性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
第十五章【エリカのデート術】
  無事、屋敷から帰還した類は光の家に戻るなり頭を悩ませていた。

 目の前には、学生時代に袖を通したことのあるセーラー服が一着。綺麗にアイロンがけされた状態で置かれている。

 (いや。なんでここにある)

 決して、エリカとのデートに着ていくことを躊躇しているわけではない。屋敷から帰還するなり光の自宅に学生時代に来ていたセーラー服が万全の状態で準備されていることに頭を悩ませているのだ。

 (まさか、何かの術で?)

 常に二人で行動していた筈の光が類の元居た自宅に寄った記憶はない。だとしたら何かしらの術で呼び寄せたに違いない。

 (ってか、年齢考えろとかいってた割には準備万全じゃない…)

 てっきり、私服で行くことを想定していた類は小さな溜め息を吐くと制服を体に合わせてみる。

 (何だか、中学生見たい…)

 当然、学生時代にスカートの裾を切るなんてことをしていなかった類は、鏡に映る自分を見て顔を顰める。こんな姿でエリカの隣を歩いてもいいものだろうか。

 (きっと、エリカちゃんはおしゃれよね…)

 話によると、エリカは大学まで出ているそうだが、今は一応定時制の高校に通っているらしい。理由は不明であるがなんでも目立たないために、普通の高校生を演じる必要があるとのことだ。

 「…天才って大変ね」

 「さっきから何ブツブツ言ってんの?」

 突然、響いた光の声に類は勢いよく後ろへと振り向く。そこにはベッドに足を組んだまま座る光の姿があった。

 「い、…いつからそこに?」

 「お前が、鏡で制服を合わせてるとき」

 「見てないで声かけて下さいよ…」

 「いつ気づくかなって」

 「悪趣味…」

 「んな怒んなよ…」

 類のしかめっ面に、光は「ごめん、ごめん」と苦笑しながら謝るとベットから立ち上がって類の背後に立つ。

 「な、何ですか…?」

 「いや、別に?」

 突然距離を縮めてきた光に類は見上げるように顔を上げる。この男、今更ながらとても身長が高い。

 「可愛いじゃん。何かガキみたいで」

 光は鏡に映る類を見て、意地悪そうに微笑む。

 「ガ、ガキ…」

 「うん。なんか教室の端っこで本とか読んでそう」

 「本…」

 「そんで、陽キャの男子に揶揄われてガチで怒ってそう」

 霊視でもしたのだろうか。学生時代に経験したことをズバリとあてて来る光に類は顔を青ざめる。

 「し、仕方無いじゃないですか…、お洒落とは無縁だったんですから…」

 ただでさえ高校時代はお金をかけてもらえなかったのだ。その為当時流行っていたものは全くと言っていいほど何も持っていなかった。

 「バーカ、高校生はお洒落なんてしなくても皆それなりに可愛いもんなんだよ…。俺は普通に可愛いって言いたかっただけ」

 「…本当ですか?」
 
 「なんだよ、その人を疑う目は…」

 どこか素直に喜びきれない類は鏡に映る光の顔を見つめる。

 「というか、この制服…、いつ持ってきたんですか?これって私の母校の制服だから今更買ったとか言わないでくださいよ?」

 確か、制服はオーダーメイドだった筈。だとするとネットで買うのは難しい話である。

 「あぁ、それなら礼二に頼んでおいた」

 「何でわざわざそんなこと…」

 「お前の制服姿を拝んでみたかったから」

 「は?!!?」

 光の衝撃発言に、類は思い切り光から距離をとる。

 「分かりやすく引くな…」

 「そ、そりゃ引きますよ!!変態!ロリコン!」

 制服を盾に部屋の隅へと非難する類に光は不愉快そうに顔を顰める。

 「変態は否定しないが、ロリコンは心外だな…。ってか、そもそもお前乗り気だったろ。今更被害者ぶってんな」

 光の言葉に類はギクッと肩を震わせる。

 「そ、そんなの、女の子同士で行くから楽しそうだなって思っただけじゃないですか!そもそも、制服の女の子二人組に光さんみたいなおじさんが付いてくるのはどうかと思いますけど!」

 「誰が俺一人で同伴するなんて言ったよ」

 「え…、違うんですか?」

 「たりめぇだ…。同伴者はもう一人居る」

 「まさか、この前居た堂上さんじゃ…」

 「んなわけあるか。そんなのこっちが願い下げだ…」

 「じゃあ、誰なんですか?」

 「俺の後輩。協会の事務員してるやつ」

 意外な人物の参加に類は目を丸くする。

 「それって、なんか…」

 「なんだよ…」

 「ダブルデートみたいですね」

 類の発言に、光はどこか参った様に顔を背けるととても小さな声で
 
 「だからデートだって言ってんだろ…」

 と少し気恥ずかしそうに呟いた。
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