性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
二ノ宮はようやく現れた二人組に視線を移す。
(相変わらず、黒一色やな…)
よく知る男の登場に、二ノ宮は何とか冷静を装う。どうにも、この男とはいい思い出が一つも見当たらない。
「やあ、随分と遅かったね」
「俺に石を投げたのはお前か?」
「あ、バレた?まだ寝てるんじゃ無いかと思って…」
堂上は悪気もなくそう答えると、光の後ろに身を隠している類に微笑みかける。
「南雲さん、来てくれて嬉しいよ。今日はよろしくね」
堂上の言葉に類は小さく頭を下げるが、その姿は光によって遮られてしまった。
(おや、珍しい…)
今までにも光の婚約者とは何度か顔を突き合わせてきた堂上であるが、何故かこの南雲類だけは、やけに入れ込んでいる節が見られる。
(この子が壊れたら、君はどうするんだろうね…)
ぼんやりとそんなことを考えていると、光が不機嫌そうに口を開いた。
「堂上、悪いが今日は俺も一緒に同行させてもらう」
「同行?君が…?彼女に?」
光の言葉に堂上はその瞳を開眼させる。
「そうだ。今回の仕事…、俺は囮側に就く」
光の意外な申し出に堂上は目を細める。
「別に構わないけど…、随分とひいきにしてるんだね?」
今までの婚約者達はここまで過保護ではなかった。寧ろどこか一線を引いていたようにも見えていたが、どうやら彼女だけは違うようである。
「悪い?」
堂上のどこか詮索するような問いかけに、光は挑発的に反論する。
「ふーん。まぁ僕は構わないよ…。僕はね…」
堂上はそう呟くとチラリと二ノ宮の方を盗み見る。すると、先ほどまで眠そうにしていた二ノ宮は何か察した様子で二人の傍にやってきた。
「何を、コソコソしてんねん」
「いやぁ、光も一緒に行きたいって言うもんだから…」
「はぁ?!、今更何言うてんねん!」
堂上の言葉に二ノ宮は声を荒げると、光は分かりやすく殺気を表に出す。
「…な、なんや」
「いや?別に…、ただ随分と面倒な奴が居るなと思って…」
光の冷徹なもの言いに、二ノ宮は顔を顰める。
「誰が面倒やて?」
「お前のことだよ。三ノ宮…」
「なっ!…僕は二ノ宮や!」
「あれ、そうだっけ?」
「ええ加減にせぇよ!…お前」
「苦手なんだよ…、お前みたいな小物の名前覚えんの…」
とてもナチュラルに二ノ宮を煽った光は酷く面倒そうに頭を掻く。二ノ宮はというと顔を真っ赤にさせて今にも飛び掛かりそうな勢いで光の事を睨みつけている。
「まぁ、まぁ。いいじゃないか。南雲さんは光の婚約者な訳だし…。それとも何かな?光が一緒だと何か問題でも?」
堂上は二人の間に割って入ると、冷たい笑みを張り付けながら、二ノ宮に尋ねる。
「問題だらけやろ?!それに、こいつが来たら報酬の取り分が減るやろうが!!」
「まぁ、それはそうだけど…」
堂上の言葉に二ノ宮は不満そうに顔を顰めると、光の後ろで隠れる様に様子を伺っている類を指さした。
「おい女。お前だけ来い。それが要らんのやったら僕は帰んで!」
今にも飛び掛かろうとする勢いの二ノ宮に、類は思わず光の服の裾を掴む。それに気づいた光は少し困った表情でため息を吐いた。
「ったく…、分かったよ…。取り分は今回お前らにくれてやる。そん変わり俺を同行させろ」
光の言葉に堂上と二ノ宮の動きが止まる。
「それ…、本気かい?」
珍しく報酬を諦めると宣言した光に、堂上は素直に驚く。
「本気だ。本気。んだよ…、そんな珍しいか?」
二人そろって意外そうな表情を見せる堂上と二ノ宮に、今度は光が顔を顰める。
「信用でけへんな。お前がこないな大きな仕事を無償で手伝うなんて、明日は大嵐でも来るんちゃうか…?」
二ノ宮が気味悪そうに、両腕をさすると少し冷静になったのかアホらしいといった様子で光達から離れていく。
「確かに、僕も君が無償でこの大きな仕事を手伝うとは思えない…是非ともその理由を…」
堂上はそこまで言いかけると、ふと光の背後に佇む類の姿を一瞥する。
「と…、思ったけど…、まぁ君がそれでいいっていうなら別にいいか」
まるで何かを察したのか堂上は、それ以上の詮索を辞めると無理やりに話をまとめ始めた。
「はあ?!ほんまに言うてんの?!無報酬やで?!絶対なんかあるって!!」
慌てて振り返った二ノ宮に堂上は苦笑する。
「そんなに焦らなくても、光は昔みたいに、お前を脅したりはしないよ。大人なんだし…、ねぇ?そうだろ?」
(昔みたいに?)
どこか意味深な堂上の発言に類は首をかしげる。
「あぁ、もちろん。三ノ宮は安心して俺から報酬を踏んだ来るといい…」
どこか平穏ではない言葉並びに、二ノ宮の背筋が冷たくなる。
「じゃあ、話もまとまったところだし…、そろそろ始めようか?」
その場の雰囲気を変える様に、堂上はパチンと両手を合わせた。
(相変わらず、黒一色やな…)
よく知る男の登場に、二ノ宮は何とか冷静を装う。どうにも、この男とはいい思い出が一つも見当たらない。
「やあ、随分と遅かったね」
「俺に石を投げたのはお前か?」
「あ、バレた?まだ寝てるんじゃ無いかと思って…」
堂上は悪気もなくそう答えると、光の後ろに身を隠している類に微笑みかける。
「南雲さん、来てくれて嬉しいよ。今日はよろしくね」
堂上の言葉に類は小さく頭を下げるが、その姿は光によって遮られてしまった。
(おや、珍しい…)
今までにも光の婚約者とは何度か顔を突き合わせてきた堂上であるが、何故かこの南雲類だけは、やけに入れ込んでいる節が見られる。
(この子が壊れたら、君はどうするんだろうね…)
ぼんやりとそんなことを考えていると、光が不機嫌そうに口を開いた。
「堂上、悪いが今日は俺も一緒に同行させてもらう」
「同行?君が…?彼女に?」
光の言葉に堂上はその瞳を開眼させる。
「そうだ。今回の仕事…、俺は囮側に就く」
光の意外な申し出に堂上は目を細める。
「別に構わないけど…、随分とひいきにしてるんだね?」
今までの婚約者達はここまで過保護ではなかった。寧ろどこか一線を引いていたようにも見えていたが、どうやら彼女だけは違うようである。
「悪い?」
堂上のどこか詮索するような問いかけに、光は挑発的に反論する。
「ふーん。まぁ僕は構わないよ…。僕はね…」
堂上はそう呟くとチラリと二ノ宮の方を盗み見る。すると、先ほどまで眠そうにしていた二ノ宮は何か察した様子で二人の傍にやってきた。
「何を、コソコソしてんねん」
「いやぁ、光も一緒に行きたいって言うもんだから…」
「はぁ?!、今更何言うてんねん!」
堂上の言葉に二ノ宮は声を荒げると、光は分かりやすく殺気を表に出す。
「…な、なんや」
「いや?別に…、ただ随分と面倒な奴が居るなと思って…」
光の冷徹なもの言いに、二ノ宮は顔を顰める。
「誰が面倒やて?」
「お前のことだよ。三ノ宮…」
「なっ!…僕は二ノ宮や!」
「あれ、そうだっけ?」
「ええ加減にせぇよ!…お前」
「苦手なんだよ…、お前みたいな小物の名前覚えんの…」
とてもナチュラルに二ノ宮を煽った光は酷く面倒そうに頭を掻く。二ノ宮はというと顔を真っ赤にさせて今にも飛び掛かりそうな勢いで光の事を睨みつけている。
「まぁ、まぁ。いいじゃないか。南雲さんは光の婚約者な訳だし…。それとも何かな?光が一緒だと何か問題でも?」
堂上は二人の間に割って入ると、冷たい笑みを張り付けながら、二ノ宮に尋ねる。
「問題だらけやろ?!それに、こいつが来たら報酬の取り分が減るやろうが!!」
「まぁ、それはそうだけど…」
堂上の言葉に二ノ宮は不満そうに顔を顰めると、光の後ろで隠れる様に様子を伺っている類を指さした。
「おい女。お前だけ来い。それが要らんのやったら僕は帰んで!」
今にも飛び掛かろうとする勢いの二ノ宮に、類は思わず光の服の裾を掴む。それに気づいた光は少し困った表情でため息を吐いた。
「ったく…、分かったよ…。取り分は今回お前らにくれてやる。そん変わり俺を同行させろ」
光の言葉に堂上と二ノ宮の動きが止まる。
「それ…、本気かい?」
珍しく報酬を諦めると宣言した光に、堂上は素直に驚く。
「本気だ。本気。んだよ…、そんな珍しいか?」
二人そろって意外そうな表情を見せる堂上と二ノ宮に、今度は光が顔を顰める。
「信用でけへんな。お前がこないな大きな仕事を無償で手伝うなんて、明日は大嵐でも来るんちゃうか…?」
二ノ宮が気味悪そうに、両腕をさすると少し冷静になったのかアホらしいといった様子で光達から離れていく。
「確かに、僕も君が無償でこの大きな仕事を手伝うとは思えない…是非ともその理由を…」
堂上はそこまで言いかけると、ふと光の背後に佇む類の姿を一瞥する。
「と…、思ったけど…、まぁ君がそれでいいっていうなら別にいいか」
まるで何かを察したのか堂上は、それ以上の詮索を辞めると無理やりに話をまとめ始めた。
「はあ?!ほんまに言うてんの?!無報酬やで?!絶対なんかあるって!!」
慌てて振り返った二ノ宮に堂上は苦笑する。
「そんなに焦らなくても、光は昔みたいに、お前を脅したりはしないよ。大人なんだし…、ねぇ?そうだろ?」
(昔みたいに?)
どこか意味深な堂上の発言に類は首をかしげる。
「あぁ、もちろん。三ノ宮は安心して俺から報酬を踏んだ来るといい…」
どこか平穏ではない言葉並びに、二ノ宮の背筋が冷たくなる。
「じゃあ、話もまとまったところだし…、そろそろ始めようか?」
その場の雰囲気を変える様に、堂上はパチンと両手を合わせた。