彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 距離が、少しだけ近づく。

 背中がシートに触れる。

 これ以上は、もう下がれない。

 「逃す気はないよ」

 低く、わずかに熱を帯びた声。

 そのまま、ゆっくりと手が伸びてくる。

 頬に触れる直前で、一瞬だけ止まる。

 躊躇うみたいに。

 それから、そっと触れた。

 指先が、ほんの少しだけ肌をなぞる。

 びくっと肩が揺れる。

 息がうまく吸えない。

 逃げ場をなくすみたいに、今度は髪に触れられる。

 耳のあたりの髪をすくうようにして、そのまま頬へと落ちてくる指。

 触れているのはわずかなのに、そこだけ熱を持ったみたい熱い。

 「ひより」

 もう一度名前を呼ばれて、息が詰まる。
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