性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
結城は類の言葉に目を見開く。
その表情は何か真理に気が付いたような、深い眠りから覚めたような、清々しいものであった。
「君は…」
「はい!これで【大丈夫ですよ】」
類はニッコリと結城に笑顔を見せる。
「大丈夫…なのか」
結城は何が起こったのかわからないといった様子で両の手を見つめる。
先程まで重たかった気分はニュートラルな状態へと戻り、陰鬱とした感情もどこかへと消え去っていた。
「えぇ。もう【大丈夫】だから、どうかそろそろ次の人生へ歩みを進めて下さい」
「次の…、人生?」
「はい。次の人生です。【今世での貴方の学びは終わりです】」
「もう、終わりなのか…?」
「えぇ、もう終わりです」
「…」
結城はその言葉にどこか面食らった様に頭を抑える。
「とても、あっけなかった…」
「それが人生です。自然な事ですよ」
「次はちゃんと人を救ってあげられるだろうか?」
「貴方がその気なら」
類の言葉に結城は小さく微笑む。その表情はどこか幼子のようにも見える。
「ここに留まってしまった者達も救えるのか?」
「任せて下さい。貴方が戻る場所に戻れば、後はここに居る自称凄腕陰陽師がなんとかしますから」
類がクスっと笑らうと光は「自称じゃねぇけどな…」と小声で突っ込みを入れる。
「だから、どうか、安らかに。いつか私もそっちに行きますから…」
「君はまだ若いだろ…そんな事言ったら駄目だ」
「でも、その方が寂しくないでしょ?」
「…」
「だから、どうか、安らかに眠って下さい」
「…君は、優しいな」
「お陰で、疲れやすいんですけどね」
どこか自嘲するような呟きに結城は苦笑する。いつもこうやって魂で語り合えたらいいのに。
色んなものを取っ払った、ありのままの君はこんなにも美しいのに。
「…じゃあ、お言葉に甘えてお任せするよ。私の人生はもう終わっていたようだからね…」
結城はそう言って微笑むとゆっくりと瞳を閉じる。
「ありがとう。最後に君達に会えて良かったよ」
「いえ、どういたしまして」
すると、結城の体はまるで空気に溶け込むようにその場から姿を消した。
さよならー。
またいつかー、
どこかで会えるといいねー。
*
*
*
*
*
*
「で?後処理はどうするんだい?」
結城の姿が完全に消え去ると、今まで黙り込んでいた覚が口を開いた。
「どうするも、こうするも、こいつが大見え切ったから祓うしかなくなっただろ…」
不機嫌そうな光の言葉に類は背筋を震わす。
「いや、だって、そうするしか他に方法が…、いえ、すみません。勝手な事言いました…」
光から発せられる謎の圧に、類は萎縮する。
「まぁ、でも、今回は化け物になる前に祓えたから良しとしよう…」
「化け物になる前?」
「大体、俺が祓うときはいつも怒らせちまって大変なんだ…、怒りのエネルギーで人間としての実体が無くなってしまう」
光の言葉に類は最初に屋敷で出会った恐ろしい化け物の姿を思い出す。
「あ、確かに今回は普通だった…」
「ムカつくけど、それって才能…。多分俺があのまま話続けてたら異形化してたろうな…」
「光は煽りの天才だからね」
覚はクスクスと笑いながら、類に耳打ちをする。
「うるせぇな…、そういう性格なんだよ」
「でも、これで、この子がれっきとした言霊使いであることが分かったね。君の父上もさぞかしお喜びの事だろう」
覚は嬉しそうに類の頬を突っつく。
「あぁ、そうだな…。益々こいつを一人にできなくなった…」
「光さん…?」
褒めてもらえると思いきや、どこか残念そうに呟く光の姿に類は少し不安になる。
「なんて顔してんだよ、喜べ。お前は俺と同じ陰陽師としての素質がある。下手したら今後協会からお呼びがかかるかもしれない」
「え…」
しかし、光の言葉に類は困惑する。別に陰陽師なんかになりたくは無い。
「ま、一先ずやることやってここから出るぞ。観測者も消えたことだし…」
「もう、見られてないんですか…?」
「あぁ、だからさっさとここから出てデートだ」
「で、デート?!」
「…エリカと行くんだろ?」
「あ、あぁ、そうでした!」
ややこしい言い回しに類は苦笑する。だが、これでようやく、家に帰れそうだ。
その表情は何か真理に気が付いたような、深い眠りから覚めたような、清々しいものであった。
「君は…」
「はい!これで【大丈夫ですよ】」
類はニッコリと結城に笑顔を見せる。
「大丈夫…なのか」
結城は何が起こったのかわからないといった様子で両の手を見つめる。
先程まで重たかった気分はニュートラルな状態へと戻り、陰鬱とした感情もどこかへと消え去っていた。
「えぇ。もう【大丈夫】だから、どうかそろそろ次の人生へ歩みを進めて下さい」
「次の…、人生?」
「はい。次の人生です。【今世での貴方の学びは終わりです】」
「もう、終わりなのか…?」
「えぇ、もう終わりです」
「…」
結城はその言葉にどこか面食らった様に頭を抑える。
「とても、あっけなかった…」
「それが人生です。自然な事ですよ」
「次はちゃんと人を救ってあげられるだろうか?」
「貴方がその気なら」
類の言葉に結城は小さく微笑む。その表情はどこか幼子のようにも見える。
「ここに留まってしまった者達も救えるのか?」
「任せて下さい。貴方が戻る場所に戻れば、後はここに居る自称凄腕陰陽師がなんとかしますから」
類がクスっと笑らうと光は「自称じゃねぇけどな…」と小声で突っ込みを入れる。
「だから、どうか、安らかに。いつか私もそっちに行きますから…」
「君はまだ若いだろ…そんな事言ったら駄目だ」
「でも、その方が寂しくないでしょ?」
「…」
「だから、どうか、安らかに眠って下さい」
「…君は、優しいな」
「お陰で、疲れやすいんですけどね」
どこか自嘲するような呟きに結城は苦笑する。いつもこうやって魂で語り合えたらいいのに。
色んなものを取っ払った、ありのままの君はこんなにも美しいのに。
「…じゃあ、お言葉に甘えてお任せするよ。私の人生はもう終わっていたようだからね…」
結城はそう言って微笑むとゆっくりと瞳を閉じる。
「ありがとう。最後に君達に会えて良かったよ」
「いえ、どういたしまして」
すると、結城の体はまるで空気に溶け込むようにその場から姿を消した。
さよならー。
またいつかー、
どこかで会えるといいねー。
*
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「で?後処理はどうするんだい?」
結城の姿が完全に消え去ると、今まで黙り込んでいた覚が口を開いた。
「どうするも、こうするも、こいつが大見え切ったから祓うしかなくなっただろ…」
不機嫌そうな光の言葉に類は背筋を震わす。
「いや、だって、そうするしか他に方法が…、いえ、すみません。勝手な事言いました…」
光から発せられる謎の圧に、類は萎縮する。
「まぁ、でも、今回は化け物になる前に祓えたから良しとしよう…」
「化け物になる前?」
「大体、俺が祓うときはいつも怒らせちまって大変なんだ…、怒りのエネルギーで人間としての実体が無くなってしまう」
光の言葉に類は最初に屋敷で出会った恐ろしい化け物の姿を思い出す。
「あ、確かに今回は普通だった…」
「ムカつくけど、それって才能…。多分俺があのまま話続けてたら異形化してたろうな…」
「光は煽りの天才だからね」
覚はクスクスと笑いながら、類に耳打ちをする。
「うるせぇな…、そういう性格なんだよ」
「でも、これで、この子がれっきとした言霊使いであることが分かったね。君の父上もさぞかしお喜びの事だろう」
覚は嬉しそうに類の頬を突っつく。
「あぁ、そうだな…。益々こいつを一人にできなくなった…」
「光さん…?」
褒めてもらえると思いきや、どこか残念そうに呟く光の姿に類は少し不安になる。
「なんて顔してんだよ、喜べ。お前は俺と同じ陰陽師としての素質がある。下手したら今後協会からお呼びがかかるかもしれない」
「え…」
しかし、光の言葉に類は困惑する。別に陰陽師なんかになりたくは無い。
「ま、一先ずやることやってここから出るぞ。観測者も消えたことだし…」
「もう、見られてないんですか…?」
「あぁ、だからさっさとここから出てデートだ」
「で、デート?!」
「…エリカと行くんだろ?」
「あ、あぁ、そうでした!」
ややこしい言い回しに類は苦笑する。だが、これでようやく、家に帰れそうだ。