彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 先生の視線が、私の口元へ落ちる。

 また、目が合う。

 そのまま、ゆっくりと近づいてくる。

 呼吸が、混ざる。

 ――でも。

 ほんのわずかな距離を残したまま、止まった。

 そのまま、数秒。

 近距離で見つめられる。

 「……やばいな」

 小さく、こぼれるような声。

 「……今は、ここで我慢しとく」

 少し掠れた声だった。

 名残を残すように指先がゆっくりと離れていく。

 なのに、空気だけがそのまま取り残されたみたいに、熱を帯びたままだった。

 「これからは、もう遠慮しないよ」

 その余裕のある笑みに、目が逸らせなくてーー

 何も言えないまま、心臓の音だけが、いつまでもうるさく響いていた。
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