沢山あるが、何故か上手く言葉に出来ない。
「安心しろ、ここは安全だ」
「…え?」
類の心中を察したのか、男は意外にも優しい言葉を投げかける。類はそんな男の態度に少し驚くと、先ほど脇に差し込んだ体温計へと視線を逸らした。
「36度です…」
ピピピっと計測音が鳴ると類は表示画面を確認し、体温計を男へと返した。
「熱はねぇな、何んか食えそう?」
「え…!」
「んだよ…さっきから」
夢と同じ展開に、類は一気に警戒心を強める。
「わ、私、家族になんてなりませんよ?!」
「は?」
「あ、貴方の言葉は聞きません!」
「…んだよ、突然」
「わ、私、知ってるんですから!貴方が妙な力で人を操る事が出来るって!」
類は夢で経験した事と共に、現実世界で身体の動きを止められた事を思い出す。
すると、何を思ったのか男は類の身体を布団へと押し倒した。そして、その綺麗な指でマスクを下へと下ろすとハッキリとした口調で
「【落ち着け】」
と言い放った。
「だ、大丈夫?」
ふと声のする方をみると、夢で見た派手目の女が少し驚いた様子でこちらの様子を伺っている。
「あ、貴方は…」
驚いた様子の類に、女は少し微笑むと「あーしは藤波《ふじなみ》エリカ」と言って右手を差し出した。
夢の中とは少し印象の違うエリカに類はキョトンとした表情でその右手を見つめる。
「あー、あんた本当に大丈夫…?」
エリカは困ったように右手を引っ込めると、心配そうに類の顔を覗き込む。
「あ、あの、私…」
類は混乱した様子で辺りを見渡す。調度品は全て夢で見た物と同じである。
明らかに混乱した様子の類に、エリカは一つため息をつくと、その場に立ち上がった。
「ま、混乱するのもしゃーなしか。待ってて、今ヒカルん呼んでくるから」
「ヒ、ヒカルん?!」
悪夢の中の光の姿を思い出した類は素っ頓狂な声を張り上げる。そんな、類の様子にエリカはおかしそうにクスクスと笑う。
「そ、ヒカルん。あんたをここに連れてきた張本人」
エリカはそういうと、「ちょっと待ってなよ」と一言残して部屋の外へと出て行った。
一人残された類は再び室内を見渡す。
(ここ、現実よね…?)
先程見た変な悪夢のせいで、いまいち状況が掴めない類はそわそわと何度も辺りを見渡す。
夢と全く変わりのない部屋に、類は恐る恐るその場に立ち上がる。そこで、ふと自分が着ている服が夢の中のものとは違う事に気付かされる。
(あれ、浴衣じゃない…)
類はまじまじと自身の服を見つめる。あのビルから飛び降りようとしていた時と変わらぬその服装に類は何故かほっと胸を撫で下ろした。
どうやら、ここは現実であると認識した類はその場に力なく座り込むと、先程エリカが言っていた言葉を思い出す。
(ヒカルんって確かあの人の事だよね…)
類は昨日出会った男の顔を思い出す。
(黒い服を着ていて…それから…)
「おい」
一人悶々と男の姿を思い出そうとしていると、不意に背後から声をかけられた。
驚いた類は慌てて声のする方へと振り返る。
すると、そこには黒いマスク姿の男が襖に寄りかかるようにして立っていた。
類は男の顔をまじまじと見つめる。
歳は二十代後半くらいだろうか?、猫の様に美しいアーモンド形の瞳が鋭くこちらを見据えている。
(怖い…)
なんとなくそう感じた類は、どこか不安そうに男を見つめる。すると、男は再び「おい」と類に声をかけた。
類はその問いかけに慌てて「は…はい」と返事を返す。
「…調子は?」
「調子、ですか…」
「エリカの話じゃ随分とうなされていた様だな」
男はそう言うと、腕組みを解いて類の側へと近づく。そして、何の躊躇もなくその額へと触れようとした。しかし、類は、咄嗟に身を後ろへと引く。
「…人生リタイアしようとしてた割には警戒すんだな」
「…」
男の言葉に類は黙り込む。すると、男は一つため息をついて類に体温計を放り投げた。
「熱がないか確認して」
男の意図をようやく理解した類はコクリと頷くと、素直に体温計を脇へと挟みこむ。
「どこか痛むところは?」
「な、無いです…」
「そう」
男はそういうと、自らも床へと胡座を描く。類はどこか警戒した様子で、男の顔を見つめる。
「んだよ」
視線に気づいた男は眉をしかめて類を睨む。
「いえ、その…」
聞きたいことは山の様に沢山あるが、何故か上手く言葉に出来ない。
「安心しろ、ここは安全だ」
「…え?」
類の心中を察したのか、男は意外にも優しい言葉を投げかける。類はそんな男の態度に少し驚くと、先ほど脇に差し込んだ体温計へと視線を逸らした。
「36度です…」
ピピピっと計測音が鳴ると類は表示画面を確認し、体温計を男へと返した。
「熱はねぇな、何んか食えそう?」
「え…!」
「んだよ…さっきから」
夢と同じ展開に、類は一気に警戒心を強める。
「わ、私、家族になんてなりませんよ?!」
「は?」
「あ、貴方の言葉は聞きません!」
「…んだよ、突然」
「わ、私、知ってるんですから!貴方が妙な力で人を操る事が出来るって!」
類は夢で経験した事と共に、現実世界で身体の動きを止められた事を思い出す。
すると、何を思ったのか男は類の身体を布団へと押し倒した。そして、その綺麗な指でマスクを下へと下ろすとハッキリとした口調で
「【落ち着け】」
と言い放った。