性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
「それにしても、一体ここはどうなってるんですか?」
目的地もわからぬまま、類は光の隣を歩きながら今の状況について尋ねる。
先程から過ぎてゆく景色は最初に来た時と変わらぬと言うのに、何故か同じような場所をぐるぐると回っている気がする。呪いの介入によって時間感覚は既に無く、せっかく買ったスマホも、先ほどから電源が入らず全く役に立たない。
「親父の呪いは一先ず抜けた。でも次何かされたら今度こそ終いだ」
「…それって、やっぱり光さんのお父さんが敢えて私達に呪いをかけていたってことですか?」
類の声が震える。そんな事出来れば信じたくはないが、そうでもなければ、突然あんな状況になった説明がつかない。
「そうだろうな、堂上達のせいってのもあるけど、早くしろってケツ叩かれたんだよ」
(それって、どんな叩き方だ…)
類は内心突っ込みを入れるも、まだその本人に監視されている事を思い出し、言葉を慎む。
「とにかく、親父はお前の力が見たいんだ。本当に怨霊を祓えるのか、本当にそこまでの力を持っているのか…」
光の言葉に類は俯く。それは要するにこの先に待ち受けている怨霊の本体を類が祓わなくてはいけないと言うことになる。
「そういえば、さっき光さんを見つけた時に私が言霊を使ったって言ってましたよね?」
類はふと疑問に思った事を尋ねる。
「言ったけど、それがどうかした?」
「光さんはその力であの世に一番近い場所から抜け出せたとしても、私はどうやってその世界から抜け出したんでしょうか…?確か光さんに突き飛ばされたとこまでは覚えてるんですが…」
類はうーんと頭を悩ませる。あの時自分で無意識に言霊を使ったのかも知れないが、あまりそんな覚えがない。
「…何、俺お前のこと突き飛ばしたの?」
「はい、確か「ごめん、類」って言って道路にえいや!と突き飛ばされました」
「…」
別にあれは個人の世界であるから決して光の責任でないが、それを聞かされた当の本人は少し後味が悪そうである。
すると、先ほどまで静かに二人の話を聞いていた覚が仰々しく咳ばらいをして見せた。
「あーそれは、きっと私のせいだね」
「覚の…?」
「あぁ。あの世界から抜けるには生者の言霊か死を自覚する必要があったんだ」
「それって、要するに、生きてる人が声をかけるか、あの世界で死ぬ必要があるってことですか…?」
類は出来るだけ分かりやすく要約して尋ねる。
「そうさ。私は生者じゃないからね…。声をかけてもあの世界から逃がしてやることは出来ない。それなら君を何かしらの方法で殺すしかない」
覚はそう呟くと、まるで教師の様に人差し指を上へと向ける。
「それで後者の選択をとったんだ。ただ、過去の私が君を殺すのは少々後が引けてね…。それで兄である君にお願いしたのさ」
「要するに、お前が俺にやらせたんだな…」
光は少々鬱陶しそうに覚を睨みつける。
「で、でも!あの時光さんは、謝ってました…。それは一体どういう…」
類の言葉に、光は目を細める。
「多分、その世界線の俺が何か感じたんだろうな…。本当はそうしたくないけど、そうする必要がある。だから、謝罪の言葉が口をついて出たんだ…」
もしそれが、本当だとすればやはり土御門光という男はとても優しい人間なのかも知れない。
「…何ニヤついてんだ、気持ち悪ぃな」
「ごめんなさい…、何か嬉しくて、つい」
素直に自分の思いを告げる類に、光は困った様な表情を見せる。徐々にではあるが彼の人間らしい部分に触れられることに、類は小さな喜びを感じていた。
(いつも、もっと素直だったらいいのに…)
そしたらきっと、もっと仲良くなれるに違いない。
(まぁ、でも仲良くなりすぎたら困るかな…)
「何が困んの?」
「へ?!」
考えが言葉に出ていたのか、類は思わず表情を強張らせる。
「あ、いえ、えっと…」
「俺また何か困らすようなことした?」
光は少し不安そうに尋ねる。
「い、いえ!そんな事無いです!」
そう。
私はいつだって貴方に助けられてる。
類はそう思うと、光に優しく微笑んだ。
目的地もわからぬまま、類は光の隣を歩きながら今の状況について尋ねる。
先程から過ぎてゆく景色は最初に来た時と変わらぬと言うのに、何故か同じような場所をぐるぐると回っている気がする。呪いの介入によって時間感覚は既に無く、せっかく買ったスマホも、先ほどから電源が入らず全く役に立たない。
「親父の呪いは一先ず抜けた。でも次何かされたら今度こそ終いだ」
「…それって、やっぱり光さんのお父さんが敢えて私達に呪いをかけていたってことですか?」
類の声が震える。そんな事出来れば信じたくはないが、そうでもなければ、突然あんな状況になった説明がつかない。
「そうだろうな、堂上達のせいってのもあるけど、早くしろってケツ叩かれたんだよ」
(それって、どんな叩き方だ…)
類は内心突っ込みを入れるも、まだその本人に監視されている事を思い出し、言葉を慎む。
「とにかく、親父はお前の力が見たいんだ。本当に怨霊を祓えるのか、本当にそこまでの力を持っているのか…」
光の言葉に類は俯く。それは要するにこの先に待ち受けている怨霊の本体を類が祓わなくてはいけないと言うことになる。
「そういえば、さっき光さんを見つけた時に私が言霊を使ったって言ってましたよね?」
類はふと疑問に思った事を尋ねる。
「言ったけど、それがどうかした?」
「光さんはその力であの世に一番近い場所から抜け出せたとしても、私はどうやってその世界から抜け出したんでしょうか…?確か光さんに突き飛ばされたとこまでは覚えてるんですが…」
類はうーんと頭を悩ませる。あの時自分で無意識に言霊を使ったのかも知れないが、あまりそんな覚えがない。
「…何、俺お前のこと突き飛ばしたの?」
「はい、確か「ごめん、類」って言って道路にえいや!と突き飛ばされました」
「…」
別にあれは個人の世界であるから決して光の責任でないが、それを聞かされた当の本人は少し後味が悪そうである。
すると、先ほどまで静かに二人の話を聞いていた覚が仰々しく咳ばらいをして見せた。
「あーそれは、きっと私のせいだね」
「覚の…?」
「あぁ。あの世界から抜けるには生者の言霊か死を自覚する必要があったんだ」
「それって、要するに、生きてる人が声をかけるか、あの世界で死ぬ必要があるってことですか…?」
類は出来るだけ分かりやすく要約して尋ねる。
「そうさ。私は生者じゃないからね…。声をかけてもあの世界から逃がしてやることは出来ない。それなら君を何かしらの方法で殺すしかない」
覚はそう呟くと、まるで教師の様に人差し指を上へと向ける。
「それで後者の選択をとったんだ。ただ、過去の私が君を殺すのは少々後が引けてね…。それで兄である君にお願いしたのさ」
「要するに、お前が俺にやらせたんだな…」
光は少々鬱陶しそうに覚を睨みつける。
「で、でも!あの時光さんは、謝ってました…。それは一体どういう…」
類の言葉に、光は目を細める。
「多分、その世界線の俺が何か感じたんだろうな…。本当はそうしたくないけど、そうする必要がある。だから、謝罪の言葉が口をついて出たんだ…」
もしそれが、本当だとすればやはり土御門光という男はとても優しい人間なのかも知れない。
「…何ニヤついてんだ、気持ち悪ぃな」
「ごめんなさい…、何か嬉しくて、つい」
素直に自分の思いを告げる類に、光は困った様な表情を見せる。徐々にではあるが彼の人間らしい部分に触れられることに、類は小さな喜びを感じていた。
(いつも、もっと素直だったらいいのに…)
そしたらきっと、もっと仲良くなれるに違いない。
(まぁ、でも仲良くなりすぎたら困るかな…)
「何が困んの?」
「へ?!」
考えが言葉に出ていたのか、類は思わず表情を強張らせる。
「あ、いえ、えっと…」
「俺また何か困らすようなことした?」
光は少し不安そうに尋ねる。
「い、いえ!そんな事無いです!」
そう。
私はいつだって貴方に助けられてる。
類はそう思うと、光に優しく微笑んだ。